目次
- 「オタクの服がマシになった」
- 「謎にイキったプリント」のTシャツ
- 「乳首透けそうなヨレヨレの薄いTシャツ」
- 新生「POPEYE」がオタクを救った
- 2023年夏は白Tシャツが若者に大人気
- 今流行りのファッションは誰でも実現が可能
- 今から5年後の「オタク」の服装はどうなる?
- 結局清潔感が一番大事
「オタクの服がマシになった」
「オタクの服装」と題された、面白い記事を読みました。
それほど長くないので、是非読んでみて下さい。
要点を引用していきます。
オタクを見る機会が多い筆者が、「オタクの服がマシになった」と語っています。(強調引用者以下同)
オタクの服装って清潔感どうのでコミケの時期によく話題になるが、仕事柄オタクをたくさん見てきて、ここ5年くらいでやつらが転換期を迎えていることに気づいた。
その変化は、ここ数年で明らかにオタクの服がマシになったことだ。相変わらず驚くほどのメガネ率でメッセンジャーバッグの所持率は80%を超えているし、髪はボサボサで服のサイズも合っていないことが多いものの、本当に文字どおり着用する服だけがマシになったのだ。
「謎にイキったプリント」のTシャツ
「髪はボサボサ」で、いわゆる「身だしなみ」は変わっていないものの、「本当に文字どおり着用する服だけがマシになった」。
ではどう「マシになった」のか。
少し前までよく見かけた、謎にイキったプリントの乳首透けそうなヨレヨレの薄いTシャツを着てるやつが明らかに減った。
「謎にイキったプリント」のTシャツとはどういうものか。
僕の手持ちの昔のファッション誌から、おそらくこういったTシャツであろう、というものを見つけました。
ティーンズ向けファッション誌「STREET JACK」2010年10月号です。
こういったティーンズ向け雑誌は誌面の終盤に通販のページがよくあります。
「謎にイキったプリント」のTシャツとはこういうではないでしょうか。
パンクっぽい雰囲気のフォントプリントに、女性やバイクなどのフォトプリント。
アメカジの定番アイテムであるカレッジプリントTシャツも、当時はプリントを重ねたり、フォントを大きくしたりと、インパクトのあるアレンジのデザインが主流でした。
Tシャツ以外にも、襟部分がチェック柄になったポロシャツ。
モノトーンの総柄ジレ。シャツとTシャツのフェイクレイヤードトップス。
そして、2枚襟。
こういったデザインは全て、2000年代後半のトレンドデザインで、大手セレクトショップでも、こぞってこのようなデザインのオリジナルアイテムが展開されていました。
ですが、この広告で数百円という超低価格になっていることからもわかるように、2010年頃にはスーパーマーケットの衣料品売り場などでも売られるようになっていたと思われます。
「オタクの服装」では、こう続けられています。
オタクの多くはたぶん今も昔もお母さんが買ってきた服を着ているんだと思うが、どうして今になってそんな変化が起きたのかというと、たぶん2000年代のギャル男やサーフブランドブームから、そのブームが過ぎ去ったしばらくの後まで、量販店で首元の開いた薄手のアメカジ風Tシャツがやたらに安売りされていたことが原因じゃないだろうか。
オタクの母親はそれを息子に買いあたえ、息子はそれを成人しても着続けてしまったことで、元々薄手な上に着古してテロテロになったTシャツを着てるオタクが量産されたのだ。体型が変わっても着続けるので、少し前のコミケには今にもTシャツが破れそうなオタクがそこらじゅうにいた。
こういったデザインの服はマス層のウケが良く、2010年代はライトオンなどのジーンズカジュアルショップなどでも多く売られていました。
とはいえ、さすがに今はもう絶滅したかな?と思っていたんですが、この夏に実家近くのアベイルで近しいデザインの服が売られてのを見て、驚きました。
久し振りにアベイルに行ったら、「お前まだ現役やったんか!」的なデザインに沢山出会えました。 pic.twitter.com/AX2otZZYJK
— 山田耕史 ファッションアーカイブ研究 (@yamada0221) 2023年8月3日
00sに一世を風靡したドメスティックブランド、ロエンのライセンスブランド?「Re:Roen」をアベイルで発見。 pic.twitter.com/rEDDMAtNBv
— 山田耕史 ファッションアーカイブ研究 (@yamada0221) 2023年8月3日
「乳首透けそうなヨレヨレの薄いTシャツ」
また、2000年代後半は「乳首透けそうなヨレヨレの薄いTシャツ」も人気でした。
こちらは上掲と同じく2010年の「STREET JACK」のストリートスナップ。
当時はこのように、襟ぐりが広く生地が薄いTシャツが人気でした。僕も持ってましたし、着てました笑
新生「POPEYE」がオタクを救った
このような、2000年代後半に流行した服が中心だった「オタク」のファッションに、この10年ぐらいで変化が起こったようです。
そしてここ10年ぐらいはオタクの好むような個性や尖りはないが、比較的誰でも似合うような厚手で無地やシンプルなプリントのTシャツ、しかも肩周りや腹に余裕のあるサイズ感が主流になり、店頭に並ぶ品も、お母さんが息子に購入する品も変化してきた。
その結果、洗濯を重ねても大きくヨレず、傷みも目立たずデブもガリも隠せる服を手に入れたことで、首から下が比較的マシなオタクが増えたのだと思う。
2010年代にメンズファッションで大きな変化があったということです。
その大きなきっかけのひとつが、2012年のファッション誌「POPEYE」の大幅リニューアルでしょう。
昨日の吉祥寺古本屋ディグ、古本よみた屋で戦利品は10s長谷川昭雄さん期のPOPEYE。
— 山田耕史 ファッションアーカイブ研究 (@yamada0221) August 27, 2022
長谷川さん期POPEYEは結構な数を@saito_d から譲って貰ったんですが、手元にないのを見つけました。
怒涛の情報量にはほんと、畏敬の念を懐きます。 pic.twitter.com/e3gpQHQMnA
スタイリストの長谷川昭雄が中心となって打ち出したのは、「POPEYE」のテーマである「シティボーイ」を現代風に解釈した、ルーズシルエットの定番アメカジアイテムをクリーンに着るスタイル。
バランスも色使いも、全てが格好良過ぎる。
— 山田耕史 ファッションアーカイブ研究 (@yamada0221) December 18, 2022
長谷川昭雄さんスタイリング。 pic.twitter.com/7oA7xqXavH
長谷川昭雄さん期、POPEYE2014年10月号。
— 山田耕史 ファッションアーカイブ研究 (@yamada0221) 2022年12月18日
エアレイドの正しい履き方。#ファッションアーカイブ pic.twitter.com/SNh60VRqVB
そのスタイルの核となったアイテムが、ヘヴィウェイトTシャツです。
長谷川昭雄さんが「自慢」してるスタイリング、気になって調べてみたんですが、これのようですね。2013年7月号。確かに格好良い。#長谷川昭雄研究 pic.twitter.com/j0cLfRtJBN
— 山田耕史 ファッションアーカイブ研究 (@yamada0221) 2020年8月8日
↑で着用されているキャンバーは、アメリカのワークブランド。
酷使され、何度洗濯を重ねてもヘタレない、分厚い生地のTシャツが特徴です。
また、生地が分厚いTシャツは、大きめのサイズを着ると体のラインがわかりにくくなるという特徴もあります。
キャンバーに代表されるアメリカブランドよりもお手頃価格でヘヴィウェイトTシャツが手に入れられるのが、ユニクロ。
Uniqlo UのクルーネックTは、長谷川昭雄さんのレコメンドもあり、人気アイテムに。僕も何枚も持っています。
セールになれば、790円。
ユニクロの感謝祭が今日から始まりましたね。やはり目玉はUniqlo UのTシャツでしょうか。これが790円ってほんと凄い。偶然ですが、今僕も一昨年のターコイズを着ています笑https://t.co/aW74mySp4T pic.twitter.com/rtqkZJGCNn
— 山田耕史 ファッションアーカイブ研究 (@yamada0221) 2020年6月11日
ユニクロ以外にも、ワークマンをはじめとしたお手頃価格のブランドが数多くヘヴィウェイトTシャツを展開するようになり、ヘヴィウェイトTシャツはどこでも誰でも気軽に手に入れられるようになりました。
かくして、「洗濯を重ねても大きくヨレず、傷みも目立たずデブもガリも隠せる服を手に入れたことで、首から下が比較的マシなオタクが増えた」ということです。
↓では「オーバーサイズのヘヴィウェイトTシャツがオタクを救った」とツイートしましたが、「「POPEYE」がオタクを救った」とも言えるでしょう。
オーバーサイズのヘヴィウェイトTシャツがオタクを救ったってことすねー pic.twitter.com/e7x8afM0uc
— 山田耕史 ファッションアーカイブ研究 (@yamada0221) September 24, 2023
2023年夏は白Tシャツが若者に大人気
2012年の「POPEYE」リニューアルから11年が経ち、その間にいくつかの新しいファッショントレンドも生まれては消えましたが、ヘヴィウェイトTシャツの人気は継続中で、今も多くのお店で手軽に入手可能です。
更に2023年夏は長谷川昭雄さんが「POPEYE」で提案したような、白Tシャツが若者に大人気。テレビ番組で特集が組まれるくらいです。
今朝OAのZip!の「白Tシャツ」特集にコメントで出演しました。
— 山田耕史 ファッションアーカイブ研究 (@yamada0221) 2023年7月25日
内容をざっくりと。
渋谷で10分間計測すると、162人が白Tを着用。
人気の理由、1つ目は「さわやかさと涼しさ」。
白Tを着た人は黒Tに比べると表面温度が2度も低い。
これ、以前僕のブログでもご紹介しました続https://t.co/a14eSFSbFQ pic.twitter.com/CeMzaNHjx8
今の白Tの特徴が、ビッグシルエット。
— 山田耕史 ファッションアーカイブ研究 (@yamada0221) July 25, 2023
ここでファッションアナリスト山田耕史さん登場です笑。 pic.twitter.com/V0vlWIhMUD
定番アイテムである白Tは、シルエットや素材、デザインなどそのときどきの流行が反映される「時代を映す鏡」的存在。
— 山田耕史 ファッションアーカイブ研究 (@yamada0221) July 25, 2023
これ、自分ではなかなか良い表現したんじゃないかと思ってます笑 pic.twitter.com/pJe7ENeVk2
Tシャツ今昔。
— 山田耕史 ファッションアーカイブ研究 (@yamada0221) July 25, 2023
15年くらい前、エディ・スリマンのディオール・オム以降のメンズは特に、襟ぐりが広く、生地もテロッテロでした。
ここ数年はずっと分厚いのが流行り、という山田耕史さんのコメント。 pic.twitter.com/5tGeM6pKtU
今の白Tはブラックのボトムスと合わせるのが定番。
— 山田耕史 ファッションアーカイブ研究 (@yamada0221) July 25, 2023
白Tの悩みは肌が透けることと、食事のときに汚れること。
そういや以前ワークマンに、撥水加工を施したTシャツを「ラーメン専用Tシャツ」と銘打って売り出そうって提案をしたんですけど、スルーされたかなぁ笑
ということで、特集は以上です。 pic.twitter.com/Krzw2ioIyM
今流行りのファッションは誰でも実現が可能
また、4年ほど前から継続して人気なのが、ルーズシルエット。
こちらは現在のGUのオンラインストアから拝借した画像ですが、ルーズシルエットの無地Tシャツにルーズシルエットにパンツという、シンプルで誰でも気軽に着られる服で、トレンドを押さえたコーディネートが完成してしまいます。
https://www.gu-global.com/jp/ja/products/E349337-000/00?colorDisplayCode=05&sizeDisplayCode=029
https://www.gu-global.com/jp/ja/products/E347952-000/00?colorDisplayCode=30&sizeDisplayCode=004
ちょっと小技を効かせて、ボーダー柄Tシャツをウエストにタックインすると、更に今っぽい印象に。
https://www.gu-global.com/jp/ja/products/E344768-000/00?colorDisplayCode=57&sizeDisplayCode=004
つまり、今流行りのファッションは誰にでも気軽に手軽に実現が可能ということです。
今から5年後の「オタク」の服装はどうなる?
ですが、「オタクの服装」によると、「マシになった」のは「若めのオタクの服」だけのようです。
ただ、20年前に流行った服が今も現役の世代はここには含まれない。
今でも洗濯しすぎて元の色がわからんピチTおっさんは見かけるし、あくまで10代後半から30歳くらいの若めのオタクの服が時代によってマシになったという話である。
とはいえ、「洗濯しすぎて元の色がわからんピチT」も、永遠に着られる訳ではありません。
いつかは新しい服に切り替えられる日が来るでしょう。
そして、現時点でも既に↓のような「謎にイキったプリント」のTシャツは入手困難です。
ということは、新陳代謝のように徐々に「今でも洗濯しすぎて元の色がわからんピチTおっさん」は少なくなっていく筈です。
例えば今から5年後の「オタク」の服装はどうなっているのでしょう。
結局清潔感が一番大事
とはいえ、この記事で話題にしてきたのは、あくまでも「服だけ」。
「髪はボサボサで服のサイズも合っていない」し、「本体の清潔感はたぶん変わってないので匂いは普通にする」と、指摘されています。
僕の著書「結局、男の服は普通がいい」で、「オシャレな人の定義」として一番に挙げているが「身だしなみがきちんとしている人」です。
結局、清潔感が一番大事です。