目次
- 「FINE BOYS」1998年11月号
- 良さが伝わるダーク・ビッケンバーグ広告
- ナンバー44×ヘルムート・ラング×ルーディックライターの鉄壁コーディネート
- イマドキなリュウイチロウシマザキのカーゴパンツ
- ミニマルとミニマル・アート
- 抽象ではなく本質を表現する「ミニマル」
- 今、ただここにあるという純粋なもの
- ファッションにおける本質的な「ミニマル」とは?
- 1998年の「3大人気ショップ」
- ラング、サンローラン、ビューティービースト…人気デザイナーズジーンズ大集合
- アルフレッド・バニスター高原啓の本棚の中身
- カリスマブランド、ウィルス
- 「もと東京SEX PISTOLSのJONIOさん」
- 「原宿に強力新ブランド!」ラウンジリザード始動
- コンセプチュアル過ぎるビューティービースト特集ページ
- 読者に人気のブランドはビューティービーストでも20471120でもマサキマツシマでもなく…
- ビューティービーストのカルチャーミックスイベント
- 中田商店で米軍M-65が8,500円
「FINE BOYS」1998年11月号
今回の“アーカイブディグ”でご紹介するのは、「FINE BOYS」1998年11月号です。
数多くのメンズファッション誌が休刊という名の、事実上の廃刊となっている昨今。「FINE BOYS」は今もティーンズ向けファッション誌として発刊されています。
1990年代の「FINE BOYS」は、当時人気だったデザイナーズブランドを中心としたモード系のスタイル。ですが、同じモード系のメンズノンノやチェックメイトよりもカジュアルな雰囲気で、おそらくターゲットは高校生〜大学生くらいだったと思われます。
早速誌面を見ていきましょう。
表紙裏の広告はメンズヘアスタイリングブランドのBOLTY。竹野内豊さん。めちゃくちゃ格好良いですね。
目次。
表紙のコーディネートに使われていたのは、ジュリアーノ・フジワラやジョン・ロッシャなどの、当時大人気までとは言いませんが、中堅的な人気があったデザイナーズブランドが中心。
イネドオム広告。1980年創業の日本のアパレルメーカー、フランドルが展開していた、いわゆるマルイ系ブランドです。
マルイ系については僕個人として結構思い入れがあるので、当ブログでもこれまで何度かご紹介しています。
他のマルイ系ブランド同様、フランドルもDCブランドブームの頃に頭角を現した会社です。DCブランドブームについてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。
良さが伝わるダーク・ビッケンバーグ広告
続いての広告は、ベルギーのデザイナーズブランド、ダーク・ビッケンバーグ。マスキュリンで力強いデザインが特徴だったダーク・ビッケンバーグのスタイルが伝わる、良いデザインの広告だと思います。
当時高い人気を集めていたアントワープ王立美術アカデミー出身のデザイナーで、この広告でも象徴的に扱われているレザーブーツはダーク・ビッケンバーグを代表するアイテム。
20年越しに再評価される90sオジサン感涙のダーク・ビッケンバーグ。
— 山田耕史 ファッション×歴史のブログ“アーカイブディグ”はじめました。 (@yamada0221) 2020年12月19日
ウルトラ格好良いですが…これ、履き心地良くないんですよね笑 pic.twitter.com/lmwekx8GmH
ダーク・ビッケンバーグ。僕個人の体感的には当時のデザイナーズブランドのトップグループを走っていた感があったんですが、同じくトップグループで今はアーカイブものが大人気のヘルムート・ラングとはかなり評価の差がありますよねぇ。この差はなんで生まれたんでしょ。 pic.twitter.com/j3cnKRDAzB
— 山田耕史 ファッション×歴史のブログ“アーカイブディグ”はじめました。 (@yamada0221) 2020年3月21日
右ページには全国の取扱店リストが掲載されています。
神戸の取扱店はボードレーという、神戸では数少なかったモード系セレクトショップ。当時大学生だった僕はかなり足繁く通っていました。かなり思い出深いお店です。
そんなボードレーは2022年に閉店してしまっています。
神戸のセレクトショップ、ボードレーが閉店。
— 山田耕史 ファッション×歴史のブログ“アーカイブディグ”はじめました。 (@yamada0221) 2022年1月18日
大学生の頃は本当によく通っていました。クリストフ・ルメールとかミハラヤスヒロとか、デザイナーズが揃っていて楽しかったなぁ。
お疲れ様でした。
baudelair blog: 閉店のお知らせ https://t.co/mewL2UiYyO
ナンバー44×ヘルムート・ラング×ルーディックライターの鉄壁コーディネート
今号の特集が「ミリタリー&スポーツ」。というか、この左ページのコーディネートがめちゃくちゃ格好良くないですか?
