先週のこちら↓の記事、大変多くの方に読んでいただいたようです。
その影響でしょう。Amazonでは僕の書籍が欠品になってしまいました。なんともありがたい限りです。
一昨日のブログ(https://t.co/eKiUh6sFEi)が久し振りに多くの方に読んでいただけたおかげで、僕の書籍「結局、男の服は普通がいい」がAmazonで欠品中のようです。Kindle、あるいは楽天ブックスなら購入可能ですので是非是非。https://t.co/mocMAqZ2Gk pic.twitter.com/iMfhDT35oa
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) 2020年8月14日
記事の内容は「ダサい服」についてですが、「そもそもダサい服とは何か」という議論がツイッターの一部で巻き起こっていたようで、僕のタイムラインでもいくつかその議論に関するツイートを目にしました。
その中で、「座談会」でご一緒した井本さん @Euphonica_045 の連投ツイートに頷くことが多かったので、ご紹介します。
「ダサい服」を理論的に説明することの難しさ
いわゆる「ダサい服」はたしかにダサいんですけど、ではなぜダサいのか、何を以って醜悪と見做されるのか、その認識を前提として共有してない人に対して理論的に説明するのって、とても難しいです。
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) August 12, 2020
マス化したとか安物とか、それはあくまで表層であって本質ではありませんから
それでも試みてみますと、まず共通しているのは、デザインが足し算であること。クールビズのシャツなんかもそれですね。表面的な意匠を重複させることで差異を図るデザイン。
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) August 12, 2020
(たとえばこのシャツだとボタンダウン/ドゥエボットーニ/黒ボタン/裏チェック/七分袖) pic.twitter.com/NjZFVmj8W1
あとこれは冴えないオタクボーイだった(今はオタクおじさん)ので自己批判にもなるのですが、二次元の美系キャラだからこそ成り立つバランスを三次元の生身に持ち込んでしまうケース。7以降のFFノリといいますか…
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) August 12, 2020
画像はコスプレ用の衣装ですが、この感覚を日常に持ち込んでしまうケースですね pic.twitter.com/P6d2QREXWj
このところ急に敵視されているビアンキ型ボディバッグ。これは配色と素材使いとタグの大きさですかねえ。近年のオロビアンコ的な、先述の足し算デザイン。
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) August 12, 2020
いや私実際に使ったことはありませんけど、見るからに使い勝手はよさそうだなとは思っていまして、これ人気が出るのは理解できるんですよね pic.twitter.com/xjeUFMnv7z
ビアンキ型ボディバッグに関しては、おそらくその使い勝手からお父さんバッグとして大人気なため、「中年男性の(ダッド)バッグ」とされてしまったのかも知れませんね。
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) August 12, 2020
我々世代で言えばセカンドバッグとかと同じように。
憶測ですが。
つらつらと書いてはみましたけど、総じて言えるのは、やっぱり「いわゆるダサい服」≒足し算デザインというところに尽きるのかも知れません。
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) August 12, 2020
じゃあギャルソンだとかああいうのはどうなんだ、となりますが、そこがデザイナーの技量の差ってやつですよ。足し算すなわちダメってわけではないんです
川久保玲がデザインする近年のコムデギャルソンオムプリュスがこちら。
https://www.pinterest.jp/pin/652529433502284661/
https://www.pinterest.jp/pin/610800768187561167/
今やダサい服の要素として周知されてしまった意匠だって、冷静になればそれ自体は悪くないってこともあります。
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) August 12, 2020
たとえばドゥエボットーニ。今やクールビズの異形ワイシャツに於ける定番ディテールですが、かつてはクラシコイタリア界隈のうるさ方も愛した仕様ですよ
なので「このディテールがついてる、ハイ、ダサい服!」と断定できるような簡単な話でなく、そのディテールの質、組み合わせの品位、その服の取り入れ方、あと少々エグい話ですが「どのようなクラスタに着用されているか」といった風評、こうした諸々を総合的に見て我々はそれを判断しているんでしょう
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) August 12, 2020
究極的には「ダサいとは何か」という哲学的な話になっちゃいますので、書き散らすだけ書き散らしつつ、ひとまずはこのへんでいったん考察を止めます
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) August 12, 2020
ちなみに、こちら↓は井本さんが考える「お洒落とは」。4年前の記事ですが、とても考えさせられる内容です。
「ダサい服」の要素
さて、井本さんが「ダサい服」の要素として挙げられているいくつかのポイントのなかで、僕も特に重要だと思ったのは以下の2点です。
・質の低い足し算のデザイン
・どういったクラスタが着用しているか
「どういったクラスタが着用しているか」という言葉を平たく言い換えると、ファッション感度が低い人が着用しているという意味になるかと思います。
ファッション感度を3つのカテゴリに分類する
