山田耕史のファッションブログ

ファッションは生活であり、文化である。

2022年は古着ブームの終わりの始まりなのか。

dマガジンを導入してからファッション誌を購入することはかなり少なくなりましたが、先日本屋でさわりの部分をちらりと見ただけで即購入したファッション誌がこちら。

EYESCREAM2022年7月号です。

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EYESCREAMは良い特集が多いので、ちょくちょく購入しています。

今号は「Tokyo Daily Vintage Fashion」と題された古着特集

eyescream.jp

 

下北沢が古着屋で埋め尽くされていく

「2022年東京 日常着としての古着 Tokyo Daily Vintage Fashion」と題された、特集の冒頭ページでは、”今年で40代なかばに差し掛かる私”(編集長さんですかね?)による文章が掲載されています。(強調引用者)

久しぶりに活動中の下北沢を歩いていて「あれ、この街こんなんだったけ?」とちょっとした違和感を覚えた

連なる店々がレギュラー古着を扱うショップばかりだったからだ。通っていたラーメン屋が古着屋に変わっている。

右も左も古着屋だらけじゃん。何、古着ってこんなに需要あるわけ?

知らぬ間に新たな古着屋で埋め尽くされていた勝手知ったる我が街を見て、戦慄めいたものを感じた次第である。良い意味で。

最近、僕は頻繁に下北沢を訪れています。だいたい、2週間に一度くらい。週イチのときもあります。

www.yamadakoji.com

そんな僕でも、2021年から2022年にかけての下北沢での古着屋の凄まじい増加っぷりには驚かされていました。

 

現在の下北沢にある古着屋は137店以上

では、そんな下北沢に古着屋は現在何店舗あるのでしょうか?

僕の手元に、下北沢の古着情報を発信するメディア、シモフルのフリーペーパーがあります。

これを手に入れたのは2022年の1月ですが、”下北沢古着屋めぐり”というタイトルのショップリストに掲載されている古着屋の数は125店舗。

そして2022年6月6日現在、シモフルのサイトの”下北沢の古着屋店舗一覧”には137店舗が掲載されています。

下北沢の古着屋店舗一覧 - #シモフル 下北沢の古着情報サイト【フリーペーパー】

約半年で12店舗が新しく掲載されています。既存店が一覧に加えられたということもあるでしょうが、それでもおそらく10店舗前後は新しい古着屋がこの半年で下北沢にお店を構えるようになっていると思われます。

ともかく、1つの街に古着屋が137店舗以上も存在しているという現在の状態、まさに現在は空前の古着ブームでしょう。

 

オシャレとは無縁な郊外にも到来した古着ブーム

ちなみに…超私事ですが、僕の故郷、神戸市垂水区にも古着ブームが到来したようです。

神戸と言うと、世間的にはファッションのイメージが強い街かもしれませんが、この西海岸が出店した場所は、古本屋や眼鏡店などの郊外のロードサイドによくある大型店舗が並んでいます。つまり、オシャレとは無縁のエリアです。

ここからそれほど遠くない場所に20年以上住んでいた僕にすると、「こんな場所に古着屋なんてできても、売れるのか?」と心配してしまうほど。いや、本当に。

ですが、そんなオシャレとは無縁なエリアにも古着屋が出店するほど、今回の古着ブームは大きいということなんでしょう。

 

古着カルチャー発信者にとっての古着の魅力

ブームには必ず終わりが来ます

特に、ファッションの世界はブームとなってマス層まで拡散されると、イノベーター層が一気に冷めてしまうもの。

2022年現在、頂点とも思える古着ブームは今後どうなっていくのでしょうか。

ここで、EYESCREAMの誌面に戻ります。

冒頭の文章に続いて掲載されているのは、”現在の古着カルチャーを作った発信地的スポット”である古着屋のオーナー、スタッフへのインタビュー。

その1軒目が、僕が影響を受けまくっている原宿のプロップスストアアネックスの土井健氏へのインタビューで、そのページは上掲のEYESCREAMのサイトにも掲載されています。

プロップスストアについてはこちらの過去記事で。

www.yamadakoji.com

古着の魅力とは何か、という問いに対し、土井氏はこう答えています。

僕は基本的にヴィンテージに興味が湧かなくて、そこまで面白みを感じないんですよね。お金を出せば手に入るもの、有名なブランドものを着ていたらカッコいいというわけではないと思うので。そういう点で、限られた予算の中で色んなものに出会えて、新しいファッションにチャレンジできる楽しさがあるものが古着なんだと考えています。

つまり、古着の魅力の1つは価格の安さ

特に今回の古着ブームのメインは、レギュラー古着と呼ばれる比較的低価格の古着

この点については、土井氏に続いてインタビューに答えている代々木上原のColor at Against高橋優太氏も触れています。

 
 
