山田耕史のファッションブログ

ファッションは生活であり、文化である。

ラフ・シモンズのクリエイションのルーツは、東京の男子高校生だった。

今朝起きて、スマートフォンでツイッターを見ていると、こんな衝撃のニュースが飛び込んできました。

 

ラフ・シモンズ、ブランド終了

ラフ・シモンズ

https://www.pinterest.jp/pin/1000854717164656726/

これまで当ブログで何度かご紹介してきましたが、90年代〜10年代のメンズファッションを語る上では欠かせないデザイナーのひとり。

www.yamadakoji.com

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いわゆるモード系のデザイナーですが、スニーカーに対しても大きな影響を及ぼしており、その足跡はこちらの記事でまとめられています。

www.sneakerfreaker.com

そんなラフ・シモンズが、ブランドの終了をインスタグラムで発表したのです。

 
 
 
 
 
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www.instagram.com

2023年春夏コレクションは、27年間の並外れた旅の締めくくりであり、ラフ・シモンズのファッション・ブランドの最終シーズンでもあります。私たちが達成したすべてのことを、どれだけ誇りに思っているか、分かち合う言葉がありません。私のチーム、コラボレーター、プレスやバイヤー、友人や家族、そして熱心なファンや忠実なフォロワーからの素晴らしいサポートに感謝しています。皆さん、私たちのビジョンを信じて、そして私を信じてくれてありがとう。
いつも前向きに、
ラフ

現時点では、ブランド終了の原因は明らかにされていませんが、こちらのガーディアンのウェブ記事では「ファッション業界が直面する激動の金融市場が原因ではないかと推測している」という関係者のコメントを掲載しています。

www.theguardian.com

 

僕が大好きな1999年のラフ・シモンズ

僕はラフ・シモンズの服は一着も持っていません。

ラフ・シモンズは僕にとって「着たい」と思う服をつくるデザイナーではありませんでした。

ですが、ラフ・シモンズが作り出す、独自の世界観には非常に好感を持っていました。

ラフ・シモンズのコレクションの中で、僕にとって一番印象的だったのが、1999年春夏コレクションです。

タイトなシルエットのトップスに、ややルーズなシルエットのパンツ。

https://www.pinterest.jp/pin/915145586764280885/

足元はシンプルなデザインの、なんてことのないスニーカー。

https://www.pinterest.jp/pin/388435536606680216/

どのアイテムのデザインも非常にシンプルなのにも関わらず、少年の繊細さや危うさ、激しさを感じさせるような、独自の世界観が生み出されています。

https://www.pinterest.jp/pin/725009240025230956/

https://www.pinterest.jp/pin/307300374582764956/

特に、この袖を切り落としたテーラードジャケットの格好良さは、当時の僕にとってかなり衝撃的でした。

https://www.pinterest.jp/pin/437130707596540563/

今見ても格好良さは変わっていません。

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https://www.pinterest.jp/pin/857021004075233507/

 

迫力ありまくりのコレクション会場

また、当時印象的だったのが、この迫力ありまくりのコレクションの会場でした。

https://www.pinterest.jp/pin/345369865168072178/

MR1998年12月号の1999年春夏のパリコレクション特集に、そのロケーション情報が掲載されています。

「19区にある科学館」とは、シテ科学産業博物館のこと。欧州最大級の科学博物館です。

www.cite-sciences.fr

特に印象的な巨大な球体は、この科学館の目玉的建造物。

https://www.pinterest.jp/pin/300333868886859564/

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https://www.pinterest.jp/pin/174233079322302367/

この会場選びの妙も相まって、1999年春夏が僕のラフ・シモンズのベストコレクションになっているのだと思います。

 

東京の高校生たちの格好を見て、これだと思った

さて、そんなラフ・シモンズに早い段階で注目していたのが、僕が敬愛するユナイテッドアローズの栗野宏文さん

栗野宏文さんが手掛けるユナイテッドアローズの業態のひとつ、Districtでは現在もラフ・シモンズを取り扱っています。

www.district.jp

2021年4月号のPOPEYEのインタビューで、ラフ・シモンズについて栗野宏文さんがこう話しています。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

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インタビューのタイトルは「栗野さんはトラッドマインドのあるブランドが好き」

このインタビューではコムデギャルソンについても語られており、その内容はこちらの過去記事でご紹介しています。

www.yamadakoji.com

そして、ラフ・シモンズについて栗野宏文はこう語っています。(強調引用者)

ユナイテッドアローズでは、ラフ・シモンズがパリで初めて展示会を催したときから買いつけを行っています。その頃、彼は日本に何度も来ていて、東京の高校生たちの格好を見て、これだと思ったそうです。ネイビーブレザーに腰ばきしたスラックスとスニーカー。私立の高校生が学校帰りに遊んでいるようなスタイルに触発されて、自分のコレクションに取り入れた。そうした視点は、現在のクリエイションにもつながっているのではないでしょうか。

1990年代、初期のラフ・シモンズのクリエイションのルーツに、東京の高校生たちの服装があったことを知り、僕は非常に驚きました。

渋谷のストリートをルーツとするファッションスタイル、渋カジが最盛期を迎えたのが1988、89年

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その後、チーマーの隆盛を経て、1993年頃から渋谷のストリートファッションの中心となったのがコギャル

そして、1994、95年頃には「有名高校生」と言われる、都内の私立高校に通う男子高校生のファッションスタイルが注目されるようになります。

その例がこちらの、木村拓哉が表紙のホットドッグ・プレス1995年9月10日号

ここでは、「今、いちばんカッコいいと噂の男子高校生”男前”選手権」「ストリートで目立つアイツが知りたい」と題し、慶應義塾高校や青山学院高等部、明大中野高校などの有名私立高校生のライフスタイルやファッションを紹介しています。

また、「東京ストリートニュース!」、通称「ストニュー」も、「有名高校生」を数多く取り上げていました。

この表紙を飾っているような、東京の男子高校生の服装が、ラフ・シモンズのクリエイションに影響を与えていたという事実は、なかなか衝撃的ではないでしょうか。

 

ラフ・シモンズのスクールボーイスタイル

では、こういった男子高校生のファッションをベースに、ラフ・シモンズはどんなコレクションを展開していたのでしょうか。

こちらはラフ・シモンズの1996年春夏コレクション

https://www.pinterest.jp/pin/82190761937367044/

こちらは1997年秋冬コレクション

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https://in-the-name-of-raf.tumblr.com/post/107101874019/raf-simons-aw-1997-98

1990年代のラフ・シモンズのコレクションを見ていると、確かに東京の男子高校生がルーツのひとつと思われるような、スクールボーイスタイルが軸となっているように思えます。

そして、1990年代のラフ・シモンズを象徴するスクールボーイスタイルの集大成となったのが、1999年春夏コレクションではないかと思っています。

https://www.pinterest.jp/pin/559079741253971567/

https://www.pinterest.jp/pin/325103666851275366/

 

やっぱり日本のストリートファッションは面白い

今回ご紹介したラフ・シモンズの例だけでなく、日本のストリートファッションの影響力は、意外と知られていないのかもしれません。

先日の記事でご紹介した、NIGO®らが牽引した裏原系も、その例のひとつでしょう。

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そして、今もなお日本のファッションはその面白さを失っていないと、僕は思っています。

その面白さを広く伝えたいと思い、僕は「TOKYO FASHION DIG」で、日本のファッションを英語で発信しています。

tokyo.yamadakoji.com

これからも日本のストリートファッションは面白くあって欲しい。

心からそう願っています。

参考文献: