先日、僕のツイッターのタイムラインはこのツイートに端を発した話題でもちきりになっていました。
ユニクロみたいなファストファッションが登場するまで普通の人(ファッションに特別の興味はないが、完全に無頓着というわけでもない層)がどこでどんな服を買って着てたのか興味ある。そういう企画展示をやってほしい。
— 凸口 (@YMGCUG) 2022年5月16日
原宿店オープン、フリースブームでユニクロがブレイクしたのが1998年。
それから四半世紀が経ち、今やユニクロを擁するファーストリテイリングは、そしてZARA(インディテックス社)、H&Mに継ぐ世界第3位のアパレル企業に成長し、日本国内でも国民服と言えるくらいの知名度と浸透度を誇るブランドになりました。
確かに、我が家でも子供たちの服を買うときは「まずユニクロ」という雰囲気があります。
手頃な価格で、つくりも良く、デザインもそこそこ。
では、そんなユニクロが一般的になるまでは、「普通の人」はどこで服を買っていたのか?というのがツイート主の疑問です。
イトーヨーカドー、ジーンズメイト
この疑問に対して寄せられた意見で、最も多かったのがイトーヨーカドーやダイエーなどのスーパーマーケット。
やはりダイエーなど、百貨店以外にも安い服はあったみたいです(母60代から聞きました)
— 📽映画おば💙💛mimi低浮上 (@mimi373xoxo) May 17, 2022
イトーヨーカドーの謎の服屋で買ってる人が多かった記憶あります
— 五蘊 (@yubeshimochi6) May 17, 2022
主に「イトーヨーカドー」でした…。
— 大山昇悟 (@EarthUtopia1986) May 18, 2022
スーパーの洋服フロアに今よりもお客さんいましたね。
— Taks44 (@0la6HLmS4N0Fhyk) May 17, 2022
次いで、ジーンズメイトやライトオンなどのジーンズカジュアルショップ。
90年代は、ジーンズメイトとかがその位置にあった気がします。
— といだあずさ (@azs123abc) May 17, 2022
ジーンズメイト、ゴールウェイ、ライトオンあたりかなー
— 田中武史 (@2Xp33ITj9JIJ8bO) May 18, 2022
ライトオン
— いっこにーこ (@1ko2ko3ko4kokko) May 18, 2022
あと安くてちょっとかわいい服が売ってる個人店?が所々あって、休日は人入ってたなー。
神戸の住宅街で育った僕の90年代の記憶
1980年生まれで神戸の繁華街からは遠く離れた住宅街で育った僕も、90年代はスーパーマーケットやジーンズカジュアルショップで服を購入していた記憶があります。
小学校高学年〜中学校のときは、郊外にあるスーパーマーケットにテナントとして入っていたマックハウス的なジーンズカジュアルショップでネルシャツやチノパンツを親に買ってもらった記憶があります。
中学2年生くらいのとき(1994年)に、家の近所にできたのがユニクロです。
当時の僕のユニクロのイメージは、ディスカウントショップ。折込チラシにアディダスの3足パックの靴下が割引価格になるクーポンが付いていました。他にナイキのTシャツや、1994年アメリカワールドカップのTシャツをそのユニクロで購入しました。
高校生になると、友達と神戸の繁華街である三宮や元町に服を買いに行くようになりました。
そのときによく訪れていたのが、ジョイントというダイエーが経営するジーンズカジュアルショップです。4フロアくらいの大きな店舗だったので、服屋に馴染みのない僕らにも入りやすく、買いやすかったので、軟式テニス部の練習がない週末に、部活の仲間と訪れていました。
1998年に大学入学した当初もジョイントには通っており、リーのヴィンテージの復刻版や、古着のTシャツなんかを買っていました。
それ以降の僕の服屋遍歴はこちらの記事でもご紹介しています。
マルイ、百貨店、セレクトショップ
ということで、僕はユニクロ以前はスーパーマーケットやジーンズカジュアルショップで服を購入していました。
ですが、ツイッターには他にも多くの経験談が寄せられていました。
東京にユニクロが進出してきた90年代後半、その少し前(1995年前後)を思い返すと、世代や地域によって分布のグラデーションが異なるでしょうけど、ジーンズショップ、BEAMS等の有名セレクトショップ、あとはマルイや百貨店で買ってましたよね https://t.co/zNynE21wag
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) 2022年5月17日
マルイの関西初出店となったマルイ神戸のオープンが2003年。
なので、90年代に神戸にマルイはなく、その代替的存在がビブレでした。
大学入学直後は僕もメンズビギやアバハウス、PPFMなどのマルイ系ブランドを神戸ビブレでよく購入していました。
そして、マルイ系の次に僕が手を出したのが、大手セレクトショップでした。当時旧居留地にあったユナイテッドアローズや、現在三宮のロフトがある場所に入居していたビームスでもよく買い物をしていました。
完全に無頓着な人はスーパーの二階とか
— T.naoya (@Tnaoya13) May 18, 2022
