山田耕史のファッションブログ

ファッションは生活であり、文化である。

意外な関連性多数。日本の「政治経済」と「メンズファッション」の歴史。

目次

 

政治経済×メンズファッション年表を作成しました

第二次世界大戦後から2000年までの日本の政治経済とファッションの流れがざっくりと把握できるようになればと、「日本の政治経済とメンズファッションの歴史」と題した年表を作成しました。

もちろん、これが決定版とは全く思っていません。

掲載する内容や見せ方にはブラッシュアップの余地がまだまだあるでしょうし、ファッション×政治経済だけでなく、ファッション×カルチャー、ファッション×産業など異なる分野の年表も必要だと思っているので、是非今後にご期待下さい。

さて、今回は初号機として公開した「日本の政治経済とメンズファッションの歴史」に掲載した各年代がどういった時代だったのかを、参考となる当ブログの過去記事と共にご紹介いきます。

 

1945〜1960年:消費社会の始まりと太陽族

1945年8月15日に第二次世界大戦が終結し、日本は連合軍の、実質的にはアメリカの占領下に置かれるようになりました。

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疲弊した日本人達が目にした、まばゆいばかりのアメリカ文化が日本の戦後ファッションの礎となりました。

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第二次世界大戦後の東京に生まれたそのことについては、こちらの過去記事で詳しくご紹介しています。

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終戦直後の日本には、ファッションは存在していませんでした。

そもそも、ファッション以前に衣食住の「衣」にさえ不自由していた時代です。

ですが、1950年に勃発した朝鮮戦争による特需をきっかけに、日本経済は戦後復興から高度成長へ歩みを進めます。

1954年には神武景気が始まり、白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫が「三種の神器」として庶民の憧れの的になるなど、消費社会の始まりとなりました。

そして、政府は1956年7月17日に発表した経済白書で「もはや戦後ではない」と宣言します。

これは、この前年の1955年の国内総生産が戦前の水準を上回ったことを受けてのことでした。

そんな当時、庶民の最大の娯楽は映画でした。

そしてそんな映画から生まれたファッションカルチャーが、1956年夏に爆発的な流行となった「太陽族」です。

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太陽族に関しては、また改めて詳しくご紹介できたらと思っています。

 

1960年代:高度成長の中で生まれたストリートファッションみゆき族

1960年に国民所得倍増計画が池田勇人首相により閣議決定されます。

国民総生産を10年間で2倍以上に増やし、国民の生活水準を西欧の先進国並みに引き上げることを目標とする計画です。

ですが、実際に国民総生産が倍になるのにはたったの4年しかかかりませんでした

実質国民総生産は4年後の1964年に2倍になり、国民一人当り実質国民所得は約7年後の1967年に2倍になるという早さで成長した代償として、スモッグ問題や、水俣病、イタイイタイ病などに代表される公害などが次々と問題となったのも1960年代です。

そんな中、1964年の夏に銀座のみゆき通りで生まれた、文字通りのストリートファッションがみゆき族でした。

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1950年代に入ると、アメリカ東海岸の名門大学に通う学生たちの「アイビーファッション」が日本で紹介されるようになっていましたが、その人気を決定付けたのが、石津謙介によるブランドVANの登場です。

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1960年代の日本は、憧れの存在であるアメリカのエリート学生のファッションを真似ることができるまでの経済力を持つに至るようになっていました。

ですが、あくまでみゆき族はアイビーファッションのコピーの域を超えませんでした。

日本独自のファッションを生み出すには、まだ経済と文化の発展するための時間が必要でした。

みゆき族のVANに関しても、いつか“ファッションアーカイブ”で詳しくご紹介できたらと思っています。

 

1970年代:モノからライフスタイルへ

1970年代の幕開けを告げたのが、大阪で開催された日本万国博覧会です。

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第二次世界大戦後、日本の円相場は、GHQが打ち出した物価安定・緊縮財政政策「ドッジ・ライン」によって、1ドル=360円に固定されていました。