先日の記事でも触れましたが、僕はファッション企画会社で、クライアントである服をつくる会社や服を売る会社に、どういう服が売れるのかを提案する仕事を長年続けていました。
様々なリサーチをした上で売れる服の提案をするのですが、数あるリサーチのなかでも重要だったのが、「ストリートリサーチ」と「ショップリサーチ」です。
ストリートリサーチはお洒落な人をピックアップして撮影する雑誌のストリートスナップとは違い、道行く一般人を無作為に撮影し、着ている服を分析することで、どういった服が実際に着られているのかを調査します。
そして、ショップリサーチはショップの定点観測。どういった店で、どういった服が売られているのかを調査します。
この2つのリサーチで重要になるのが、撮影対象者や調査するお店のファッション感度です。ファッション感度とは、ファッションに対する積極性や感受性の高さのこと。
僕がファッション企画会社で働いていた頃は、分析対象者やお店のファッション感度が高い順に「プレビュー」「トレンド」「マス」という3つのカテゴリに分類していました。
それぞれのカテゴリのイメージはショップに例えるとわかりやすいでしょう。「プレビュー」はデザイナーズブランドや渋谷や原宿などにあるセレクトショップなどの、いわば最先端のお店。
「トレンド」はグローバルワークのような低価格SPAブランドや、ららぽーとなどの郊外のショッピングセンターにあるセレクトショップ。
そして「マス」はしまむらや、イオンやイトーヨーカドーのようなスーパーの衣料品売り場、というようなイメージです。
デザインは拡大して浸透していく
デザインは「プレビュー」→「トレンド」→「マス」という順番で拡大して浸透していきます。こちらは先日の記事でもご紹介した、2009年に撮影したビームス原宿店の写真です。2009年当時、裾裏チェック柄チノパンツは「プレビュー」のショップであるビームス原宿店のショーウィンドウを飾る最先端のデザインでした。
こちらは2014年の2ちゃんねるまとめ記事からの引用ですが、「なぜださいということに気づけないのか無知にもほどがある」とディスられていることからわかるように、ビームス原宿店のショーウィンドウを飾った5年後には既に「マス」に浸透しきっていたデザインと言えます。
こんな格好のくそださ大学生wwwwwwwwwww【働くモノニュース : 人生VIP職人ブログwww】
「ダサい服」を判定する最もわかりやすい基準
さて、ここで僕が考える「ダサい服」の要素の2点を再掲します。
・質の低い足し算のデザイン
・ファッション感度が低い人が着用している
僕は、この2つの要素が「ダサい」を判定する最もわかりやすい基準の1つになるのではないかと思います。
たいていのデザインは「プレビュー」のお店が提案します。
その中で売れたデザインが「トレンド」のお店でも売られます。
「トレンド」のお店で売れ、「マス」の顧客層にも受け入れられそうなデザインが「マス」のお店で売られます。
そうして、「マス」でも売れたデザインの代表格が、先日の記事でご紹介した「買った人間が不幸になるデザイン」の数々です。
もうこれとこれは法律で作るの禁止にしてほしい 売ってたら買っちゃうやつがいるんだから売らないのが一番でしょ 不幸な人間を増やさないで pic.twitter.com/XZbT04QaMV
— 鮭 (@pogd0E7btg1b) 2020年6月22日
笑いました😂
— あかりす🐿 エイペ 眉下切開 DT ブログはじめた (@akaris_2) June 22, 2020
こんな感じのパーカーも売るの禁止項目に追加できますか…!? pic.twitter.com/u0zEI0rrrL
ちょっと本当うける😂
— まーちんろう@横浜中華街風 (@marchinrow) June 24, 2020
わかりすぎて辛いしこの2点装備してるひとマジでよく居るし、
上半身はこれか、これの薄ピンクなんだよなぁぁぁぁ😂🤣🤣🤣🤣🤣🤣 pic.twitter.com/JQETh3DbuW
これらの服は揃いも揃って「足し算」でデザインされています。デザインの神でもなんでもない僕が「このデザインは質が低い!」と決めつけることはできませんが…「質が高い!」と言う人はまず存在しないんじゃないかと思います。
そして、「ファッション感度が低い人が着用している」ことは、上掲の2チャンネルまとめでわかるでしょう。
これらの服は「ダサい」の要素の2点を満たしているから、ツイッターでこれだけの共感を集めたのではないかと思います。
未来の 「ダサい服」は今、オシャレなお店に並んでいる
さて、ここでまたこちらの2009年のビームス原宿店の画像のことを思い出してみて下さい。
2020年の今「ダサい服」の象徴としてディスられまくる裾裏チェック柄チノパンツは、2009年当時は最先端の「オシャレな服」でした。
ということは。
2020年の今、オシャレなお店で売られている「オシャレな服」のなかも、近い将来「ダサい服」としてディスられまくるようになる服もあるかもしれません。つまり、未来の 「ダサい服」は今、オシャレなお店に並んでいるということです。
僕が長年のストリートスナップの分析で発見したこと
僕はファッション企画会社でストリートスナップの分析を毎月、7年間続けてきました。分析するストリートスナップは毎月300人以上、多い月は1,000人以上分析することもありました。それだけ多くのストリートスナップを分析して発見したのが、流行り廃りなくいつまでも着用可能なシンプルでベーシックなデザインの「普通の服」です。そして、その「普通の服」について詳しくご紹介しているのが、今年発売した初の書籍「結局、男の服は普通がいい」です。
「普通の服」について興味は、こちら↓の記事でもご紹介しています。
こちら↓の記事では具体的な商品についても詳しくご紹介しているので、是非ご覧下さい。
余談ですが。
この記事でも「ダサい服」の代表のような扱いをしてしまっている裾裏チェック柄。
実はこちらのL.L.Beanのジーンズのように、防寒のために裏地にチェック柄(無地もあります)のネル素材の生地を貼り付けたパンツは古いワークウェアやアウトドアウェアではポピュラーな存在で今でも定番的に売られています。
https://e-dracaena.com/?pid=145163778
ですので、裾裏チェック柄のディティールがある服=ダサいという訳ではなく、あくまでも服全体の完成度や雰囲気によって左右されることは付け加えておきます。
この記事があなたのお役に立てれば幸いです!