山田耕史のファッションブログ

ファッションは生活であり、文化である。

00年代「マルイ系」ブランド、PPFMの海外から熱狂的な支持を受けるガラパゴス的超進化デザイン。

目次

2ヶ月ほど間が空いてしまいましたが、これまで2回にわたってご紹介してきた、『FINE BOYS』2006年12月号についての記事の続きです。

www.yamadakoji.com

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表紙は堂本剛さん。

 

ロック×トラディショナルという組み合わせ

これまでの記事でも触れていますが、『FINE BOYS』は高校生、大学生を中心としたティーンズがターゲットのメンズファッション誌。

誌面に登場しているのは、マルイ系やセレクトショップオリジナルなど、学生でも比較的手を出しやすい価格帯のブランドが中心です。

“着まわし術でさらに差をつけるには?”

ディオール・オムでも展開していたような、ロックな印象のレザー素材のM-65に合わせているのが、ショッキングピンクのニットにウイングカラーシャツという、トラディショナルなインナー

この特集ではこのような「ロック×トラディショナル」という組み合わせが多く見られます。

こちらはロックの中でもヴィジュアル系を彷彿とさせるようなコートに、シャツ、スラックス、コートというトラディショナルアイテムとのコーディネート。

“「黒」「チェック」「レザー&ニット」の流行法則”

こちらでも黒ベースのアウターにシャツや中折れ帽といった、ロック×トラディショナルスタイル

トラディショナルなテーラードジャケットもロックっぽいイメージ。

“Q:ミックススタイルで需要なのは?A:旬の柄はチェック。特にグレンチェックはマスト! ”

けばけばしい紫色で、タイトなシルエットのキルティングジャケットはかなりインパクト。

ダウンジャケットはどれも腰上のブルゾン丈。かなりコンパクトなシルエットです。

そして、こちらのページで提案されているスタイルはロック×トラディショナルの究極系かもしれません。

ボア付きのボマージャケットにタータンチェック柄のスラックス、レザーのライダースジャケットにドット柄のシャツ。

レザー素材のミリタリーアウターやライダースジャケットに、アーガイル柄のニット。

続いてのこのページも、かなりのロック×トラディショナル。

“ミリタリースタイルをフェルトハットでキレイめにスタイリングしよう”と、ミリタリーアウターやゴツいブーツなどのロックっぽいアイテムと、メンズグッズの中でもかなりトラディショナルな部類のアイテムであるフェルトハットとのコーディネートを提案。

こちらもページもロック×トラディショナル。

モッズコートにフェルトハット、ドット×ストライプ柄のネクタイ。

ライダースジャケットにドット柄のネクタイ。

ストールの巻き方や小物の取り入れ方。

ニットキャップのレイヤードという、かなり攻めた“裏技テク”。

 

今はなきマルイ系ブランド、ルパート

次はマルイ系ブランド、ルパートのタイアップページ。僕の印象で言えば、ルパートは数あるマルイ系ブランドの中でも中堅的な位置にあったと思います。

調べてみると、ルパートはビギグループの一社である株式会社ピー・エックスが展開していたメンズブランドだったようです。

ですが、現在のビギグループのサイトを見てみても、株式会社ピー・エックスもルパートも見当たりません。

www.bigi-group.com

さらに調べてみると、株式会社ピー・エックスは2021年に「合併による解散等」を理由に閉鎖されていました。以前は株式会社ピー・エックスが展開していたレディスブランド、TABASAは同じビギグループの株式会社パパスに移っているところを見ると、ルパートはブランド終了になっているという認識でよいかと思います。

info.gbiz.go.jp

“’60年代UK”や“骨太なロックテイスト”などの言葉が並びます。

このあたりの雰囲気は、2023年の今の感覚からは一番遠いファッションではないでしょうか。

次ページは“ルパートショップ対決 オススメアイテム&コーディネイト”

4店舗がピックアップされていますが、そのうち3店舗はマルイシティ渋谷錦糸町丸井柏丸井と、首都圏の丸井に店舗を構えていました。

 

マルイ系の祖は80年代のDCブランド

そもそもマルイ系とはどういったブランドなのでしょう?

