昨日の記事で引用した、アウトレットについてのバズツイート。
軽井沢プレミアムアウトレットモールに毎年3回は来る者なのですが、完全に「来てはならない場所」になってて涙。正規店には置かないアウトレット専用の低劣品を混ぜて情弱に売るのはよくあったんだけど、もはや今は「それしかない」
— アムロ・ジ・エンド™️ (@amurosansan) 2023年4月29日
正規店に置いているレギュラー品は、ぶっちゃけ公式webショップで pic.twitter.com/QRMgpUKIsj
このツイートには続きがあります。
セール時に買った方がはるかに安い。情弱に売りつける用の低劣品のランクもb品レベルがc品レベルに下がっていて、明らかにユニクロよりペラッペラ。Macintosh philosophyなんてトロッタージャケットが5万!わざわざここに来る意味がない。
— アムロ・ジ・エンド™️ (@amurosansan) April 29, 2023
「情弱に売りつける用の低劣品のランクもb品レベルがc品レベルに下がっていて、明らかにユニクロよりペラッペラ。Macintosh philosophyなんてトロッタージャケットが5万!」とありますが、こちらは前回の記事で話題にした大手セレクトショップのアウトレット専売ブランドとは、またちょっと違います。
独自開発の「マッキントッシュクロス」という防水生地を用いたコートで知られる、1842年創業のイギリスの老舗ブランド、マッキントッシュ。
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現在はマッキントッシュロンドンというブランド名で、日本のアパレル企業三陽商会が展開しています。
マッキントッシュフィロソフィーは、マッキントッシュロンドンのセカンドラインとして、同じく三陽商会が展開しているブランドです。
そして、軽井沢のアウトレットには、マッキントッシュロンドンとマッキントッシュフィロソフィーのショップがあります。
ツイートではマッキントッシュフィロソフィーのトロッタージャケットが5万円台で販売されていることに驚いているようですが、調べてみると楽天市場のマッキントッシュフィロソフィー公式サイトではトロッターコートがセールで3万円台から販売されている模様。
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トロッターコートにも色々種類があるようですが、マッキントッシュフィロソフィーのトロッターコートの定価は6万円台中盤〜後半のようです。
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ツイートで触れられているマッキントッシュフィロソフィーのトロッタージャケットがこれと同じものかどうかはわかりません。
もしかしたら、マッキントッシュフィロソフィーのアウトレット専売用のトロッタージャケットがあったのかもしれません。
増加するブランドショップのアウトレット専売品
前回の記事では、大手セレクトショップのアウトレット専売品(=アウトレット用に新たに企画製造された商品)についてご紹介しました。
大手セレクトショップ以外にも、アウトレット専売品を展開しているブランドは多数あります。
僕のツイッターを検索してみると、2016年にニューバランスのアウトレット専売品についてツイートしていました。
ニューバランスでアウトレット専売シューズが!わざわざ企画するってことは売れるってことでしょうね。 pic.twitter.com/IwmbZ68UkK
— 山田耕史 ファッション×歴史のnoteはじめました (@yamada0221) 2016年12月31日
ここから7年。
僕は最近あまりアウトレットに行けておらず、行ったとしても家族が一緒なので以前のようにじっくりとリサーチできていないのですが、その間にブランドショップでのアウトレット専売品がどんどん増えているようです。
最近目にして驚いたのがこちら。
アクアスキュータムにもアウトレット専売品があるんすね…
— 山田耕史 ファッション×歴史のnoteはじめました (@yamada0221) 2023年3月15日
えぇっ! アクアスキュータムの王道トレンチに手が届く(嬉)|雑誌Begin(ビギン)公式サイト https://t.co/hkx2SYJ9o2
マッキントッシュと同じ、イギリスの老舗コートブランドであるアクアスキュータムのアウトレット専売品についての記事です。
元記事はこちら。
スクリーンショット画像と共に、僕が気になったポイントをいくつか引用します。(強調引用者以下同)
ボクらが大好きなあのブランドも、じつはアウトレットモールにガッツリ出店! ビックリ価格のお宝アイテムがわんさかあるとなれば、これを利用しない手はありません。
トレンチコートの2大巨星の一つ、アクアスキュータムの代表作といえば、キングスウェイ。エポレットにガンパッチ、ベルトのD環と、ミリタリーディテールをフルに備えたトレンチの王道をゆく一着ですが、一流ブランドのフラッグシップとあって、価格は20万円超。
モトは取れるとわかっちゃいても、気軽に買える値段ではありませんよね……。しかしアウトレットモールに足を運ぶと、んんっ!? ほぼ半額のトレンチがあるじゃありませんか!
このチャタム、エポレットやベルトのD環が省略されていたり、生地が玉虫色の輝きを備えるポリエステル混のそれだったりと違いこそありますが、シンプルな顔といい艶といい、これはこれで最高♡
ゆったり着られるシルエットもイマどきですし、永世定番はいつか手に入れるとして、まずこちらを買うのも賢い一手といえるのでは?
