山田耕史のファッションブログ

ファッションは生活であり、文化である。

【1985年】DCブランドと「普通の古着」が織りなす、時代を超える普遍性のあるファッション。

目次

今回ご紹介するのは「POPEYE」1985年9月10日号です。

 

新鮮に見えるDCブランドファッション


前回は1987年、そして前々回は1986年と、最近は1980年代のDCブランドブームに関する記事が続いています。

www.yamadakoji.com

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理由は単純に、非常に新鮮に見えるから。
そして、今回ご紹介する「POPEYE」1985年9月10日号も同じように、非常に新鮮に見える上に、単純に格好良いのです。
なので、いつものnoteでは歴史的な内容を併せてご紹介していますが、今回は基本的に誌面に登場しているファッションのみ。
あまり振り返られることのない、DCブランドブームファッションの格好良さを堪能していただけたらと思います。
まずは目次。

「特集は「お洒落して街にくり出そう」。9月号ということで、「お洒落を楽しむ季節がやってきた」「長袖たちのおでましだ!」と、秋冬の導入的な内容になっています。

日立の広告。この頃のPCの配色は今よりもモダンに感じます。

ニュースページの「POP-EYE」。

金子功さんの<カールヘルム>です」。

文中にもあるように、DCブランドの草分け的存在のひとつで今も根強いファンを持つ、ピンクハウス。

そして、ピンクハウスと同じく金子功さんが手掛けるメンズブランド、カールヘルム。「まったくファッションに興味のない男っぽい人が、その男らしさをほんの少し殺すといった感じで着てほしい」と、金子功さんがコメントしている通り、ポップで可愛らしいデザイン。

ミズノの広告ページ。
アシックスに続いてミズノのスニーカーにも脚光が集まりつつあり、ストリートブランドとのコラボアイテムも続々発売されている昨今。ですが、ランバードというブランドネームは見かけませんね。

 

フォーマル感が強かったメンズファッション

モノクロページは「’85秋冬ファッション傾向と対策 秋ものを買う前に、これだけ知っておく」

「なんと言ってもまずテーラードのジャケットだ」という大前提が、今の感覚だと非常に新鮮。そして、コーディネートアイテムとして挙げられているのは当然レザーシューズにシャツ。メンズファッションが今よりも圧倒的にフォーマル感が強かったことが伺えます。

そして、このシーズンは新たなトレンドキーワードとして「英国」が浮上していたようです。

 

DCブランドアイテムのアクを抜く「普通のジーパン」

右ページの「LDでいつまでも永久保存です」というキャッチコピーも気になりますが、左ページからの「街を流して(ブラブラ)いるだけで、満足!」という特集がとっても格好良いのです。

ロケ地はおそらく全編パリ。そして、現地のモデルを起用していると思われます。クレジットを見ればわかりますが、Y'sフォーメン、ジュン・メン、イサム・メンなど、当時人気だったDCブランドアイテムがメイン

正直、DCブランドブームの頃のファッションが格好良いというイメージは個人的になかったのですが、この特集は普通に格好良いのです。

例えば、左端のチェックパンツのコーディネートとか、めちゃくちゃ良くないですか?

なぜ格好良いのか。その理由がわかりやすいのが、右ページのスタイリング。

かなり印象的な柄のテーラードジャケットに、色落ちしたジーンズというコーディネート

クレジットを見てみると、ジーンズは老舗古着屋のヴォイスやデプト、シカゴなどの商品で2千円台~4千円台の、いわゆる普通の古着のジーパン
キメてる感が非常に強いDCブランドのテーラードジャケットに、こういった力の抜けたジーパンを合わせると、いい感じにアクが抜けて良い雰囲気になるのでしょう。

対象的に、こちらのページはトップスもボトムスもDCブランドアイテム。なので、ちょっと気合が入りすぎな印象があります。

この見開きページは写真の空気感のスタイリングも非常に格好良いです。

ここでも、普通のジーパンが効果的に使われています。

特に右側のロングコートに白Tシャツをジーパンにタックイン、そしてコンバースオールスターというコーディネートの格好良さときたら。普段あまりジーパンは穿かない僕ですら、真似してみたいと思う格好良さです。

とはいえ、こちらの右ページのように、全身DCブランドアイテムで固めるという格好良さもあります。

タケオキクチやジュン・メンなど。

クレジット一覧。

こちらのページでは、古着のTシャツやスウェットとDCブランドアイテムをコーディネート。

次の特集は「徹底研究シリーズ」。最初はシャツ。当たり前の話ですが、同じMサイズでもブランドによってサイズが全然違う、という内容です。

こちらの特集も、スタイリングが格好良いんです。

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写真自体の雰囲気もあるんですが、やはりキメキメよりもある程度力が抜けがスタイリングの方が普遍性がある気がします。

個人的に好きなのが、シャツのインナーに着ている白Tシャツが見えているとこ。

このスタイリングも素敵。

「ブランド別サイズ比較研究」。ずらりと並んだ、DCを中心としたブランドの数々。

お次はローファー。「西のコールハン、東のバスといわれるようにローファーの代表選手だね」。当時はコールハーンじゃなくてコールハンだったんですね。

ワークシューズはレッドウィングやホーキンス。

左ページ、シチズンのインターセプターという時計の広告。ナイスデザイン。

 

コムデギャルソンを魅力的に見せる「普通の古着」

次は、「POPEYE」と同じマガジンハウス社の女性誌「アンアン」「オリーブ」「エル・ジャポン」の女性スタイリストが提案する、「君たち!この服にしなさい!ハイ!」という特集。

「アンアン」の山本ちえさんご推薦はアニエスベーのスウェットパンツ。

この特集のスタイリングも格好良いんです。こうやって見ると、スウェットパンツではなくウールパンツに見えますが、こういうシックに着るスウェットパンツってなかなか新鮮。

