山田耕史のファッションブログ

ファッションは生活であり、文化である。

「ダサい服」の判定基準を考える。

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 先週のこちら↓の記事、大変多くの方に読んでいただいたようです。

www.yamadakoji.com

その影響でしょう。Amazonでは僕の書籍が欠品になってしまいました。なんともありがたい限りです。

記事の内容は「ダサい服」についてですが、そもそもダサい服とは何か」という議論がツイッターの一部で巻き起こっていたようで、僕のタイムラインでもいくつかその議論に関するツイートを目にしました。

その中で、「座談会」でご一緒した井本さん @Euphonica_045 の連投ツイートに頷くことが多かったので、ご紹介します。

facy.jp

 

 

「ダサい服」を理論的に説明することの難しさ

川久保玲がデザインする近年のコムデギャルソンオムプリュスがこちら。

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ちなみに、こちら↓は井本さんが考える「お洒落とは」。4年前の記事ですが、とても考えさせられる内容です。

euphonica.yokohama

 

「ダサい服」の要素 

さて、井本さんが「ダサい服」の要素として挙げられているいくつかのポイントのなかで、僕も特に重要だと思ったのは以下の2点です。

・質の低い足し算のデザイン 

・どういったクラスタが着用しているか

「どういったクラスタが着用しているか」という言葉を平たく言い換えると、ファッション感度が低い人が着用しているという意味になるかと思います。

ファッション感度を3つのカテゴリに分類する

先日の記事でも触れましたが、僕はファッション企画会社で、クライアントである服をつくる会社や服を売る会社に、どういう服が売れるのかを提案する仕事を長年続けていました。

様々なリサーチをした上で売れる服の提案をするのですが、数あるリサーチのなかでも重要だったのが、「ストリートリサーチ」と「ショップリサーチ」です。

ストリートリサーチはお洒落な人をピックアップして撮影する雑誌のストリートスナップとは違い、道行く一般人を無作為に撮影し、着ている服を分析することで、どういった服が実際に着られているのかを調査します。

そして、ショップリサーチはショップの定点観測。どういった店で、どういった服が売られているのかを調査します。

この2つのリサーチで重要になるのが、撮影対象者や調査するお店のファッション感度です。ファッション感度とは、ファッションに対する積極性や感受性の高さのこと。

僕がファッション企画会社で働いていた頃は、分析対象者やお店のファッション感度が高い順に「プレビュー」「トレンド」「マス」という3つのカテゴリに分類していました。

それぞれのカテゴリのイメージはショップに例えるとわかりやすいでしょう。「プレビュー」はデザイナーズブランドや渋谷や原宿などにあるセレクトショップなどの、いわば最先端のお店。

「トレンド」はグローバルワークのような低価格SPAブランドや、ららぽーとなどの郊外のショッピングセンターにあるセレクトショップ。

そして「マス」はしまむらや、イオンやイトーヨーカドーのようなスーパーの衣料品売り場、というようなイメージです。

 

デザインは拡大して浸透していく

デザインは「プレビュー」→「トレンド」→「マス」という順番で拡大して浸透していきます。こちらは先日の記事でもご紹介した、2009年に撮影したビームス原宿店の写真です。2009年当時、裾裏チェック柄チノパンツは「プレビュー」のショップであるビームス原宿店のショーウィンドウを飾る最先端のデザインでした。

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こちらは2014年の2ちゃんねるまとめ記事からの引用ですが、「なぜださいということに気づけないのか無知にもほどがある」とディスられていることからわかるように、ビームス原宿店のショーウィンドウを飾った5年後には既に「マス」に浸透しきっていたデザインと言えます。

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こんな格好のくそださ大学生wwwwwwwwwww【働くモノニュース : 人生VIP職人ブログwww】

 

「ダサい服」を判定する最もわかりやすい基準

さて、ここで僕が考える「ダサい服」の要素の2点を再掲します。

・質の低い足し算のデザイン 

・ファッション感度が低い人が着用している

僕は、この2つの要素が「ダサい」を判定する最もわかりやすい基準の1つになるのではないかと思います。

たいていのデザインは「プレビュー」のお店が提案します。

その中で売れたデザインが「トレンド」のお店でも売られます。

「トレンド」のお店で売れ、「マス」の顧客層にも受け入れられそうなデザインが「マス」のお店で売られます。

そうして、「マス」でも売れたデザインの代表格が、先日の記事でご紹介した「買った人間が不幸になるデザイン」の数々です。

これらの服は揃いも揃って「足し算」でデザインされています。デザインの神でもなんでもない僕が「このデザインは質が低い!」と決めつけることはできませんが…「質が高い!」と言う人はまず存在しないんじゃないかと思います。

そして、「ファッション感度が低い人が着用している」ことは、上掲の2チャンネルまとめでわかるでしょう。

これらの服は「ダサい」の要素の2点を満たしているから、ツイッターでこれだけの共感を集めたのではないかと思います。

 

未来の 「ダサい服」は今、オシャレなお店に並んでいる

さて、ここでまたこちらの2009年のビームス原宿店の画像のことを思い出してみて下さい。

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2020年の今「ダサい服」の象徴としてディスられまくる裾裏チェック柄チノパンツは、2009年当時は最先端の「オシャレな服」でした。

ということは。

2020年の今、オシャレなお店で売られている「オシャレな服」のなかも、近い将来「ダサい服」としてディスられまくるようになる服もあるかもしれません。つまり、未来の 「ダサい服」は今、オシャレなお店に並んでいるということです。

 

僕が長年のストリートスナップの分析で発見したこと

僕はファッション企画会社でストリートスナップの分析を毎月、7年間続けてきました。分析するストリートスナップは毎月300人以上、多い月は1,000人以上分析することもありました。それだけ多くのストリートスナップを分析して発見したのが、流行り廃りなくいつまでも着用可能なシンプルでベーシックなデザインの「普通の服」です。そして、その「普通の服」について詳しくご紹介しているのが、今年発売した初の書籍「結局、男の服は普通がいい」です。

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商品ページ:Amazon楽天ブックスヨドバシドットコム

「普通の服」について興味は、こちら↓の記事でもご紹介しています。

www.yamadakoji.com

こちら↓の記事では具体的な商品についても詳しくご紹介しているので、是非ご覧下さい。

www.yamadakoji.com

余談ですが。

この記事でも「ダサい服」の代表のような扱いをしてしまっている裾裏チェック柄。

実はこちらのL.L.Beanのジーンズのように、防寒のために裏地にチェック柄(無地もあります)のネル素材の生地を貼り付けたパンツは古いワークウェアやアウトドアウェアではポピュラーな存在で今でも定番的に売られています。

 

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https://e-dracaena.com/?pid=145163778

ですので、裾裏チェック柄のディティールがある服=ダサいという訳ではなく、あくまでも服全体の完成度や雰囲気によって左右されることは付け加えておきます。

この記事があなたのお役に立てれば幸いです!