少し前に見たまとめ記事で、とある一節が気になりました。
「黒」はファッション版中二病?
黒に関しては以前、こんな記事を書きました。
また、それに関連してこんなこともツイートしています。
モノトーンロック系ドメブラ(で伝わるかな?画像1枚目)の雰囲気って何かに似てるなとずっと思ってたんですが、ファイナルファンタジーのキャラクターの服装だという事に気付きました。これ系って常に一定層からの支持があるので、トレンドとかの時代性を超えた何かしらの魅力があるんでしょうね。 pic.twitter.com/7xLBNfUBSI
— 山田耕史 ファッションをカンタンに。 (@yamada0221) 2018年8月4日
ビジュアル系にも繋がる様式美みたいなものを感じます。これ系の服装に興味を持った経験のある男性って多いと思います。たいていの人は中高生の時に。ファッション版厨二病みたいなもんですかね。誰しもが根源的に持っている憧れみたいなのがあるから、これ系はずっと廃れないのかなーと思ってます。
— 山田耕史 ファッションをカンタンに。 (@yamada0221) 2018年8月4日
僕はお兄系にかなり興味があって何度もブログで取り上げていますが、お兄系ってファッションにおける「様式美」を煮詰めた感じがして好きなんですよね。
— 山田耕史 ファッションをカンタンに。 (@yamada0221) 2018年2月25日
様式美って日本人は好きじゃないですか。ビジュアル系とか。
なので、ある意味ファッションの到達点のひとつじゃないかなと思っています。 https://t.co/SN2H5kLPPn
お兄系ファッションって、ファイナルファンタジーのファッションとも似てますよね。
— 山田耕史 ファッションをカンタンに。 (@yamada0221) 2018年2月25日
僕はゲームやアニメも様式美を煮詰めたような存在だと思っています。
実は遠いようなお兄系とゲーム・アニメの間柄も、日本の国民性を強く反映した独自のファッションという事で、凄く近しい存在ではないでしょうか。 pic.twitter.com/AsUKN4F5Ps
で、こういうお兄系やファイナルファンタジー的ファッションって元を辿ればコムデギャルソンに行き着く、というのが僕が随分前からぼんやりと考えていた仮説なんですが、実証できるネタが探せていないので仮説のままです。
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) February 25, 2018
何年後になるかはわかりませんが、決着はつけたいと思います。
今回はオタクが「黒」を着る理由と題し、ファッションリテラシーが低い男性が黒に惹かれる理由を考えてみます。
ロックな黒
僕はメンズファッションには2つの黒があると考えます。
1つ目はロックな黒。
革ジャン、ブーツにTシャツ…アイテムを問わず、ロック=黒というイメージは誰しもが持っているでしょうが、その中でも特に印象が強いのは革ジャン、つまりライダースジャケットではないでしょうか。
Schott 613RD
¥79,200
(記事執筆時の価格です)
|画像タップでAmazon商品ページへ|
ライダースジャケットの起源は諸説ありますが、戦闘機のパイロットのためのミリタリーウェア、あるいはバイク乗りのためのギアだとされています。どちらにしても、ファッションが目的ではなく、機能性を追求して開発された服だと言えます。
https://www.pinterest.jp/pin/293859944421706477/
そんなライダースジャケットがファッションアイテムとして脚光を浴びるきっかけになったのが、1954年公開のアメリカ映画「The Wild One(邦題:乱暴者)」です。
第二次世界大戦の帰還兵がバイクに乗ってカリフォルニアを暴れまわっていた「バイカーズ」と呼ばれるアウトロー集団をモチーフとした映画で、主演を務めたマーロン・ブランドは大人気を集め、一躍トップスターに登りつめました。マーロン・ブランドの白Tシャツにライダースジャケットを羽織ったスタイルを模倣する若者が急増しました。
https://www.pinterest.jp/pin/56506170321446427/
ナチスドイツの秘密警察、ゲシュタポがダブルブレストのレザーコートを制服として着用していたこともあり、当時ダブルブレストのライダースジャケットには悪を象徴のようなイメージがありました。
https://www.pinterest.jp/pin/81064862030074665/
バイカーズは自分たちのアウトローのイメージを強調するため、好んでライダースジャケットを着用していました。ここから、革ジャンには「ワル」のイメージが定着します。
映画が正式に公開されなかったので時間はかかりましたが、「The Wild One」の人気は海を超えてイギリスまで波及します。
1960年代初頭のロンドンでは夜な夜なカフェに集まり、ロックンロールを聴き、オートバイで爆音を撒き散らす不良少年がいつしか「ロッカーズ」と呼ばれるようになりました。
https://www.pinterest.jp/pin/11329436549991599/
このバイカーズとロッカーズがいわゆるロックファッションのルーツとされています。
モードな黒
もう1つはモードな黒。モードな黒については、こちらの過去記事で詳しくご紹介しているので、ここでは要点だけ。
