僕は基本的に冠婚葬祭のときしかネクタイを付けません。
なので、持っているネクタイも数本のみ。
というか、前にネクタイを買ったのも、もう10年くらい前じゃないかと思います。
今年は5歳次男の七五三もあるので、そろそろ新しいネクタイが欲しいなーと、積極的ではないけれど、ネクタイが置いてあるお店に行けば、ちょっと気にして見ていました。
が、なかなか「これ!」というネクタイは見つけられず。
七五三は今月を予定しているので、新しいネクタイを買うとしたらそろそろ目星を付けておかないといけません。
300円でディグった田中オムのネクタイ
そんなとき、ディグったのがこちらのネクタイ。
コムデギャルソンオムのネクタイです。
しかもこの黒地にゴールド刺繍のタグは、僕が大好きな田中啓一さんがデザイナーを務めていたころの、いわゆる田中オムのもの。
僕は二次流通市場でコムデギャルソンの値動きをチェックしていますが、コムデギャルソンのネクタイってなかなか出ないんですよね。
しかも田中オム。
ここ数年、田中オムは高騰というか今や高値安定というレベルになってしまっています。
田中オム(田中啓一デザインのコムデギャルソンオム)が少し前から高騰しています。
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中 (@yamada0221) 2022年2月18日
例えばメルカリでシャツを探すと、だいたい1.5万円が底値(もちろん状態によります)、デザインや素材によっては2.5万円以上も珍しくありません。
ざっとですが10〜15年と比べると、倍額くらいになってる気がします。
ですが、このネクタイはなんと300円という超激安価格でした。
その理由は上掲の画像でタグが取れかかっていることに加え、先端に思いっ切り付いてしまっているシミにあります。
このシミがいつ付いたのかはわかりませんが、田中オムが2003年に終了していることを考えると、20年くらい前についた古いシミである可能性もあります。一般的に、シミは古ければ古いほど、落ちづらくなります。
先端以外の場所にもちょこちょこシミが。
しかも、ネクタイ自体が歪んでアシンメトリーになってしまっています。
なので、300円というジャンク価格だったという訳です。
田中オムらしい、良い柄のネクタイなのに非常に残念。
ですが以前僕は、同じようにジャンク価格で入手した、黄ばみの酷いコムデギャルソンシャツのシャツを真っ白に再生したという、圧倒的な成功体験があります笑
なので、今回も実験も兼ねて自宅でシミ落としに挑戦してみることにしました。
エマールで水洗い
この田中オムのネクタイにはタグが付いていませんでした。
なので推測ですが、おそらくこのネクタイはシルクでしょう。
自宅でのシルクのネクタイのシミの落とし方を調べてみると、こんな感じが一般的なようです。
1、洗面器に水を張り中性洗剤を入れてまぜる
2、洗浄液にネクタイを5分ほど浸す
3、浸したネクタイをゆする(手で揉む、擦る、押すなどはNG)
4、2~3回水を替えながら洗剤を落としていく
5、ネクタイを乾いたタオルで挟み水分を取る
6、あて布をしてスチームを当てる(温度は中温設定)
7、手で優しくシワを伸ばして、形を整える
8、折り目に菜箸を挟む(ふんわりした仕上がりになる)
9、もう1度、あて布をしてスチームを当てる
10、シワが伸びたら自然乾燥させる
僕が選んだ洗剤はエマール。
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↓の記事で詳しくご紹介していますが、僕はいわゆるおしゃれ着洗いにはエマールを使っています。
やってみましょう。上掲の方法通り、エマールを入れたぬるま湯にネクタイを浸し、ゆすって洗います。
で、お湯を入れ替えてゆすぐと、お湯がちょっと汚れています。ネクタイ汚れが溶け出しているのでしょうか。
お、これは!シミが落ちたかも!と思って引き上げてみたんですが…駄目でした。まだシミはしっかりと残っています。
熱湯ワイドハイター作戦を発動
こうなったら奥の手です。
熱湯ワイドハイター作戦で殲滅するしかありません。
熱湯ワイドハイター作戦の概要は以下。
1:バケツに漂白したい服と、粉末ワイドハイター(キャップ1杯くらい)、洗濯洗剤(洗濯1回分くらい)を入れる
2:服がひたるくらいの熱湯を入れて混ぜる
3:半日くらい放置
4:普通に洗濯機で洗濯
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これまで、上掲のコムデギャルソンシャツだけでなく、数々の服を真っ白にしてきました。
シルクネクタイに漂白剤は使ってもいいの?
