山田耕史のファッションブログ

ファッションは生活であり、文化である。

グランジとは何か。〜普通の若者の普段着が世界的なファッショントレンドに〜

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当ブログではこれまで、ヒッピーやフレンチなどが生まれた背景をご紹介してきました。

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今回はそのシリーズとして、グランジが生まれた背景をご紹介します。

主に参考にするのはこちら。今回の記事での引用は基本的にこちらの書籍からになります。


 

 

グランジとはカート・コバーンである

さて、極めてシンプルに表現するなら、グランジとはニルヴァーナであり、ニルヴァーナはカート・コバーンである、と言えると思います。

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ニルヴァーナの概要をウィキペディアから引用します。

アメリカ合衆国出身のロックバンド。1987年にワシントン州アバディーンで結成され、1989年にアルバム『ブリーチ』でデビュー。1991年に発表した2ndアルバム『ネヴァーマインド』の驚異的な大ヒットにより、世界的なグランジ・ムーヴメントを捲き起こした。1994年にカート・コバーンの自殺によりバンドは解散。

ja.wikipedia.org

オルタナティブ・ロックとも呼ばれるグランジは、1970年代以降のガレージロックやハードロック、パンク、ポストパンク、ハードコアパンクを下地する荒々しく重たいサウンドで、ポップではあるがマイナー・スケールを多様した陰鬱な雰囲気が色濃く、マニアックなインディーズ系の音楽にすぎないと目されてきた

ですが、1991年に発売された上掲の「Smells Like Teen Spirit」を含むアルバム「Nevermind」が大ヒット。

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ビルボード1位に君臨し、発売後9週間で100万枚の売り上げを達成(最終的には全世界で3000万枚超)、1992年のMTV大賞では2部門を受賞し、グランジは一気に世界的なトレンドになるのである

 

グランジ=普通の若者の普段着

そして、ニルヴァーナのボーカル、リードギターであるカート・コバーンの服装が注目を集めるようになります。(強調引用者)

カート・コバーンの服装は、当時のアメリカ、特に西海岸側の若者のごく一般的な服装であった。お金がなく、街で仲間たちとスケートボードに乗ってダラダラと遊んでいるような、普通の若者スタイルだったのである

グランジで特に印象的なアイテムなどを、カート・コバーンの写真と共にご紹介します。まず、赤×黒のボーダー柄ニットぼろぼろのジーンズ

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モヘアカーディガン

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オンブレチェック柄

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コンバースジャック・パーセルやオールスター大ぶりのサングラス

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だらしのない普段着がクールになる

一般的に、着飾って他人と差別化を図る事がファッションとされます。特にステージに上がって多くの人の注目を集めるミュージシャンは、それまで髪を逆立てたりメイクをしたり、スーツでビシッとキメたり、人とは違う風変わりな服を着たりするなど、着飾る事で自分を目立たせてきました。

ですが、カート・コバーンは全く飾り気がないどころか、ごくごく一般的な若者と変わらない、むしろだらしなささえ感じられるような普段着でステージに立ち、それがクールだと人気を集め、世界的なファッショントレンドになったのです。

 

世界的なファッショントレンドに

その後、カート・コバーンの服装はファッション誌などで取り上げられるようになり、その過程でグランジと名付けられ、ニルヴァーナに代表されるオルタナティブロックもグランジと呼ばれるようになります。ちなみに、グランジ(grunge)は薄汚れた、不潔な、という意味です。

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アメリカのファッションブランド、ペリー・エリスは1992年に発表された1993年春夏コレクションでグランジをフューチャーします。

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このとき、ペリー・エリスのデザイナーを務めていたのが、後にルイ・ヴィトンがクリエイティブディレクターとなるマーク・ジェイコブスです。

 

その後のグランジ

グランジの流行の波は日本にも押し寄せました。

40年に渡る日本のストリートファッションがまとめられたこちらの書籍では、1993年に日本でグランジが流行したと記されています。


 

東京のストリートでも、古着のルーズなニットやチェックのシャツ、破れたデニムなど、ふつうのカジュアルなアイテムを野暮ったく重ねるスタイルが流行。なかでも、ポスト・団塊ジュニア世代の若者たちを中心に、1960年代、1970年代の古着スタイルへと変容していった。

1980年生まれの僕は、当然グランジを生では体験していません。個人的にグランジと言えば、2000年代に絶大な人気だったナンバーナインのイメージが非常に強く残っています。

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もちろん、ナンバーナインだけでなく数多くのファッションブランドが今もグランジをモチーフとした作品を発表しています。

 
 
 
 
 
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世界的なスターとなったカート・コバーンですが、うつ病と薬物依存症に苦しみ、1994年に自殺します。そんな彼の、生前最後のインタビューについては過去記事でご紹介しています。

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たったひとりの若者の普段着が世界的なファッショントレンドとなり、その死後四半世紀が経っても支持され続けているという驚異。まさに革命的な出来事です。