1920年代、当時ヨーロッパのファッション界ではタブーだった「黒」を持ち込んだのが、ココ・シャネルによるリトル・ブラック・ドレスです。
https://www.pinterest.jp/pin/155303887232702987/
そして1980年代初頭、ヨーロッパのファッション界に再び「黒」を持ち込み、大きな衝撃を与えたのが、コムデギャルソンの川久保玲とヨウジヤマモトの山本耀司です。
https://www.pinterest.jp/pin/344947652683130433/
https://www.pinterest.jp/pin/595812225687679061/
ココ・シャネルが生み出し、川久保玲と山本耀司が蘇らせた「黒」は2020年代の今なお、モードを代表する色として存在しています。
いわゆるモード系(この画像はラッドミュージシャン)のオリジンってやっぱりギャルソンヨウジなのかな。
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) 2020年7月31日
要素としては以下みたいな感じの。
・黒
・表情の少ない生地
・シルエットやボリュームで変化をつける
・禁欲的なイメージ pic.twitter.com/xa3YhN5xEK
馴染みのある日常的なファッションである<アメカジ>
メンズファッションにおける「黒」の起源についてご紹介してきましたが、ではなぜオタク(=ファッションリテラシーが低い人)は「黒」を好むのでしょうか。
僕はその理由を「わかりやすく非日常をアピールできるファッション」だからだと考えます。
現在、日常着として最もポピュラーなファッションが<アメカジ>です。代表的なアイテムはジーンズやチノパンツ、スウェットなど。
LEVI'S LEVI'S RED TAB
¥13,200
(記事執筆時の価格です)
|画像タップでAmazon商品ページへ|
Dickies 874
¥4,490
(記事執筆時の価格です)
|画像タップでAmazon商品ページへ|
Champion C3-Q124
¥6,600
(記事執筆時の価格です)
|画像タップでAmazon商品ページへ|
たいていの家庭は、親が子供の服を選んで買ってくるでしょう。僕の場合は母親がダイエーのような量販店で買ってくる服を着ていました。現在の我が家もそうですが、今の子供だとユニクロやGUが多いかもしれません。量販店やユニクロ、GUのメンズ子供服のベースになっているのは<アメカジ>です。つまり、多くの男子にとって<アメカジ>は非常に馴染みのある日常的なファッションなのです。
カラフル=日常、「黒」=非日常
僕もそうでしたが、たいていの男子は中学生や高校生になるとファッションに興味を持ち始めるでしょう。
ファッションに興味を持ち始めたとき、誰しもがそれまでに自分が着ていた服とは違う服を着たいと思うのではないでしょうか。
また、摂取する情報が増えてそれまで自分が着ていた服とは違う服が存在することを知り、それを格好良いと思うということもあるでしょう。
それまで日常だった<アメカジ>はカラフルなファッションです。ベーシックアイテムだけを見ても、ジーンズのブルー(インディゴ)、チノパンツのカーキ(ベージュ)、スウェットのグレーと、色を多く使っています。
それに対し、ロックやモードをベースにした「黒」のファッションはわかりやすく非日常をアピールできるファッションです。これまでとは違う自分を演出できるのです。
また、年頃になると「ワル」に憧れる男子も少なくありません。「黒」は「ワル」を簡単にアピールできるファッションでもあります。
これまでとは違う自分、ちょっと「ワル」な雰囲気の自分。そんな自分を演出できるファッションとして「黒」は好まれるのではないでしょうか。
もちろん、「黒」以外にも非日常や「ワル」を演出できる服は存在しますが、手軽かつリーズナブルにそれらを演出できるという点で、「黒」は手を出しやすいのだと思います。
僕は「黒」が大好きです
長々と書いてきましたが、別に僕は「黒」ファッションが駄目だとか言いたい訳ではありません。
そもそも、僕は「黒」のファッションが大好きです。黒ファッションの象徴的存在であるコムデギャルソンがファッションの原体験だったので、今も大好きで頻繁に着用しています。
今日のコートとパンツ、どちらも成人式用に買ったのでした。コートはプリュス、パンツはワイズ。
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) 2019年11月29日
当時はインナーまでお金が回らず、ユニクロの黒のニットで誤魔化してたことを思い出しました笑 pic.twitter.com/9xmPWUbUcz
やっぱり90sプリュス(ニット)は素敵。 pic.twitter.com/XBzwtZbQOn
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) 2018年12月21日
また、黒アイテムは汎用性が高い、汚れが目立ちにくいなどという利点があるので、靴やバッグは黒をよく選びます。
僕は自分が着たい服を着るのが一番のオシャレだと思っています。この記事も、自分の着たい服を見つけるための一助になればと思っています。
この記事があなたのお役に立てれば幸いです!