ジーンズメイト、AOKI、洋服の青山等のスーツ屋。ちょっと気にする人は3大セレクトショップ(BEAMS、SHIPS、ユナイテッドアローズ)だと思います
ポロ・ラルフローレン、アニエスベー、ポール・スミス
そして、当時の僕の選択肢に全く無かったにも関わらず、ツイッターで多くの賛同の声が挙がっていたのが、ポロ・ラルフローレン、アニエスベー、ポール・スミスの3ブランド。
当時の「ファッションに特別の興味はないが完全に無頓着ではない普通の人」のなかで大人気ブランドとして君臨していたのが、ポロ・ラルフローレン、アニエスベー、ポール・スミスとかだったように記憶しています。
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) May 17, 2022
それこそティーンエイジャーからある程度の年齢の大人まで。
コムサとかマルイ系の存在の大きさはまったく同意見ですが、バブル崩壊後に多感な時期を過ごした私の周りでも、ラルフやアニエスはそんなに珍しくなかったですよ。ラルフはものによってはジーンズメイトとかマックハウスでも買えましたし、学校でもカーディガンとかスウェットとかみんな着てましたよね https://t.co/HCwJLIx0H9
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) May 18, 2022
この3ブランドが人気だったということについては、同意のツイートが多数ありました。
20数年前の大学時代に、初めて買った「ちょっと気を使った服」がポール・スミスのTシャツ、その後がアニエス・ベーのTシャツ、それプラス実家に帰省した時にアメカジ店で買ったラルフローレン(チャップス含む)だったので、もう完全に同意する。
— 佐久間康幸 (@ozegihs) May 17, 2022
トランス・コンチネンツのリュックがはやった時代。 https://t.co/xZK2inAiqh
おれは高校時代にポール・スミスがめちゃくちゃ流行ってたし、実際におれも持ってた。というか流行ってて普通すぎてみんなちょっと離れたくらい。ちなみに山形県米沢市というド田舎ですけど。アニエスは女の子がよく持ってたし。ちなみに山形県米沢市というド田舎ですけど。ラルフの文化はなかった。
— 齋藤 (@saito_d) May 18, 2022
俺が高校〜大学生の時もポール・スミスは普通に流行ってたしバイトでもすりゃ全然買える値段だったからちょっとお洒落してモテたいみたいな層は普通に着てた記憶 https://t.co/tGOqqk8Dft
— レナオルド・ディプカリオ (@DipCario) May 18, 2022
話はちょっと脇道に逸れますが、90年代から約30年経った今も、人気ブランドとして君臨し続けているポロ・ラルフローレン、アニエスベー、ポール・スミスの3ブランドに対して、驚きの声が寄せられています。
そう考えると、ラルフローレンはずっと「アリ」なブランドであり続けてるのは凄いな。
— ナリタ (@ookiiiro) May 18, 2022
ポールスミスってなんだかこの絶妙なポジションをかれこれ30年ぐらい維持してる気がしてるけど、狙ってやってるのかしら…。
— TANAKA (@dtk0812) May 18, 2022
狙ってようが、狙ってなからうが、どちらにせよとてもすごいことだとは思いますが…。 https://t.co/sbKMFBqOlG
何にしても、ラルフローレンは、高校生が学校で愛用したり、ヒップホップのカルチャーの人たちがポロスポーツを着ていたり、あとはビッグポロビッグチノの流行もあったりと、いまのアメトラの雄的なイメージより広くいろんなシーンで別々の流行り方をしていて、なんだか凄い勢いでした
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) May 18, 2022
ユニクロがつくった「安くてお洒落」
今の認識では、ポロ・ラルフローレン、アニエスベー、ポール・スミスはどれも高級ブランドとされるでしょう。
そもそも、ユニクロがブレイクする以前は、「安くてお洒落なブランド」というカテゴリ自体が存在していなかったと、ツイッターでは指摘されています。
ユニクロの普及以降、景気の悪化や止まらぬデフレもあって、何となくイメージされる「普通」の価格帯が劇的に低くなっちゃいましたけど、あのころユニクロ級の価格の服はファッションに無頓着な人が主な購買層であって、「普通」の服の価格帯って、決して安価ではなかったように思います。
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) May 17, 2022
「洋服に金をかけずオシャレする」なんてのはユニクロ以降に生まれた概念なのに、みんな忘れてしまっているらしい。
— 齋藤 (@saito_d) May 17, 2022
そもそもイメージされている「オシャレには興味があるけど安く済ませたい」という中間的な層は、ユニクロ以降に新たに生み出されたものじゃないだろうか。いい服はどれも高かった。しかもチェーンのカジュアルショップもどの街にでもあったわけでもない。なので昔、特に田舎は、全員ダサかった。