 
 
 
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今トレンドになっているのは過去のヴィンテージブームとは異なっていて、ちょっと前に普通に着られていたデイリーユースなものじゃないですか。そこがカッコいいと思っているんですけど、若い世代も同じ感覚で選んでくれていたらいいなと思いますね。ブランドや、メディアがピックアップしたから買う、ではなくて、直感的にカッコいいと感じたものを着てほしいですよね。

以前、僕がZIP!に寄せたコメントでも取り上げられていましたが、現在と同じく古着ブームだった90年代に人気だったのはリーバイス501XXに代表される高価なヴィンテージ古着でした。

www.yamadakoji.com

続いてのインタビューは、渋谷TOXGOの男成公平氏。

 
 
 
 
 
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このインタビューの主題である”今の古着ムーブメントに思うこと”という問いに対し、男成氏はこう答えています。

今では新品を選ぶよりも古着の方が良いとなっている感覚は感じますね。むしろ、少しボロくなっている方が、一点ものとしての付加価値もつくし、より幅広い層に受け入れられていくことになったんじゃないでしょうか。あとは昨今のサステナブルの潮流も手伝って、という流れでしょうね。だからヴィンテージではなくレギュラー古着で良いとなるんだと思います。もともと洋服好きな人にとって古着という選択は当たり前だったんでしょうけど、その認識が一般層まで浸透したんだと思います

古着という存在のマス層への浸透

おそらく客層はマス層がほとんどだと思われる僕の故郷に西海岸が出店したのも、これが理由でしょう。

 

2010年代のファストファッションブーム

ファッション界でのブーム、と言うと思い出すのが2010年代のファストファッションブーム。こちら↓は当ブログの2021年3月の記事です。

www.yamadakoji.com

ファストファッションブーム到来の象徴となった、2008年H&M銀座店のオープンには5,000人の行列ができました。

www.walkerplus.com

その後、ファストファッションブランドはブームとなり、主要都市での路面店の他、各地のショッピングモールへも数多く出店されました。

ですがそのブームは長くは続かず、イギリスのファストファッションブランド、TOPSHOPは2015年に日本の全店舗を閉店して撤退

www.fashionsnap.com

2018年にはH&M銀座店が閉店。

www.wwdjapan.com

アメリカのファストファッションブランド、FOREVER21も2019年に日本から撤退しました。

www.fashionsnap.com

こういった歴史もあるので、現在全国的に急拡大している古着ブームも、バブルとなって弾けてしまうのではないか、という声も聞かれます。

 

古着ブームはいつまで続く?

上掲の第二次古着ブームはいつまで続く?の記事で、僕は現在の古着ブームは少なくとも2年、もしかしたら5年以上は継続するのではないかと予想しています。ちょうど1年前の2021年5月の記事なので、短くても2023年までは継続する、ということです。

www.yamadakoji.com

今後、古着の人気はどうなっていくのでしょうか。

僕は今回の古着ブームで、どれだけ多くの人に古着の魅力が伝わっているかが鍵になると思っています。

EYESCREAMのインタビューで、古着の魅力についてColor at Againstの高橋氏はこう語っています。

掘っても掘っても飽きないところが魅力的ですね。古いのに次々新しいものが出てきて発見がある。それがずっと続いているのに同じものが1つとしてない。

また、吉祥寺のthe Apartmentオーナーの大橋高歩氏は今の古着ムーブメントについて、こう語っています。

ショップを始めた頃は、レアなアイテムを探しているお客さんが多かった印象ですが、今は調べれば情報がすぐに出てくる時代なので、僕らがどれだけ良いものをピックアップするかによって反応が変わってくる感じがしますね。まだ世間的な認知が低いけれども、評価されるべき隠れた名作は、まだまだ眠っているので、それを紹介することでお客さんが付いてきてくれる部分はあると思います。

the Apartmentについてはこちらの過去記事でもご紹介しています。

www.yamadakoji.com

古着の魅力は”飽きない”こと、”名作がまだまだ眠っている”こと。

つまり、無限に広がっていることが古着の魅力だと言えるでしょう。

選択肢とした広がった古着の低価格だけではない魅力

今回のブームで、古着という選択肢はマスまで広がったと言えるでしょう。

ですが、今号のEYESCREAMで語られているような低価格だけではない、古着の魅力がどれだけ多くの人に伝わっているでしょうか

今回ご紹介した古着屋関係者だけでなく、ファッション関係者や、ファッションを趣味とする人など、僕自身も含め僕が知るファッション好きのほとんどは古着が好きです。

それだけの強い古着の魅力を多くの人に伝えられれば、今後も古着人気は続いていくのではないでしょうか。

そして、僕もひとりの古着好きとして、微力ながらも古着の魅力を伝えていければ、と思っています。