90年代のファッション誌を中心に、昔のファッション誌のアーカイブを兼ねてご紹介する企画、ファッションアーカイブ。
これまでの記事はこちらから。
今回ご紹介するのはメンズノンノ1998年8月号。こちらはツイッターのフォロワーさんからご提供いただきました。ありがとうございます。
これまでのファッションアーカイブでは4冊の1998年のファッション誌をご紹介しています。
1998年ってどんな年?
誌面のご紹介の前に、1998年はどんな年だったのかを見てみましょう。
出来事
・1998 FIFAワールドカップ(フランス大会)開幕
・Windows98発売
・Google設立
・長野オリンピック開幕
・hide死去
・和歌山毒物カレー事件
・日本でiMac発売
経済
1991年のバブル崩壊の影響は7年経過した1998年でも続いており、また1997年にはタイを中心に始まり、アジア各国の通貨が急激に下落したアジア通貨危機も発生。
雇用情勢も完全失業率が前年から0.7%上昇し4.1%、有効求人倍率も過去最低となるなど、非常に厳しい状態でした。
1997年の消費税の税率引き上げや、大手銀行破綻による雇用不安などから個人消費は低調。金融機関の貸し渋りにより企業の設備投資も減少し、景気を知る指標となる景気動向指数も低く、1997年10-12月期から1998年7−9月期まで4半期連続でマイナス成長を記録するなど、景気は低迷してました。
http://economist.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/3-3654.html
映画(日本公開)
そういった状況ながら、あるいはそういった状況だからこそ、なのでしょうか。映画はヒット作が多数。僕個人的には、当時非常に影響を受けたエヴァンゲリオンの劇場版(いわゆる旧劇)が公開されるなど、カルチャー的にも注目度が高い作品が多数公開されています。
タイタニック
踊る大捜査線 the movie
ディープ・インパクト
メン・イン・ブラック
ラブ&ポップ
リング
スポーン
新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH (TRUE)² / Air / まごころを、君に
ムトゥ 踊るマハラジャ
オースティン・パワーズ
新機動戦記ガンダムW Endless Waltz 特別篇
プライベート・ライアン
アルマゲドン
ヒット曲トップ5
音楽も同様で、B'zのベストアルバムが歴代最高(当時)の500万枚を突破、日本国内でのCD生産枚数が約4億5717万枚と国内史上最高を記録し、CDバブル絶頂期を迎えます。
1位 GLAY:「誘惑」
2位 SMAP:「夜空ノムコウ」
3位 SPEED:「my graduation」
4位 BLACK BISCUITS:「タイミング 〜Timing〜」
5位 GLAY:「SOUL LOVE」
今見ても格好良いストリート×ミリタリーミックス
さて、誌面のご紹介に戻ります。映画や音楽同様、この時代のファッションも非常に豊かだったと思います。表紙の永瀬正敏さんは、当時のオシャレ俳優の筆頭。今で言う所の菅田将暉さん、いやそれ以上かもしれません。着用しているTシャツはアンダーカバー。
NTTドコモのポケベルの広告は、この年に早稲田大学に合格した広末涼子さん。リンガーTシャツっぽい配色の半袖ニットに、ギンガムチェック柄のスカート。
カシオG-SHOCK刻々。
日産キューブ広告は河相我聞さんと草野仁さん。
巻頭特集は”ミリタリー最前線”・
向かって左のモデルさん、見覚えがある方も多いのでは。
後にファッションブランド、ベドウィン アンド ザ ハートブレイカーズを立ち上げる渡辺真史さんです。スタイリングは熊谷隆志さん。
渡辺真史さんに気を取られてしまいましたが、右ページのナイロンの上下にゴツいDC SHOEというコーディネート、非常に格好良いですね。
テンダーロインやローライダーなどのストリートブランドとミリタリーアイテムのミックス。どのコーディネートも格好良いです。個人的には右ページ左と中のコーディネートが好みです。
右ページ左の迷彩柄のカットソーにカーゴショーツ、そしてビルケンシュトックのサンダルというコーディネートもいいですね。
テイストミックスがクリエイティブ
”パリ・ロンドン・東京ファッションパパラッチ'98”。
実は当時、この号を持っていたことをこのページを見て思い出しました。このロンドンの彼の服装が非常に印象に残っていたんです。特に右ページ。上掲のhideのプロモーションビデオのようなサングラス、アディダスのトラックジャケットのインナーにはW<のTシャツ、そして同じくW<のアンダーウエアをチラ見せしてパンツは古着のジーンズというミックス感がとても好みでした。
また、W<のようなアヴァンギャルドなデザイナーズブランドだけでなく、小綺麗な服装の時もある、というのがまたいいなぁと思った記憶があります。上掲のミリタリーページもそうでしたが、90年代終盤は様々な要素のミックスに、クリエイターもユーザーも挑戦していた時代ではないでしょうか。そして、だからこそ個性的で今見ても新鮮なんだと思います。
打って変わって、シンプルな印象の彼はロンドンの老舗セレクトショップ、ブラウンズのマネージャー。ラフ・シモンズやヘルムート・ラング、プラダにコムデギャルソンといったデザイナーズブランドが中心。
シューズはやっぱりスクウェアトゥ。
右のコーディネート、ジーンズはエヴィスですね。
東京。古着にクリストフ・ルメールやW<、ポール・スミスなどのデザイナーズブランドを合わせるなど、こちらもミックスコーディネート。左の彼は”モードと古着をミックスさせるテクを、もっと研究したいです”とコメント。
”パリジャンの着こなしテクを盗め!”。足元はスケートシューズっぽいスニーカーが多い印象。
基本的にシンプルなコーディネートが中心。
ジーンズは”「リーバイス」「ディーゼル」「G-STAR」が人気”。
カラーデニムに厚底スニーカー、スポーティーなライン入りトップスもこの時代っぽいですね。
既にハイテクスニーカーの熱狂的なブームは過ぎ去り、好きな人が履いているという時代でした。
フットスケープのオリジナルカラー、復刻してくれませんかねぇ…。
”お金をかけずに古着をうまく取り入れたり、色を合わせたり。クリエイティブなかっこよさが光るロンドンスピリットの最新!”トラックジャケットはやっぱりロンドン、ってイメージが強いですね。
”古着こそ、何が似合うのかを知っている男たちの領域だ”。
”ワイドパンツにはピタッとしたTシャツやニットをあわせる。グッと男らしさがでてくる”。タイトシルエットに男らしさを見出している感覚が興味深いですね。
次回に続きます。