山田耕史のファッションブログ

ファッションは生活であり、文化である。

グランジ?渋カジ?お姉ギャル?00年代の不良ファッション、お兄系のルーツを考えてみた。

こんにちは。兼業主夫/ファッションアナリスト/ワークマン公認アンバサダーの山田耕史(@yamada0221)です。
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先日の記事で、グランジについてご紹介しました。

www.yamadakoji.com

実は、このグランジの記事を書いたのには理由があります。今回の記事でご紹介する内容を円滑にお伝えしたいという目的があったのです。

そのきっかけとなったのが、当ブログでこれまで何度も触れてきた、yutori社長、片石 貴展さんのこちらのツイート。

そして、それに対するこちらのやり取り。

僕が片石さんのツイートを見たときは、その文面通り「ほー、グランジやパンクなんですねぇ」くらいにしか思っていなかったのですが、齋藤さんの指摘通り、よく見るとたしかにお兄系っぽい服装

そもそもお兄系ってどういうファッション?

一口にお兄系と言っても、その進化の過程で様々なバリエーションが生まれましたが、片石さんの服装はチェックシャツにインパクトのあるプリントのTシャツ、ストレートシルエットのダメージジーンズ、ブーツ、ネイティブアメリカン系のシルバーアクセサリーという、アメカジやバイカー要素の強い2006年〜2008年頃によく見られたお兄系に近しい印象です。

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men's egg (メンズエッグ) 2006年 10月号

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men's egg (メンズエッグ) 2007年 11月号

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men's egg (メンズエッグ) 2008年 07月号

随分前の記事になりますが、お兄系の変遷についてはこちらもご参考に。

www.yamadakoji.com

 

お兄系のルーツはグランジ?

僕が前々職のファッション企画会社に入社したのは2008年。多数のクライアントを担当させてもらいましたが、とある流通大手のティーンズ向けメンズブランドは入社直後から退社するまで継続して担当していたので、当時のお兄系のメッカである109-2を定期的にリサーチするなど、お兄系周辺についてはずっとアンテナを張っていましたが、お兄系のルーツについては当時特に考えていませんでした。

片石さんのツイートについて、こういった指摘もされています。

確かに、グランジのルーツであるカート・コバーンの画像を見ていると、チェックシャツ(特にオンブレチェック柄)やダメージジーンズ、インパクトのあるプリントTシャツなど、後のお兄系に繋がる要素もいくつか見付けられます。

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お姉ギャル系ありきのお兄系?

お兄系のルーツって何だろう?という疑問を持ち、久し振りに開いてみたのが大学時代の恩師の書籍でした。


 

ヤンキー文化の流れを追う内容のこの書籍が出版されたのは、2009年。つまり、まだまだお兄系が流行していた頃で、いわばお兄系がヤンキーファッションの最進化系だった時代でした(お兄系の派生系であるオラオラ系はネクストトレンドとして触れられています)。お兄系に至る系譜がこう記されています。

当初チーマーの追っかけとされていたコギャルたちのカウンターパートがギャル男であり、さらにギャルの中からお姉ギャル系が浮上してきた際、合わせてお兄系-「盛った」髪型、黒っぽい細身の服、シルヴァーアクセと一見ホスト風-という言葉も定着していった。

つまり、お姉ギャル系ありきのお兄系だった、という訳です。

お姉ギャル系と聞いて思い出したのが、00年代に人気を集めたレディスファッション誌「Scawaii !」。「エスカワ」って略されていましたね。お兄系登場前後の2005年〜07年あたりのエスカワを見てみると、は倖田來未さんや浜崎あゆみさんらが表紙を飾っていました。 

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Scawaii! (エス カワイイ) 2005年 12月号

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Scawaii ! (エス カワイイ) 2006年 11月号 

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Scawaii ! (エス カワイイ) 2007年 03月号

表紙のキャッチコピーでは「エロかわ」「強くてエロくて美しい」「ゆるエロ」など、「エロ」を強くアピールしています。

 

お兄系のルーツは渋カジ説

お兄系はこういったお姉ギャル系のカウンターパートとして生まれた、というのが恩師説ですが、僕はお兄系のルーツは1990年代の渋カジにあると考えています。

渋カジについて詳しく書かれているのが、こちらの書籍。


 

当ブログ過去記事でもご紹介しましたが、こちらが典型的な渋カジファッションに身を包んだ浅野ゆう子さん。

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www.yamadakoji.com

メンズならネイビーのブレザーにリーバイス501、足元はモカシンシューズ(この画像は違うようですが)というのが渋カジの定番。

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渋カジの最盛期は1988年から89年。その派生系として1990年頃人気を集めるのが、バンソンのレザージャケットにブーツカットジーンズ、そしてレッドウィングのエンジニアブーツにゴローズのネイティブアメリカンアクセサリーという男っぽいアイテムに身を固めたハードアメカジです。

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https://oceans.tokyo.jp/fashion/2018-1017-4/

渋カジとは切っても切れない存在が、当時渋谷に多数存在した「チーム」。誕生当初は大学の仲良しサークル的な集まりでしたが、拡大していく中で一部が不良化し、チームのメンバーを意味する「チーマー」は渋谷の不良の代名詞になりました。そして、そのチームの制服的存在だったのが、ハードアメカジでした。

そして2006〜7年あたりのメンズエッグを見てみると、ハードアメカジの系譜を受け継いでいるようなアイテム、デザインなどが多く見られます。具体的に挙げれば、レザージャケット、スタッズ、ワッペン、スカルデザイン、シルバーアクセサリー、ゴツいベルト。表紙には登場していませんが、ブーツも当時のお兄系の必須アイテムでした。

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men's egg (メンズエッグ) 2006年 07月号 

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men's egg (メンズエッグ) 2006年 06月号 

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men's egg (メンズエッグ) 2006年 09月号

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men's egg (メンズエッグ) 2007年 05月号 

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men's egg (メンズエッグ) 2007年 12月号

つまり、90年代の不良ファッションだったハードアメカジが時代を経て進化したのがお兄系、というのが僕の説です。

 

検証不十分の「説」です

ですが、前掲書によると渋谷でのハードアメカジの最盛期は1991年頃。お兄系の登場は早くてもその10年以上後になるので、その間の10年の間にどういう流れがあって再びハードアメカジスタイルが浮上してきたのか、現時点では把握できていません。自分でもまだ検証が不十分と思っているので、「お兄系のルーツは渋カジ(ハードアメカジ)」はあくまでも「説」のひとつです。

が、ちゃんと断言出来るようにこの辺りについては今後も引き続きリサーチしていくつもりです。僕は全然観たことがないんですが、池袋ウエストゲートパークとかも対象になりそうですね。

お兄系については次回に続きます。

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