そして。お次は「ちょっと高いけど、コム・デ・ギャルソンのタートルセーターを手に入れて」と提案する「エル・ジャポン」の堀越絹衣さん。

こちらのスタイリングも、めちゃくちゃ格好良い

右のジャンプしている彼は、トレンチコート、ジーパン共に古着。今も原宿や下北沢に店を構える老舗、シカゴの商品です。先程の特集と同じく、コムデギャルソンも普通の古着と合わせると、その魅力が更に増すんですね。

堀越絹衣さん曰く。
「私の場合、何を着るにしても、カチッと着こなした男のコっていうのは、あんまりステキだとは思わないんだ。汚れっぽいのはイヤだけど、ちょっとヨレッとした感じが好きなの。ワークウェアっぽく着こなしてる感じがいいな。そうは言っても、ワークウェアそのものをワークウェアっぽく着たってそれは全然お洒落じゃないし、つまらないでしょ。例えば、コム・デ・ギャルソンのものを、さり気なく、ワークウェアっぽく着こなす、というのがすごくお洒落だと思う」

今やメルカリやヤフオクでもなかなかお目にかかることができない80sプリュス。僕は着たことすらないので、一度袖を通してみたいもんです。

「Y'sの薄手ウールのスーツはヌーベルバーグ映画の主人公になった気分で」…なかなかハードルが高い…

「タケオ・キクチのベーシックなジャケットを少年のようにさり気なく」

クレジットにはありませんが、こちらも古着と思われる普通のジーパンが良い雰囲気

「ニコルのウール・シャツをちょっと洒落て大人っぽく」。以上で「君たち!この服にしなさい!ハイ!」特集は終わり。

そして舞台はまたパリに戻ります。クレジットから察するに、ジュン・メンのタイアップページのようです。

スタイリングは山本康一郎さん。

こちらもクレジットにはありませんが、古着と思われる色落ちしたジーンズがいい感じ。

「彼女を連れてトボケている男の子は、レアール育ちの伊達男」。レアールはパリの中心地のひとつですね。僕が留学していた約20年前はスニーカーショップが数多く並んでいましたが、今は大きなショッピングモールができているようです。

こちらとその次のページはペイトンプレイスフォーメンのタイアップページ。ペイトンプレイスフォーメンは後のPPFMです。

「別に、気取ってるわけじゃない」。

こちらのスタイリングもいい雰囲気。

こちらはタイアップページではありません。ニコルクラブフォーメンやコムデギャルソンオムなど。

右から二人目が着ているであろうコムデギャルソンオムが全然見えないのが非常に残念。

「今日は帽子かぶってみようと思ってる」

使われているのはカールヘルムがメイン。

「着てみた?タートルセーター」「誰だよ、男にタートルは似合わないなんていったのは!」。

どうやらこの当時、タートルネックニットは「新しいアイテム」だったようです。

クレジットには上野の老舗ミリタリーショップ、中田商店をはじめ、サンタモニカやデプトなどの古着屋の数々が掲載されています。

DCブランド、メンズバツのタイアップと思われるページ。柄シャツ推し。

流石にここまでアクが強いアイテムでも良く見えるのは、モデル&ロケーションの力が大きいような気がしますが…

こちらもメンズバツタイアップと思われます。

 

「ドッカーズ」展開前夜のリーバイス「ドッカー・パンツ」

左ページ、リーバイスの「オフィサー」と「ドッカー」の広告。

「ドッカーズ」ではなく、「ドッカー・パンツ」。オフィサー・パンツが「アメリカン・アーミーのオフィサー」で、ドッカーは「フレンチ・ネイビー」という棲み分け。

以前、「山田耕史のファッションブログ」でご紹介しましたが、リーバイスがドッカーズブランドの展開を始めたのが1986年

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なので、この広告はドッカーズ展開直前、リーバイスブランドでドッカー・パンツが販売されていた頃の広告ということです。
ドッカーズのパンツはまさに「普通の古着」なので、僕はよくコムデギャルソンの服に合わせています。

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お次はDCブランド、メンズフランドルのタイアップページ。

こちらはグラス・メンズ。

DCブランドのタイアップページが続きます。アルバタックス。

アバハウス。

ジェラモーダ。

こちらは足跡マークでお馴染み?のハンテン広告。

80年代らしいポップな配色デザイン。電卓とか文具とかの雑貨も展開しているのもこの時代ならでは感があります。

次の特集は「これで“ブランド”のこと、すっごくくわしくなった。」

 

<h2">川久保玲「男はフツーのものを、さりげなく着るのがいちばん」

DCを中心とした人気ブランドの詳細解説です。まずはメンズビギ。

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ニコルクラブフォーメンやタケオキクチなど。

そして。ジュンメンとコムサデモードの間にあるのが、我らがコムデギャルソンオム

「田中オム」として知られる田中啓一は当時まだ入社前。コムデギャルソンオムのデザイナーは川久保玲です。「男物の方はいたってシンプル。“男はフツーのものを、さりげなく着るのがいちばん”というポリシーをまんま服にしたようなファッションだ」。いやぁ、流石川久保玲ですね。

「兄弟ブランド」として挙げられているプリュスは「川久保玲さんが、大人の男が遊びで切らえる服をイメージに作ったブランド」という立ち位置だったそう。

というか、オムのジャケットが5万円アンダー、パンツが2万円アンダーと、今から考えるとお手頃な価格です。

Jプレス短編集by村上春樹

今号のご紹介は以上です。
で、裏表紙は村上春樹さんの短編エッセイが掲載された、Jプレスの広告。こういった贅沢な広告も、この時代ならではでしょう。