目次:
- そもそもお兄系ってどういうのだっけ?
- ガラパゴス的進化を重ねたお兄系の最終形態
- めちゃくちゃ熱い、お兄系ブランド店長インタビュー
- 現代版“渋カジ・チーマー”はオレらが仕切る…ジャックローズ
- 2011年のお兄系キーワード
- カジュアル=ワイルド、キレイ目=エレガント
- “ガイアが俺にもっと輝けと囁いている”
- お兄系ブランドによるニルヴァーナTシャツ
- これでもかというくらいのスカルとアニマル柄
- 装飾されまくりのお兄系レザーシューズ
- アベイルもお兄系!
- 斬新なキャッチコピーが連発のストリートスナップ
- お兄系とホスト
そもそもお兄系ってどういうのだっけ?
先日、ファッションニュースサイトのFASHIONSNAPに、僕が執筆した記事が掲載されました。
こちらの記事の中で、デザイナーズ、マルイ系に続くネクストトレンドとして注目度が高まっているとご紹介しているのが、お兄系です。
僕は2008年から2014年まで、ファッション企画会社で働いていたのですが、その頃よくお兄系ブランドをリサーチしていたので、個人的にお兄系には思い入れがあり、当ブログでもこれまで何度か取り上げてきました。
ですが、2024年の今、お兄系ファッションに身を包んでいる人を見かけることはまずなくなりました。
「次はお兄系が来る!」と言われても、そもそもお兄系ってどういうのだっけ?という人も少なくないと思います。
ガラパゴス的進化を重ねたお兄系の最終形態
なので今回の“ファッションアーカイブ”では、お兄系がまだまだ元気だった時代に発売された、『MEN'S KNUCKLE』2011年5月号をご紹介します。
お兄系の変遷は、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
2000年代中盤から人気となったお兄系。
その後、様々なテイストを取り入れることで、進化を重ねていました。
2011年は、その進化がほぼ終わった頃。
つまり、この頃には既にお兄系ブームのピークは超えていましたが、この頃の誌面を見ると、お兄系が最終的にどういったスタイルになったのかがよくわかると思います。
さて、誌面を見ていきましょう。
表紙裏は、お兄系ブランドの代表格で当時大人気だったブランドであるジャックローズと、ジャックローズから生まれたブランド、ラブメゾンの広告。ジャックローズは渋カジの流れを組むオーソドックスなアメカジテイスト。そして、ラブメゾンはお兄系が様々な進化を重ねて生まれたミクスチャースタイルを提案しています。この2つが、2011年当時のお兄系の王道的スタイルでした。
エルシドというブランドの広告。SuGというヴィジュアル系バンドがモデルを務めています。
めちゃくちゃ熱い、お兄系ブランド店長インタビュー
巻頭特集は“兄弟ブランドの”ブラックフレイムとトランスフォームによる“男達の2スタイル”。
トランスフォームはややモードな雰囲気で、ヴィジュアル系やホスト系寄り。それに対し、ブラックフレイムは2011年当時、新たなお兄系スタイルとして人気上昇中だったルード系がメインです。
こうやって並んでいると、違いがわかりやすいですね。下段にトランスフォームとブラックフレイムの両店長のインタビューが掲載されています。めちゃくちゃ熱いこの内容、本当にインタビューで話していたのかどうか、気になります。
現代版“渋カジ・チーマー”はオレらが仕切る…ジャックローズ
右ページ、お兄系ブランドの総本山だった109MEN'Sの広告にはこちらを睨みつける松坂桃李さん。
そして、左ページからは“BLACKエレガントSTYLE BLACKワイルドSTYLE カリスマ15ブランドの究極春スタイルを見ろ!”という特集。見ましょう。
この特集で登場している15ブランドのほとんどは僕も知っていたブランドなので、ちゃんと当時の人気ブランドがピックアップされていたのだと思います。
筆頭はバッファローボブス。90年代は古着屋でしたが、その後お兄系ブランドとして人気を集めました。お次はフーガ。
ジャックローズ、マーダーライセンス。
ジャックローズのスタイル説明には“現代版“渋カジ・チーマー”はオレらが仕切る…ジャックローズ”とあり、渋カジからの流れを組んでいることがわかります。
ラガス、オブザネージュスタイル。
ヴァイスフェアリー、ワイルドパーティー。
ジュリーブラック、ミダス。
キャバリア、フィフス。
シヴァーライズ、エルシド。
そして最後はエイトバイ。
2011年のお兄系キーワード
登場していたそれぞれのブランドが打ち出していたキーワードで目立ったのは、
・ロック
・ワーク
・バイカー
・グランジ
・セレブリティ
・エレガント
・モード
などなど。
こういった要素がファッションで重要視されていたのも、かなり特徴的だと思います。
カジュアル=ワイルド、キレイ目=エレガント
お次は“ワイルド&エレガント3大アイテム着回しコーデ”。先程の15ブランド特集でも登場していた、ワイルドとエレガント=カジュアルとキレイ目という、メンズファッションの2大カテゴリをお兄系的に言い換えた表現のようです。
ワイルド系のアイテムは、ライダースジャケット、カーゴパンツ、無地パーカ。
そして、エレガント系のアイテムはストレートパンツ、無地カットソー、テーラードジャケット。
当時、資料のネタ探しに活用させていただいたお兄系オンラインショップ、ジギーズショップの広告。モテを推しています。