ですが、1971年のスミソニアン協定により1ドル=360円→308円に切り下げられ、更に1973年には変動相場制に移行します。

https://sp.m.jiji.com/article/show/2897495

円の力が増したことで、日本人が憧れの国であるアメリカへ、以前よりも気軽に行けるようになってきました。

そういった背景もあり、アメリカのモノだけでなくライフスタイルまでも取り入れようとする動きが活発になります。

1976年の「POPEYE」の創刊号は一冊全てがカリフォルニア特集。サーフィンやスケートボード、テニスなどのアメリカのユースカルチャーを次々と日本に紹介しました。

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同じく1976年に原宿に創業したセレクトショップ、ビームスのコンセプトは「アメリカン・ライフショップ」でした。

また、日本ならではの感性を備えたクリエイター達が原宿を中心に活動するようになったのもこの頃です。

このように、1980年代以降大爆発する日本独自のファッションが生まれる下地作りになったのが1970年代だったと言えるでしょう。

 

1980年代:日本発のファッションが世界に衝撃を与える

1980年に日本はアメリカを抜き、自動車生産台数世界1位となります。

その前年の1979年には、日本型経営を称賛する「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という書籍がアメリカでベストセラーとなり、日本はアメリカに次ぐ世界2位の経済大国として、確固たる地位を築いていました。

1983年には任天堂がファミリーコンピューターを発売。日本独自のカルチャーが産声を上げます。

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1970年代から、高田賢三や三宅一生のように、パリ、ニューヨークなどの海外で活動するファッションデザイナーが増え始めます。

そして、日本独自のファッション観を世界に叩きつけたのが、1982年の山本耀司、川久保玲による「黒の衝撃」でした。

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そして、経済力の向上により消費意欲が旺盛になっていた、DCブランドのような新しく挑戦的なファッションに身を包むようになります。

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「土地神話」により、右肩上がりの経済成長が永遠に続くかと思われていた、1980年代。

1985年のプラザ合意以降、日本経済は更に加熱し、バブル景気の熱狂へ突入します。

そして1989年12月29日、東京証券取引所の年内最後の取引日「大納会」で日経平均株価が史上最高値の3万8,915円87銭を記録します。

ですが、この日を頂点にバブルは崩壊していくのでした。

 

1990年代:バブルが崩壊したから生まれた日本独自のストリートファッション

バブル崩壊後の日本経済は「失われた10年」「失われた20年」など、とにかく悲観的な表現がされていますが、これまで何度か“ファッションアーカイブ”でご紹介してきてように、バブル経済が崩壊したからこそ生まれた日本独自の個性的なファッションが数多く生まれたことも事実です。

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バブル経済真っ只中に生まれ、その崩壊が始まった1990年代初頭から拡大したのが、渋カジです。

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アメリカブランドのアイテムを中心にしながらも、「セレクト」「編集」という日本ファッション独自の特徴を活かし、キレカジやハードアメカジなどの派生スタイルを産みました。

そして、1990年代の日本において最大のファッションの出来事と言えるのが、1993年にNIGO®と高橋盾による「NOWHERE」オープンでしょう。

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エピローグ:「裏原系」が支配した2020年のモードの世界

そして2010年代から2020年代にかけて、純然たる日本産のストリートファッションである「裏原系」の遺伝子を持つデザイナーたちが、モード発祥の地であるフランスの老舗メゾンのトップを務めるようになりました。

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四半世紀の時を経て、日本のストリートファッションはファッションのメインストリートである西欧のモードの世界を支配するに至ったのです。

 

“ファッションアーカイブ”は毎週金曜日更新

と、今回は非常に駆け足で第二次世界大戦後の日本の政治経済をファッションについてご紹介してきました。

今後も“ファッションアーカイブ”は原則毎週金曜日に更新します。

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ファッションを軸に、政治、経済、カルチャーなど様々な事柄を楽しめる記事をお送りしていくつもりです。

お楽しみに。

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参考文献