胸元のレッドのベルクロが印象的なミリタリーアウターの下に、同じレッドのモヘアニット。どちらのアイテムも、当時大人気だったセレクトショップ、ナンバー44のもの。当時の日本のメンズファッションに大きな影響を与えていたナンバー44ですが、現在ではほとんど語り継がれていないようなので、そのうちこの“アーカイブディグ”で詳しくご紹介できたらと思っています。
そして、ジーンズは90年代を代表するデザイナーズブランドである、ヘルムート・ラングのカジュアルライン、ヘルムート・ラング・ジーンズ。そしてスニーカーは同じくこの頃大人気だった、ルーディックライター。
この頃鉄壁の人気を誇っていたナンバー44×ラング×ルーディック・ライターのコーディネート。
この時代ならではの雰囲気を醸し出しながらも、今でもとってもクールに感じる普遍性も併せ持っています。
次ページもレッドがポイントカラーになっています。
右ページも、ヘルムート・ラング・ジーンズとナンバー44を軸としたコーディネート。
マフラーはジャン・コロナ、パンツはポールアンドジョーのもの。どちらも当時人気のデザイナーズブランドでした。
僕的にはこの頃のイメージが非常に強いので、先日イトーヨーカドーでポールアンドジョーのランドセルを見つけたときはびっくりしました。
イトーヨーカドーでポール&ジョーのランドセル売っててびっくり。 pic.twitter.com/vx8TNWkHiQ
— 山田耕史 ファッション×歴史のブログ“アーカイブディグ”はじめました。 (@yamada0221) 2023年6月11日
左ページのパーカも、当時人気だったデザイナーズブランド、アンドリュー・マッケンジーのもの。
当時、アンドリュー・マッケンジーが打ち出していた裾裏にプリントが入ったジーンズは大人気で、模倣品も数多く見かけました。
「レイヤード」。
カモフラージュアイテム。
90年代人気で、最近古着でも高騰しているワンショルダーバッグも迷彩柄。
オリーブカラーアイテム。メンズビギが展開していたラッドメスや、ポール・スミスのセカンドブランド的存在だったR・ニューボールドなど、マルイ系ブランドが中心になっています。
「気になるキーワード9 '98秋冬おしゃれテキスト」という、テーマ別の提案。最初は「クラシック素材」。
「今シーズンの注目素材といえば、ツイード、フランネル、フェルトといったクラシック素材」ということで、ラッドメスの圧縮ウールコートがピックアップされていますが、僕が当時愛用していたコートは、これと同じ素材でデザイン違いのものじゃないかと思っています。フライフロント、フーデッドというデザインで、神戸の三宮にあったビブレで買ったんですよね。結構気に入った愛用していました。
左のコーディネートのちょっと青っぽいグレーはこの頃独特の色合いです。
お次は「レザーアイテム」。
ピックアップされているアイテムの多くはマルイ系ブランドのもので、レザーアイテムと言えど、ゴツい雰囲気は全くありません。
コーディネートの色使いも、やっぱり時代性を強く感じます。
ピンクのプリントのTシャツは、クリストフ・ルメールのもの。当時のクリストフ・ルメールはこういう綺麗な色使いが多かったので、一際好きなブランドでした。
「リラックスニット」。
カジュアル感の高いローゲージで凹凸感のあるニットも、モードな雰囲気のスタイリング。
「切り替えデザイン」。
真ん中のコーディネートは全身ネペンテス。
このトップスは抜染のようです。
イマドキなリュウイチロウシマザキのカーゴパンツ
「ワーク系パンツ」。
このコンパクトなシルエットのトップスにカーゴパンツというコーディネートは、かなりイマドキな雰囲気。
ピックアップされているアイテムも、今着たいと思えるものばかり。
特に「計14個着いた立体的なポケットがインパクト十分」な、リュウイチロウシマザキオムのパンツは非常にいいですね。
リュウイチロウシマザキオムは、無印良品のメンズデザイナーなどを務めた嶋崎隆一郎さんによるブランド。
様々なブランドのデザインを手掛け、パターン付きの本も出版されています。
こういうスタイリングも今の気分ではないでしょうか。
「グレーアイテム」。
「ミニマルかつ洗練されたグレー」。
左のテーラードジャケット、4つボタンで、かなり狭いVゾーン。
いかにもモードな雰囲気のコーディネート。格好良いのでついつい真似したくなりますが、こういうスタイルはモデルさんのようなイケメン&スラッとボディじゃないと、なかなか厳しそうです。
「グラデーションをベースにミニマルに徹するのが鉄則だ」と、ここでも「ミニマル」という表現が用いられています。
「フードアイテム」。
右恥のプルオーバーパカはトランスコンチネンツのもの。当時はキレイ目、モード系に人気のブランドで、僕も神戸の旧居留地にあったお店によく行ってました。
「比翼フロント」。
ここでも「ミニマル」。
右の綺麗なブルーのコートはクリストフ・ルメール。
左のブラウンのブルゾンはイギリスのブランド、6876。こちらも当時人気のブランドでした。
「ロングコート」。
ピックアップされているのは、イネドオムやポール・スミス。
右端のグレーのコートは、ジャック・ヘンリー。
「ミニマルに着こなすのがポイント」。
ミニマルとミニマル・アート
「ミニマル」という言葉がこれだけ立て続けに登場しているということは、この頃のファッションを語る上で非常に重要だったということでしょう。
「minimal」は、辞書的には「最小限の」という意味です。
そして、その「ミニマル」に「イズム=主義」を足した、「ミニマリズム」という言葉のアート的な意味あいは、以下のようになるようです。(強調引用者以下同)