先日、ふとモード系のオリジンってなんだろう?と思ってツイートしてみました。
いわゆるモード系(この画像はラッドミュージシャン)のオリジンってやっぱりギャルソンヨウジなのかな。
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) 2020年7月31日
要素としては以下みたいな感じの。
・黒
・表情の少ない生地
・シルエットやボリュームで変化をつける
・禁欲的なイメージ pic.twitter.com/xa3YhN5xEK
すると、座談会でもお馴染みの井本さんからリプライをいただきました。
「いわゆるモード系」のオリジンはココ・シャネル?
諸要素を見てみると、結局は1920年代のシャネルに行きつくような気がしますね。どうでしょ?
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) July 31, 2020
ココ・シャネルは、当時モードでは考えられない色だった黒を持ち込み、革命を起こしました。こちらはシャネルの黒の服の代名詞である「little black dress」に身を包んだシャネル本人。
https://www.pinterest.jp/pin/155303887232702987/
広義のモードに黒を使うことのオリジンはシャネルでしょうね。
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) July 31, 2020
ファッション史の本なんかを読んでると、黒の歴史ってシャネルの後、ギャルソンヨウジの登場までジャンプしちゃってることが多いので、その間って何もなかったのかなーって思ってます。
シャネル~黒の衝撃の間にはWW2があったり、女性の社会的地位の変化、男性のファッションの変化、ジーンズの普及、欧米一強の終焉とか、社会的にもファッションの面でもいろんな激変があったので、大きな流れとしてわざわざ過去に戻ることはなかったのかなと。リバイバルって90年代からの潮流ですし
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) July 31, 2020
だから黒の衝撃はシャネルの価値観の復活というより、みんなが忘れてた黒を新しいものとして提案したんじゃないでしょうかね
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) July 31, 2020
「黒の衝撃」の衝撃度
コムデギャルソンがパリコレクションにデビューしたのが1981年。
翌年の1982年に、全身黒で穴が空いていたり、アシンメトリーだったりと、当時の主流だったファッションの価値観では考えられない服を発表しました。
そのインパクトの強さから、「黒の衝撃」と評されたコムデギャルソンとヨウジヤマモト。あまりのショッキングさに「原爆ルック」と名付けた欧米メディアもありました。
https://www.pinterest.jp/pin/344947652683130433/
https://www.pinterest.jp/pin/595812225687679061/
2020年の今、↑のコムデギャルソンやヨウジヤマモトの作品を見ても特に新しさなんて感じられないかもしれません。
ですが、当時主流だったヨーロッパのデザイナーの作品はこんな雰囲気でした。
https://www.pinterest.jp/pin/827466131522689809/
鮮やかな色、くびれたウェストなど、いわゆる女性らしさを強調する作品が主流だった80年代初頭のファッション界。
そこに突如出現した全身黒でボロボロ(に見える)の服をまとったギャルソンとヨウジは相当衝撃的だったのでしょう。
こちらは1992年秋冬のコムデギャルソン。
https://www.pinterest.jp/pin/268597565258346790/
「リリス」と名付けられた、とても評価が高いコレクションで、コレクション全体に流れる禁欲的な雰囲気が今のいわゆるモード系の根底に流れるイメージのベースではないか、というのが僕の見解です。
https://www.pinterest.jp/pin/56576539056552284/
https://www.pinterest.jp/pin/106116134950975490/
https://www.pinterest.jp/pin/220324606759776265/
80年代に入ってとりあえず諸々が一息ついたからこその黒の衝撃、って感じでしょうか。
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) July 31, 2020
となると、やっぱりいわゆるモード系のオリジンはギャルソンヨウジってことですかね。
「黒の衝撃」以降「新しい発明」は生まれていない
直系での今のいわゆる「モード」(系)に至る流れはそこかも知れませんね。となると、ファッションの価値観に於けるまったくの新しい発明ってそれ以降出てないとも…。
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) July 31, 2020
ヴェトモンやミケーレらのアグリーな提案も、珍奇なようで既存のものの位置を置き換えただけですし。
ここ数年のヴェトモンのコレクションで、「珍奇」なものをピックアップしてみました笑。
https://www.pinterest.jp/pin/759560293376818094/
https://www.pinterest.jp/pin/795307615427543896/
ミケーレが手掛けるグッチはこの生首コレクションがかなり話題になりましたね。
https://www.pinterest.jp/pin/571323902722674543/
このヴィジュアルも、もう何が何だか…という感じ笑。
https://www.pinterest.jp/pin/456833955952406763/
強烈なインパクトがあるコレクションで、現在のモードを代表する人気ブランドであるヴェトモンとグッチですが、井本さんの指摘の通り「新しい発明」があるかと言えば、そうではないでしょう。
うわ、確かに…>新しい発明
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) July 31, 2020
川久保玲と山本耀司がデザイナー達に未だにリスペクトされ続けるのも、現時点での最後のモードの革命者だからなもかもしれませんね。
次の革命は起こらなさそうですし…起こって欲しいですが。
なもかも→なのかも
今のハイファッション産業構造自体が末期に来ているような気もしますし、最後の革命になりそうですな。
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) July 31, 2020
次の革命があるとしたら、もうそれは「モード」でなく、まったく新しい概念の誕生なのかも知れませんよ
まぁ今後のモードで革命は生まれなさそうですねー。
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) July 31, 2020
…と思っているのは僕がオジサンだからで、もしかしたらまたモードで革命が生まれるのかも、なんて思ったりもします笑
「いわゆるモード系」って実はクラシックなファッション?
「いわゆるモード系」って一般的には「時代の最先端」なファッションだというイメージも強そうですが、そのベースは40年前の「黒の衝撃」であり、もっと根本的に考えると100年前の「little black dress」の派生系だとすると、実は相当クラシックなファッションである、という考え方もできそうです。
「little black dress」の派生系が、今も先端的なファッションだと認識されるということは、ココ・シャネルが起こした革命が凄まじかったと言えるでしょうし、「little black dress」→「黒の衝撃」→「いわゆるモード系」に至るまで時代を超えて人気を集め続ける黒の求心力の強さにも驚かされます。
黒についてはこちらの過去記事でもご紹介していますが、今後も更に研究していこうと思っています。黒という色はファッションにおいて相当特別な存在で、黒の魅力について理解が深まれば、当ブログでもよりわかりやすく服の選び方をご紹介できるのではないかと思っています。
この記事があなたのお役に立てば幸いです!