俗語なのできちんとした定義はありませんが、マルイに主に店舗を構えている、日本のアパレル会社が展開するメンズブランド、というのが僕的なマルイ系の定義です。

具体的には、こちらは以前の“ファッションアーカイブ”でご紹介した、『HOT DOG PRESS』1986年5月10日号に掲載されていた、“一目でわかるD.C.ブランド発展図”。この図に登場しているビギグループやニコルグループなどが展開していたブランドの多く、具体的にはメンズ・ビギやメンズ・メルローズ、ニコル・クラブ・フォーメン、ジュン・メンなどが後のマルイ系となります。

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つまり、マルイ系の祖は80年代に一世を風靡したDCブランドだったということです。

その他、DCブランドブームについては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。

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僕の個人的な90年代のマルイ系の思い出

僕がマルイ系と出会ったのは、大学入学後の1998年

高校のときは古着屋やジーンズカジュアルショップで買ったアメカジがメインでしたが、大学入学後に三宮にあった神戸ビブレにあったアバハウスやPPFM、メンズ・ビギなどのマルイ系で服を買っていた時期がありました。

1998年当時はプラダスポーツが大人気でした。

こちらが当時のプラダスポーツ。

今見てもめちゃくちゃ格好良いです。

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多くのマルイ系ブランドはプラダスポーツの特徴的な意匠である、赤いラインを模したデザインの商品を数多く展開していました。

 

海外で再評価される00sマルイ系

マルイは『Men's Voi』という通販カタログも発行していました。レディスは『Voi』。定価300円とありますが、当時はマルイに行けば無料で貰えていたはずです。こちらは2006年秋号です。

1980年代のDCブランドブームで人気を集めた、日本メンズファッションブランドの多くは、エディ・スリマンのディオール・オムのロック系モードスタイルを元にガラパゴス的進化を遂げ、過剰に装飾的な独自のロック系モードスタイルを確立していました。

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2000年代のマルイ系のデザインには、エディ・スリマンのディオール・オムと、宮下貴浩のナンバーナインが大きな影響を与えていたことについては、以前の“ファッションアーカイブ”でご紹介しました。

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海外で再評価されるマルイ系ブランドPPFM

以前、当ブログでもご紹介しましたが、2000年代のマルイ系がここ数年海外で再評価されています。

なかでも注目度が高いブランドがPPFMです。

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PPFMは「ペイトンプレイスフォーメン」の略で、同ブランドは上掲の1986年“一目でわかるD.C.ブランド発展図”にも登場しています。コムサ・デ・モードで知られる、ファイブフォックスグループのブランドでした。

↑の図の中では、“この10年間に飛躍的な成長を遂げている”、“現在ビギ、ニコル、ジュンに続いてD.C.系アパレルの第4位を占めている”とあり、DCブランドブーム当時、ファイブフォックスはかなり成長株の企業でした。

僕がマルイ系を買っていた1990年代終盤も、コムサ・デ・モードを筆頭とするファイブフォックスのブランドには人気があり、当時神戸にできたファイブフォックスが運営するカフェ、コムサカフェはちょっとしたオシャレスポットという扱いでした。

PPFMが海外で再評価されている理由は、他のマルイ系とは一線どころか三線、四線くらい画している攻めたデザインにあると思います。

 

2009年の熱狂的PPFMファン

こちらは2009年のストリートスナップ

www.web-across.com

なんと、バッグ以外の全てのアイテムをPPFMで揃えた熱狂的PPFMファンです。

それぞれのアイテムはどれもかなり癖の強いデザインです。が、おそらくこの癖の強さが熱狂的なファンを生んでいたのでしょう。

 

00年代マルイ系再評価のルーツはドルチェ&ガッバーナ

PPFMが海外で再評価された背景には、2000年代のファッションの再評価、つまりY2Kトレンドがありました。

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