今回は、先日のこちらの記事の続編となっておりますので、未読の方は↓を先に読んでいただけるとありがたいです。
90年代以降新しいファッションは生まれていない
で、↑で引用しているツイッターでの僕と井本さんのやり取りの後の、井本さんのツイートがこちら。
このツイートそのものに対してのモロモロはツリーとしてやり取りが残っているのでそれはそちらをご覧いただくとして、このいわゆる「モード」(系)の概念ってもう30年以上変わってないんですよね https://t.co/wR1u0QZ24R
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) July 31, 2020
ファッションの新しい提案であるところの「モード」の概念自体が新しくなくなっている、これは先日ドレス・コード?展に行ったときにも感じたことですhttps://t.co/nUwy2R8r4C pic.twitter.com/BnBZQEjIzW
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) July 31, 2020
ドレスコード展、僕も行きました。
ドレスコード展なう pic.twitter.com/saJSYrD2cM
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) 2020年7月10日
面白かったです。展示は一部のみ撮影可能。都築響一さんのコーナーは色々考えさせられました。 pic.twitter.com/lChGiSxclX
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) July 10, 2020
いい年して食えない音楽にしがみついているのはかっこわるいのか? pic.twitter.com/qYDnpsS58V
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) July 11, 2020
各セクションの区切り方や都築響一、元田敬三らの写真など、展覧会自体は興味深い箇所もあったんですが、一方で陳列されていた近年の「モード」な服の限界を感じてしまいました。
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) July 31, 2020
素材使いや形状の新しさはある、でも、その「素材使いや形状の新しさ」という新しさの形には既視感が付きまとうんですよ
その服が結果として純粋に美しく、着る人の気持ちを高揚させたり、とても大切な、印象的な一着となる、それはもう新しさでなく服の力そのものに価値があるわけで、「素材使いや形状の新しさ」の提案自体を一概に否定しているわけではありません
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) July 31, 2020
単純に、新しさを最大の価値とする産業であるモードに於いて、概念の革命的な新しさがこれだけ長い間生まれていないことに面白さを感じるんですよね。先のツリーでも触れましたが、デムナやミケーレらの醜悪さ、露悪性を用いた提案は、珍奇で新鮮ではあっても、既存のものの位置を変えただけですし
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) July 31, 2020
先日の記事でもご紹介しましたが、デムナとはアヴァンギャルドな作風で人気のブランド、ヴェトモン創始者であり、現在はフランスを代表するラグジュアリーブランドであるバレンシアガのクリエイティブディレクターを務めるデムナ・ヴァザリアのこと。こちらはデムナが手掛けていた頃のヴェトモンのヴィジュアルです。
https://www.pinterest.jp/pin/759560293376818094/
そして、ミケーレは現在快進撃を続けるラグジュアリーブランド、グッチのクリエイティブディレクターであるアレッサンドロ・ミケーレのことです。
https://www.pinterest.jp/pin/571323902722674543/
おじさんの戯言かも知れませんけど、ファッションでも音楽でも、90年代を境に完全な新しさは生まれていない気がしています。
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) July 31, 2020
進化はしているんですよ、確実に。
90年代って、リバイバルと編集の時代でした。
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) July 31, 2020
過去に目を向けて、発掘し、編集することで新しいものにする、もちろんそれまでにもありましたけど、その手法が完全に確立されたのってこのころだと思うんです。
そして、これこそがあの時代に生まれた大きな「新しさ」だったと思います
この「リバイバルと編集」は、今や流行の基本形と言えるまでに定着しました。
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) July 31, 2020
