山田耕史のファッションブログ

ファッションは生活であり、文化である。

ファッションリーダーは反町隆史と竹野内豊。1997年のセクシー系スタイル「V男」。

目次:

 

“リアルシブヤ”を取り戻せ!

今回ご紹介するのは『流行観測アクロス』1997年9月号です。特集は“渋谷1997“リアルシブヤ”を取り戻せ!”

これまでの“ファッションアーカイブ”でたびたびキーワードとして挙がっていた渋谷

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特に、1990年代の渋谷ほど「流行の発信地」という言葉が似合う街はないと思っていたのですが、その真っ只中の1997年に渋谷が“取り戻せ!”と言われる対象になっていたのは意外です。が、今回の記事ではこの渋谷特集はひとまずスルー。またいつか、“ファッションアーカイブ”でご紹介できたらと思います。

 

マス化するV男

今回スポットを当てるのは、アクロスの「定点観測」。こちらは発表の場をウェブに変え、今も継続されています。

www.web-across.com

以前の“ファッションアーカイブ”でも『流行観測アクロス』1997年11月号をご紹介したことがありました。

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定点観測では“今月のカウントアイテム”という、そのときどきのトレンドアイテムは人気の着こなしなどが設定されています。

で、1997年9月号の定点観測の“今月のカウントアイテム”は“男女襟元Vゾーン”

その説明文を引用します。(強調引用者以下同)

灼熱の太陽の下に決行された今 回の定点観測。カウントアイテムは襟元のVゾーンだ。本誌6月号でも取り上げた「V男(ブイオ)」 がマス化する中、今春夏のトップスの共通する特徴として取り上げられるのが、“胸元が開いている” こと。つまり、シャツ等の胸元を 大きく開けることでつくられる "Vゾーン”ということで、他に VネックTシャツ、カットソー、 スリップドレス、キャミソールドレス等など、さまざまなアイテム で“Vゾーン”が形成されている。

その着こなしはというと、男の子はまさに“V男系”と“モード系” に二分。一方の女の子は肌露出系。 ヘソ出しに続き、肩出し、背中出しに+ピタピタパンツと、肌だけでなく体のラインも誇示する“欧米人感覚”がますます浸透しているともいえそうだ。

ということで、“男女襟元Vゾーン”が“今月のカウントアイテム”に選ばれたのは、V男というスタイルが1997年当時マス化しつつあったから、ということです。

 

シルバーアクセ、ロン毛、ダボッとしたニットがV男の必須アイテム

次ページは渋谷と原宿。

渋谷では“男子高校生のほとんどが、制服の白シャツの第2ボタンを開けているのが目立っていた”くらいの流行っぷり。スナップでは早速V男が登場しています。キャプションでは“開いた胸元にはシルバーのペンダントヘッド。シルバーブレスも定番アイテム!”と紹介。

原宿。“全身黒は“V男”のコスチューム!?さらりとしたロンゲも定番だ”

新宿、大阪。

ダボッとしたニットもV男の必須アイテム。去年は白だが、今年は黒”。

大阪。中央のカラフルなストライプシャツはおそらくポール・スミスのものでしょう。こちらも第3ボタンまで開けられています。右下には“エポーレット付きシャツも胸元を開ける!”

“カウントできるほど多くはないが最近気になるアイテムや着こなしをチェック!”するページ。1つ目は“ぴったりソックス”。

2つ目は“ツノ・ヘア”。それよりもブルーハーツのタトゥが気になります。

「AKIRA」のTシャツも気になりますね笑。

 

V男は00sマルイ系の源流

スナップ対象者にインタビューをしたページ。

左のカップルの男性は、ロン毛、全身黒、シルバーブレスで、ど真ん中ストレートのV男ですね。ケンゾーのTシャツ、ポール・スミス系列のブランド、R・ニューボルドのパンツは共に新宿マルイで購入しています。

以前の“ファッションアーカイブ”でご紹介したように、マルイは1980年代のDCブランドブームではセール時に長蛇の列ができるなど、ファッションの発信地として確固とした地位を確立しましたが、1990年代に入ってストリート系ファッションが台頭してくると、徐々にその存在感は失われていきました。

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ですが2000年代に入り、大ブームとなったエディ・スリマンのディオール・オムのスタイルを踏襲したうえでガラパゴス的進化したマルイ系は、マス層からの人気を集めます

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V男と00sマルイ系は、

つまり、V男は2000年代のマルイ系の源流だった、と言えるでしょう。

 

V男の生みの親は「月9」の大ヒットドラマ

V男についてのさらに詳しい解説を、『定点観測アクロス』の総集編的な書籍、「ストリートファッション 1980-2020―定点観測40年の記録」から引用します。

「ストリートファッション 1980-2020―定点観測40年の記録」(Amazon)

いろいろなファッショントライブが生まれ、賑やかだった東京のストリートファッションだが、1990年代も後半になると徐々に集約されていき、1997年にはある種、メンズもウィメンズも2極化したと考察している。

キーワードになるのは、体型やジェンダーを強調する「セクシー系」か、ファッションを情報として捉え、取り入れる「マニアック系」かの2つのベクトルで、特にメンズファッションにおいて顕著だった。

その1つは、「V男/V-BOY」である。「コマダム」の台頭と並行するように、大人っぽくセクシーなファッションを好む若い男性もストリートに増えて登場したトライブで、黒いシャツの第2、第3ボタンまでを大きく開けて、焼けた肌を見せるスタイルが特徴胸元のVゾーンを強調する男性という意味から、編集室では「V男(ブイオ)」と命名。1997年7月の 「定点観測」でも取り上げた。