“ガイアが俺にもっと輝けと囁いている”
左ページからは特集“デニム最強伝説!”。
『MEN'S KNUCKLE』と言えば、ネットミームとして一世を風靡した“ガイアが俺にもっと輝けと囁いている”。
https://www.pinterest.jp/pin/213076626095873768/
このページでも、ナックル節が効いたコピーが多数。
お兄系ブランドによるニルヴァーナTシャツ
お次は“MK2大スタイルにはバックパック&ショルダーでキメろ!”。バッグ特集ですね。
こういった小物の情報ってなかなか継承されません。
ド定番のデイパックにスタッズを打ったり、
スカル柄切り替えをしたり。
こういうスタッズとワッペンで装飾されたレザーバッグは当時の定番的なアイテムでした。
ニュースページ。カスタマイズされたG-SHOCKや“5cm身長盛れるインソール”、そしてお兄系ブランドのニルヴァーナTシャツなど、地味に見応えのある内容。
上掲特集にも登場していた、ミダス広告。
これでもかというくらいのスカルとアニマル柄
フィフスとキャバリアのコラボアイテム広告。
これでもかというくらいのスカルとアニマル柄。2024年の今の感覚からすると、相当尖ったファッションに見えますが、当時はこういった服を着ている人はよく見たもんです。
左ページ、“俺たちのREAL SOUL ITEM”という、モデルやショップスタッフ、ホストなどの私物紹介。
服や趣味のアイテムに加え、“MY SOUL CD!”も紹介されているのが興味深いです。
装飾されまくりのお兄系レザーシューズ
先程のバッグ同様、結構貴重な資料であるレザーシューズ特集。こちらはブランドタイアップページなので、純粋に当時の人気アイテムが並んでいる訳ではありませんが、デザインの雰囲気は掴めると思います。
バッグに負けず劣らずの、存在感のあるデザイン。
シワ加工、ベルト、スタッズ、ハトメなどでバリバリに装飾されています。というかユキコキミジマオムって、あの君島由紀子さんのブランドですよね。もちろんご本人は全く関わっていないんでしょうけど。
アベイルもお兄系!
ここからは広告が多くなります。左ページはお兄系ブランド、アガストの企画広告。
“土臭く、薄汚れた街-それが俺等の不可侵テリトリー”。
“男のSEXYを身に纏え!!”
お兄系ブランド、オブザネージュスタイルの広告。左ページはブランドの代表の方。
デザイナー、プレスなどもバリバリのお兄系です。
こちらはお兄系ブランドの広告と思いきや、左下に見えるのがアベイルの文字。この頃はアベイルのようなティーンズ向けの低価格ブランドの多くがこういったお兄系スタイルを打ち出していました。
斬新なキャッチコピーが連発のストリートスナップ
左ページからは、ストリートスナップ。『MEN'S KNUCKLE』のお家芸である、斬新なキャッチコピーが見ものです。
“ズキュウゥンッと唸りをあげるバイカー魂”
“カッコイイという賛辞に、もはや飽きたオレ”
こういったスタイルの人達が街中に多数存在していたことすら、今の感覚からはちょっと考えづらいですね。
“東京無双のロック武者とはオレのことだ”
“襟を立てるのはオレのセクシーとヤル気の象徴”
“オレのコピーロボットが街にあふれ出すだろう”
“ラブリーの種は健やかな肉体にのみ宿る♥”
ストリートスナップページでも、ワイルドとエレガントの2軸。
お兄系とホスト
左ページにストリートスナップ参加者のアンケートが掲載されていますが、参加者の職業で最も多かったのがホスト。
そして、このページの後からはホストクラブの広告が非常に多くなります。
2011年は既にお兄系人気も下り坂を迎えていました。
お兄系を牽引してきたファッション誌、『Men's egg』は2014年に休刊。
↑の記事では、ルード系を打ち出し、その後「悪羅悪羅系」ブームの中心となった『SOUL JAPAN』も2015年に休刊。『SOUL JAPAN』は現在復刊に向けて活動中のようです。
ですがその後も、お兄系スタイルはホストの衣装のようなかたちで残り続けます。
その後、お兄系に代わってラグジュアリーストリートが人気となります。
ラグジュアリーストリートな人たち、みんな頭が痛くなっちゃってるのなんでだろ… pic.twitter.com/TX8R2KWQZW
— 山田耕史 ファッションアーカイブ研究 (@yamada0221) 2021年4月2日
『MEN'S KNUCKLE』も、トレンドに合わせて打ち出すファッションを変えていきました。
新宿の紀伊國屋書店のメンズファッション誌コーナーで、最も目立つ場所に置かれてるのがホストファッションの雑誌なんですよねー(棚の一番前の2誌)。
— 山田耕史 ファッションアーカイブ研究 (@yamada0221) 2021年5月16日
特定の職業のファッションがこれだけフィーチャーされるのって、サロンブームの時の美容師以来かもしれませんね。 pic.twitter.com/ZApITCBNKg
ですが、『MEN'S KNUCKLE』は2022年に休刊。
もう、お兄系は消滅したかと思われましたが、冒頭でもご紹介した通り、海外ではお兄系ブランドの注目度が高まっています。
ファッションは何が起こるかわかりません。
当ブログではこれからもお兄系周辺について、ご紹介していこうと思っています。