ファッションの流行を見ても、90年代から今に至るまで、ほとんどが「**年代風」じゃないですか
「新しさ」が枯渇したのか、もう「新しさ」自体がそれほど求められていないのか、どちらなのかはわかりません
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) July 31, 2020
で、最初のツリーのもとになったいわゆる黒を基調とした「モード」っぽさ。これも編集の繰り返しになっているんですよね。東京No.1ソウルセットの詞を引用すれば、「根本的な新しさはなく大胆なバリエーションに過ぎない」。
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) July 31, 2020
なおかつ、今の最新の(原意の)「モード」とも違う。
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) July 31, 2020
でも、10人中9人が先の画像を見れば「モード」と解釈するんですよね。そして、服自体を見れば、美しいわけです。
モードから外れながら、「モード」というひとつのジャンルとして確立しているわけで、この現象は面白いなと思います
ええと話がトッ散らかってますが、畢竟われわれは本質的にはまだ90年代に発生した潮流の中にいる、ということです(今のトレンドが90年代風とかそういう話じゃないですよ)。
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) July 31, 2020
これだけ長い間にわたり概念の革命が起きていないというのは、興味深いことでは。
現代のファッションは90年代ファッションの潮流の中にいる
リバイバルと編集の時代だった90年代を象徴する1人が、藤原ヒロシでしょう。その後世界のストリートファッションに大きな影響を与える「裏原系」のゴッドファーザーと言える存在です。
https://www.pinterest.jp/pin/502644008391947957/
そして、藤原ヒロシの「2号」である、A BATHING APEの創始者、NIGO。
https://www.pinterest.jp/pin/797348309016558401/
ラグジュアリーブランドの雄ルイ・ヴィトンのメンズを率いるのは、藤原ヒロシやNIGOなどの影響を強く受けたであろう、ストリートファッション出身のヴァージル・アブロー。そしてルイ・ヴィトンの2020年春夏コレクションでNIGOとコラボレーションを果たしています。
https://www.pinterest.jp/pin/458733912046576034/
https://www.pinterest.jp/pin/139682025931098999/
ミヤシタパークが予約不要になってたので初潜入。 pic.twitter.com/GoBzt7xwSu
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) August 13, 2020
裏原宿ブランドが生み出したといっても過言ではないコラボレーションという手法、そして何よりも90年代ファッションを象徴するNIGOをルイ・ヴィトンが選んだことは、井本さんが指摘するように、2020年の現代のファッションが、未だに1990年代ファッションの潮流の中にいることの証と言えるのではないでしょうか。
確かに第二次世界大戦後の50年代から90年代までは、それぞれの年代に生まれた独自のファッションがありました。ですが、井本さんが指摘するように00年代と10年代のファッションは過去のファッションのリバイバルと編集に終始しており、00年代と10年代に生まれた独自のファッションは見当たりません。
2020年代は何が起こる?
長くなってしまいましたが、先日の記事からの内容をまとめると以下のようになるかと思います。
・1980年代の「黒の衝撃」以降、モードで革命が起きていない
・1990年代の「裏原系」以降、ファッションで新しい手法が開発されていない
考えてみると、どちらも発信地は日本でした。
これに続く2000年代では、ZARAやH&Mなどのファストファッションブランドの浸透がファッション界のトピックに挙げられるでしょう。それまで特権階級(=金持ち)だけしか手に入れられなかった有名デザイナーによる最新デザインの服が、誰にでも手に入れられるようになりました。つまり、ファストファッションブランドがファッションを開放したと言えるでしょう。
有名デザイナーによる最新デザインの服が誰にでも、そしていつでも手に入るようにし、製品としてのクオリティも高めたのがユニクロです。↓の記事で詳しくご紹介していますが、僕はユニクロがファッションの民主化を完全に成し遂げたと考えています。
2020年以降、モードでまた革命が起きるのか。ファッションで新しい手法が開発されるのか。これまでの実績から考えると、また日本が発信地になるかもしれません。
折しもコロナ禍でコレクションの開催時期や、そもそもの存在意義が改めて考えなされている昨今。2020年代はファッションにおいて、激動の10年になることは確実でしょう。
この記事があなたのお役に立てば幸いです!