そして、V男登場に影響を与えたのが、当時の日本で大ヒットした連続ドラマでした。

ロールモデルは、当時大ヒットしたTVドラマ『ビーチボーイズ』に出演していた反町隆史と竹野内豊

『ビーチボーイズ』は、1997年の7月からフジテレビの「月9」で放送されました。

反町隆史さんと竹野内豊さんのダブル主演作です。

https://www.pinterest.jp/pin/203013895694867809/

Wikipediaには以下のように記されています。

それまでラブストーリーが多かった月9作品としては珍しい男同士の友情を軸に描いたドラマである。平均視聴率23.7%、最高視聴率26.5%を記録して大ヒット。反町隆史の出世作となった。

こちらは後ろのフォントから『ビーチボーイズ』の記者会見と思われる2人の画像。反町隆史さんはVネックのカットソーに全身黒の直球V男スタイル。竹野内豊さんはVネックではないものの、腕まくりしたシワ感のあるシャツに空きが広めのカットソー、アクセサリー、ゴツいベルトと、V男的な要素が満載です。

https://www.pinterest.jp/pin/534732155767826716/

その他、当時のものと思われる画像を見ると、V男スタイルがたくさん見つかります。

https://www.pinterest.jp/pin/13510867603802983/

https://www.pinterest.jp/pin/43276846407589015/

「ストリートファッション 1980-2020―定点観測40年の記録」のV男についての引用を続けます。

1998年には彼らをターゲットにした『BOYS RUSH』(主婦の友社)が創刊

同誌では「V-BOY」と称し、焼けた肌にメッシュの入ったロングヘア、眉や髭の整え方などスキンケア情報も豊富に紹介。その後のギャル男カルチャーへの流れを促した。

僕は昔のファッション誌をずっとディグり続けています。神保町をはじめとした東京各地の古書店や、ヤフオク、メルカリなど自分ではかなり手広く探しているのですが、『BOYS RUSH』のようなティーンズ向けのファッション誌はなかなか見つかりません。

ということで、今回はウェブで見つけた『BOYS RUSH』1998年6月号の画像を紹介させてもらいます。“創刊号総力特集”は“V-BOY、これが掟だ!”。創刊号でV-BOYをきちんと定義付けておきたいということでしょう。

とはいえ、ネットで拾った画像なので、ご紹介できるページは限られています。こちらは“V-BOYデニムスタイル”。“キメ過ぎず、妥協もしない古着ジーンズスタイル”に合わせているのは、やはりVネックのTシャツ

“世界がオレらを待っている!次の主役の座を射止めるのはだれだっ”というコピーの威勢の良さは、後のお兄系ファッション誌『MEN'S KNUCKLE』を想起させます。

“イチバン大切なのは自分らしいモノかってことじゃん”と銘打たれたこちらは、いわゆる「オシャレさんの私物紹介」的なページでしょうか。“好きなブランドはグッチ”というコメントの他、クロムハーツ、(おそらく)ヴェルサーチ、オメガなどの高級ブランドの名前が並んでいます。

 

V-BOYのメッカ渋谷“G・アルマーニのスーツは一生物”

“SNAP RUSH 東西V-BOY対決、夏。”という、スナップ企画。

まずは東京。“渋谷。今やココはV-BOYのメッカであり、ステージだ。スーツだって、高級ブランドだって、サラリと身につける。そんなヤツが最高にクール!”

“G・アルマーニのスーツは一生物”という名台詞。その他、グッチやフェラガモ、プラダにルイ・ヴィトンなど、高級ブランドが目白押し。

登場しているのはおそらく全員高校生

 

大阪V-BOYにはマルイ系が大人気

関西編。こちらは大学生もちらほら。

大阪。挙がっているブランドはコムサ(コムサ・デ・モード)、ポール・スミス、ジュン・メン、タケオ・キクチとマルイ系のオンパレード。このマルイ系人気は大阪ならではだったのか、それとも全国的だったのか。おそらく後者だと思うのですが、調査の余地がありますね。

https://www.flickr.com/photos/official_fuyuhiko/with/5418504028/

おそらくですが、財布や時計などの小物は高級ブランド、服はマルイ系というのがV男の基本スタイルだったのではないかと、推察しています。

 

モード系にも人気のマルイ系

『流行観測アクロス』1997年9月号に戻ります。こちらは“100人に聞く「セールで何買いました?」”というページ。

対象は15歳から25歳の渋谷の若者。

男性の購入したブランドと好きなブランドのランキング。1位はユナイテッド・アローズ。以下、トランスコンチネンツ、アバハウスと、キレイ目系のブランドが並びます。4位にはなんとダーク・ビッケンバーグ

次ページ。

右端の二人組はニコル、ポール・スミスなどマルイ系。ですが、V男ではなく、どちらかと言うとモード系の雰囲気ですね。真ん中の彼のTシャツはダーク・ビッケンバーグ。

ポール・スミス、アバハウスなどのマルイ系ブランドがよく挙がっています。

レディス。“109系女子高生”は大宮在住。

 

90年代、30代の男性はおじさんだった!

続いてご紹介するのが、“オーヴァー30’s男性たちのファッション事情”という特集。

今の30代といえば、だいたい西海岸に憧れた「ポパイ世代」やデザイナーズブランド・ブームの真っただ中にあった「新人類世代」。青春時代の興味の中心がファッションだったような年代だ。”というのはいいんですが、それに続いて“彼らは年をとって「おじさん」と呼ばれるようになっても”という文言にびっくりしてしまいました。90年代、30代はおじさんだったんですね。

次ページには“街を闊歩するスポーツなおじさんたち”と、大書されています笑。

こちらはこの記事の内容とは関係ありませんが、かなり貴重な資料なので掲載します。“身体と下着の50年史”。