でもそもそも、シルクのネクタイに漂白剤を使ってもいいんでしょうか?
調べてみると、以下のような情報を発見。
シルクは動物性繊維なので、アルカリ性の漂白剤で繊維が脆化して細くなってしまったり切れてしまったりします。更にシルクに使われる染料・特に青系は漂白剤で脱色されやすいのです。
パッケージを見てみると、粉末ワイドハイターは弱アルカリ性なので、シルクには向いていないことがわかりました。
でも、僕はその禁じ手を犯してしまいました。
こちらは熱湯ワイドハイターに浸けて一晩経った状態。お湯がネイビーになっているのがわかります。これ、完全に色落ちしてますね。
何度かお湯でゆすいで取り出した状態。
アイロンで歪みを直す
前述のようにネクタイ全体に歪みがあるので、濡れたままスチールアイロンをかけて矯正します。
実はこのコムデギャルソンオムのネクタイ、ちょっと特殊な構造をしています。
一般的なネクタイはたいてい付いている裏地がない、簡素なつくりになっています。
https://www.tokyonecktie.or.jp/about-necktie/
僕が持っている、ミリタリーもののネクタイには裏地がありません。
また、以前アルバイトをしていた警備員の制服のネクタイも、確か裏地がなかったような。
ミリタリーものや制服のネクタイに裏地がないのはコスト削減のためでしょう。
ですが、コムデギャルソンオムのネクタイに裏地がないのは、デザイン的な意図があるからでしょう。
まぁそれはともかく、そのおかげでアイロンをかけて、歪みの矯正ができました。
結果発表!
アイロンで生地を強制的に乾かした状態で、シミの付いていた先端を見てみると…やっぱり駄目でした。
こちらがビフォー。歪みは矯正され、生地にハリが戻ったのは良いのですが、まだシミは確認できます。
ネクタイ本体の色落ちはあまり感じられませんでしたが、カンヌキと呼ばれる糸が脱色していました。熱湯ワイドハイターのお湯がネイビーになっていたのは、おそらくこの糸から落ちた色なのでしょう。
ひとまず、取れていたタグは手縫いで直しました。
とりあえず、現時点ではこういう状況です。まぁ普通にジャケットの下に着用しても目立つことはないと思いますが、シミは確実に残っています。
脱色シリーズのネクタイ?
さて、今後ですが。
少しではあるけれど、確実にシミは薄くなっているので、何回か熱湯ワイドハイター作戦を繰り返すのもいいかな、と思っています。
あとはシミもデザインであるという強引な考え方を採用するという手もあるかと思います。
田中啓一が手掛けていたコムデギャルソンオムではなく、川久保玲が今も手掛けるコムデギャルソンオムプリュスの1994年秋冬コレクションは、今も傑作と語り継がれる「脱色」がテーマでした。
https://www.pinterest.jp/pin/84583299242175213/
https://www.pinterest.jp/pin/38069559338865182/
↑のコレクションは今も二次流通市場で非常に高値で取引されていますし、僕も後にコムデギャルソンオムプリュスエバーグリーンという復刻ラインから発売されたシャツを所有しています。
今日の服装。
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中 (@yamada0221) 2022年10月11日
00sプリュス脱色シャツ、ドッカーズチノパン、チープアシックス。
シャツは過去の名作を復刻していたライン、エヴァーグリーンのもの。脱色の境い目が緑色になってるところが気に入ってます。 pic.twitter.com/phzzmBBWAQ
このシミネクタイも脱色シリーズのひとつ…という考え方はちょっと無茶ですかね笑