山田耕史のファッションブログ

ファッションは生活であり、文化である。

ラグジュアリーの殿堂「VOGUE」が「高見え」企画をするこんな世の中じゃ。

目次

 

「VOGUE」が提案する「高見えバッグ」記事にツッコミ多数

先日、僕のツイッターのタイムラインに流れてきたのが、ファッション誌「VOGUE JAPAN」「5万円以下でリサーチ。モードな"高見えバッグ"6選!」という記事のツイート。

この記事に対し、

「VOGUEは高いブランド載せろよ」

「あなた達が「高見え」を紹介してどうするの」

「背負ってる看板がナニか解ってんのかしら?」

などなどのツッコミが寄せられていました。

僕も全く同感でした。

高見え=高く見える=実際は低価格、ということでしょう。

「あのVOGUE」が「低価格」をウリにすることに、多少ショックを受けた次第です。

 

「VOGUE」=異次元のラグジュアリーワールド

VOGUEは1892年にアメリカで創刊された、歴史あるファッション誌です。

日本だけでなく、イギリスやフランス、イタリアなど世界各国版のVOGUEがありますが、やはり本家アメリカ版の知名度は高く、特に1988年から現在までアメリカ版VOGUEの編集長を務めるアナ・ウィンターのファッション業界に対する影響力の大きさは絶大です。

https://www.pinterest.jp/pin/59391288818762374/

イギリスのエリザベス女王や、「モードの帝王」カール・ラガーフェルドなど、ファッション業界に留まらず世界のセレブリティと親しく話すアナ・ウィンター。

https://www.pinterest.jp/pin/245868460899382420/

https://www.pinterest.jp/pin/188658671885466968/

映画「プラダを着た悪魔」のモチーフになったこともあり、世界を代表するファッション編集者と言えるでしょう。

www.youtube.com

そんなアナ・ウィンターのイメージもあり、僕は「VOGUE」を「ファッション誌の最上位的存在」と思っていました

「VOGUE JAPAN」のツイートを見ても、スワロフスキーやブルガリといったラグジュアリーブランドのPR記事が並びます。

旅の記事で紹介されるのは、ジェニファー・ロペスやグウィネス・パルトロウといった、スーパーセレブが訪れたバカンススポット

一泊二日の小旅行で活躍するトートバッグを紹介する記事でも、紹介されているのはルイ・ヴィトン500,500円、ボッテガ・ヴェネタ407,000円、サンローラン720,500円など、旅行に持って行くどころか神棚に祀っておきたいくらいのバッグの数々。

このように、一般庶民が参考にしようのない「異次元のラグジュアリーの殿堂」。それが、僕のイメージする「VOGUE」の世界でした。

 

「高見え」「ユニクロ」 

なので、上述の通り「VOGUE JAPAN」が低価格訴求をすることにショックを受けたのですが、「VOGUE JAPAN」の過去ツイートを調べてみると、3年前の2020年から「高見え」記事があることがわかりました。

とはいえ、最初の頃は「高見え」と言えど、そのラインナップフェンディやロエベ、ドルチェ&ガッバーナなどのラグジュアリーブランド、デザイナーズブランドで占められており、お値段も一般庶民には相当ハードルの高い高価なものばかり。

ところが、昨年の2022年には「アンダー5万円! 」という記事が登場。

また、低価格ファッションの象徴であるユニクロについての記事は、以前はマルニやマメクロゴウチといったデザイナーズブランドとのコラボレーションラインの紹介が中心でしたが、最近は「SNSで話題!」という庶民的な触れ込みのもと、3,990円のユニクロの通常ラインのカーゴパンツを紹介しています。

 

ファッションには「憧れ」が必要不可欠

別に僕は「高見え」という謳い文句を悪いとは思いません。

好きな言葉ではありませんが。

ユニクロのカーゴパンツも素晴らしい商品なのでしょう。

ですが、勝手ながら「異次元のラグジュアリーの殿堂」だと思っていた「VOGUE」が、一般庶民である僕でも手の届くファッションを打ち出していることに落胆してしまったのです。

振り返ってみれば、ファッションの歴史は民主化の歴史でもあります。

↓の過去記事に詳しく書きましたが、1970年に誰にでも買える既製服、プレタポルテが台頭するまで、ファッション=オートクチュール(注文服)で、一部の特権階級の占有物でした。

www.yamadakoji.com

なので、「VOGUE」の内容が「民主化」されていくのも当然なのかもしれません。

おそらくですが、「高見え」や「ユニクロ」の記事はPVを稼ぎやすいのだと思います。

しかも、ラグジュアリーなイメージが強い「VOGUE」による「高見え」「ユニクロ」ならば、よりインパクトがあるでしょう。

ですが、それは過去に積み上げた「VOGUE」ブランドを食い潰しているだけのように、僕には感じられます。

ファッションには「憧れ」という要素が必要不可欠だと思います。

もちろん、「憧れ」=ラグジュアリー、というような単純な図式ではありません。

正直、僕はラグジュアリーなファッションには惹かれません。

ですが、なかなか手が届かないラグジュアリーな世界は、多くの人にとってわかりやすい「憧れ」そのもの

第三者の勝手な意見ですが、「VOGUE」にはいつまでもそんな「憧れ」を発信し続けて貰えたらなぁ、と思っています。