— 齋藤 (@saito_d) May 17, 2022
引用やリプに挙げられているのはどれも「ユニクロ以前に安い服が売られていた店」の情報なだけであって、服に少しでも興味がある人が能動的に選び取っていたいたわけではないはず。「服を買える店がそれしかないから仕方なくそこで買っていた」に過ぎない。そこが違和感。
— 齋藤 (@saito_d) May 17, 2022
服にあまり興味はないけどそれなりにおしゃれをしたいという“普通の人”は、ユニクロをはじめファストファッションによって新たに生まれた層やニーズであって、かつては存在しなかったというのがおれの考え。単純に「昔の人が服を買っていた店」というだけであれば、街の洋品店やスーパーでヨロシ。
— 齋藤 (@saito_d) May 17, 2022
つまり、ユニクロがメジャーになる前は、オシャレをするためにはある程度以上のお金が必要だったということです。
「PARCO」「マルイ」という反応もチラホラ見られるけど、都市部ならそうなるでしょうね。昔は、おしゃれをするには金がかかったんです。
— 齋藤 (@saito_d) May 17, 2022
ユニクロがつくった「普通の人」
当ブログで以前、「ユニクロはファッションの民主化を成し遂げた」という内容の記事を書きました。
クリストフ・ルメールやJ.W.アンダーソンなど、当世のファッションシーンを牽引する超一流デザイナーが手掛けた服が手頃な価格で買えるようになったのは、ユニクロやH&Mなどのグローバルアパレル企業が起こした革命と言えるでしょう。
そして、「お洒落をしたいけれど、それほどお金はかけたくない」という潜在的なニーズを掘り起こし、「普通の人」というマーケットを作り出したことも、革命的でした。
無頓着な人は現代以上に無頓着な感じでしたよね。
— Euphonica 横浜仲町台の洋品店 (@Euphonica_045) May 18, 2022
安くてオシャレな服なんて、ほんとうに少なかったですから。
多少でも服に気を遣っている人とそうでない人の差は、いまよりずっと大きかったように思います。
「何が90年代に流行ったか」の話題に逸れてるけど、要するに、やっぱり「服装に興味のある人」と「まったく興味の無い人」のニ種類しかいなくて、当時は今みたいなその中間層はいなかったし想定もされていなかったということではないかと思います。
— 齋藤 (@saito_d) May 18, 2022
ファストファッション以前、「普通の人」に該当する男性は少数だった記憶があります。ファッションが好きな人とモテたい人以外はけっこう無頓着で、それで特に問題はありませんでした。今はコストをかけずにファッションを楽しめる分、誰もが見た目を整えなければいけない風潮があるように感じます https://t.co/uPSJQ7eRcw
— やま⚓ (@fukunokioku) May 18, 2022
昔は本当に普通の家の高校生大学生がアニエスやBEAMSやアローズで普段着を買っていたが今はユニクロやGUがその位置にいてオシャレな子はハイブランドに行っちゃうので中間層の服を着ている普通の男子という存在をあまり見かけなくなった(若作りおじさんにはいる)
— 𝕞𝕚𝕝𝕝𝕪 (@milly4305511) May 17, 2022
この話題の元になったツイートにある「普通の人=ファッションに特別の興味はないが、完全に無頓着というわけでもない層」は、そもそも存在していなかった、ということです。
『ファッションに特別興味のない普通の人たちはユニクロ以前はどこで服を買っていたか』というのは、『グルメに特別興味のない人たちはサイゼリヤの前はどこでイタリアンを食べていたか』みたいなもんかと。食べてもいないし、食べたいと思ったこともないんだよな。
— 齋藤 (@saito_d) May 18, 2022
「普通の人」が増えた結果起こること
そして、日本ではその「普通の人」の数が年々増加し、現在ではマジョリティと言えるくらいまでの多さになっていると思われます。
故に、「ファッションには興味はないけど服装に気を使う」レベルの人たちは、ユニクロが広まったことにより新たに出てきたというのが自分の答え。その証拠に、信じられないほどダサい服を着ている人を見ることが昔に比べてずっと少なくなったし、都会と地方とで地域差が目立たなくなってきた。
— 齋藤 (@saito_d) May 18, 2022
ユニクロが日本国民のファッション意識の底上げをして、かつてたくさんいたヤバいくらいダサい人を少なくしたというのはほんと凄いことだとだなと。その代わり、ダサい服を着たくなくて仕方がないから百貨店やセレクトショップで買ってた人たちを“引き下げる”こともしたということだな。
— 齋藤 (@saito_d) May 18, 2022
「普通の人」はこれからも増え続けて行くのか。
もし増え続けて行くとしたら、日本のファッションはどうなるのか。
また、現在若者を中心に巻き起こっている古着ブームは、日本のファッションにどのような影響を与えるのか。
これらについてはまた機会を改めて考察できればと思っています。