記事には「アウトレット専売モデル」とはっきりと記載されています。
アウトレット商品=「多少傷のついた商品」「季節外や旧型の商品」「売れ残り品」
でも、そもそも。
アウトレットって専売品を売る場所でしたっけ?
アウトレットの定義について調べると、以下のような記述がありました。
多少傷のついた商品,季節外や旧型の商品,売れ残り品,またはその販路。本来は出口,はけ口の意味。通常の使用に耐えうるこうした商品を値引き価格で販売する小売店をアウトレットショップ(ストア),ショップが大規模な敷地に集積したものをアウトレットモール(パーク)といい,1980年代のアメリカ合衆国で発展し,1990年代に日本に進出した。製造業者が工場や倉庫の近くで流通コストをかけずに販売するファクトリーアウトレット(工場直販)と,百貨店などの小売業者が運営するリテールアウトレットがある。在庫管理の点で製造業者,小売業者ともに不良在庫を抱えずにすみ,消費者も商品が格安で手に入るという利点がある。
僕の神戸の実家近くにアウトレットができたのが、1999年のことでした。
その前年から通い始めた大学の帰りに気軽に寄れるロケーションだったので、僕は足繁く通っていました。
そして、当時のアウトレットはその定義通り、「多少傷のついた商品」「季節外や旧型の商品」「売れ残り品」が売られている場所でした。
約25年前、地元神戸に初めてアウトレットができた頃は、本当のアウトレットでした。
— 山田耕史 ファッション×歴史のnoteはじめました (@yamada0221) 2023年4月30日
当時神戸で取り扱いのなかったフセイン・チャラヤンが買えたり、大手セレクトショップも、アウトレット専売品なんてなく、宝探し感があってワクワクしてました。
短かったけど、良い時代だったんですねぇ。 https://t.co/Dqsxk59FQc
川久保玲と並んで、大学時代に僕が熱狂していたファッションデザイナー、フセイン・チャラヤン。
1999年当時、フセイン・チャラヤンを正規で取り扱っているショップは神戸にはなかったのですが(確か大阪にもなかったはず)、当時のマリンピア神戸にあったショップで、なんとフセイン・チャラヤンの過去のシーズンの売れ残りが販売されていたのです。
フセイン・チャラヤンの商品はインポートということもあり、コムデギャルソンよりも圧倒的に高価。ですが、アウトレットならかなり安価だったはずです。当時のフセイン・チャラヤンはレディスしか展開していなかったのでもちろん購入はしませんでしたが、今考えると資料用として買っておけば良かった…と軽く後悔してしまいます。
アウトレット専売品のほうが多いアウトレット
まぁそれはそれとして。
2000年代のアウトレットは売れ残りやB級品が販売される場所だったと思います。
当時はアウトレットでニューバランスやナイキのスニーカーもよく買っていました。
#私的ベストスニーカー
— 山田耕史 ファッション×歴史のnoteはじめました (@yamada0221) September 16, 2019
第6位:ニューバランス576
昔はアウトレットで1万円台で買えたんですよね。神戸のアウトレットでこの色買いました。僕の足型に合ってたんだと思います。あざとくないいい感じのクッション性と踏みしめる感が味わえるソールのグリップ感。ほんと、良いスニーカーでした。 pic.twitter.com/YZqPQFiGKj
同じ頃、エアマックス95グレープもアウトレットで買いました。多分アンダー1万円だったと思います。ハイテクスニーカー好きにとっては良い時代でしたねぇ。 pic.twitter.com/gf12xp6R82
— 山田耕史 ファッション×歴史のnoteはじめました (@yamada0221) 2019年4月10日
大手スポーツブランドのアウトレットは、今も本来のアウトレット商品である「多少傷のついた商品」「季節外や旧型の商品」「売れ残り品」が多く扱われています。
ですが、大手セレクトショップのアウトレットでは、アウトレット専売品のほうが圧倒的に多い状態になっています。
そんな状態のショップをアウトレットと呼んでいいんでしょうか?
なんかもう、別の名称にしたほうがいいんじゃないでしょうか。
そしてこちらは元のツイートの更に続きです。
前はいろんな店の袋を下げてる客がいたけど、今それをやってるのは事情が分からないアジアン旅行者かEXILE好きそうな低学歴と田舎者だけで、なんというか目利きのできる金持ちも背伸びしたい都内の中流もとんでしまった。何を買っても被害者になる感じがヤバイ。 pic.twitter.com/243FkIwlu8
— アムロ・ジ・エンド™️ (@amurosansan) April 29, 2023
「今それをやってるのは事情が分からないアジアン旅行者かEXILE好きそうな低学歴と田舎者だけで、なんというか目利きのできる金持ちも背伸びしたい都内の中流もとんでしまった。何を買っても被害者になる感じがヤバイ。」
アウトレットがほぼアウトレットではないことは、わかっている人にはもうわかっている状態です。
この状態をいつまで続けるのでしょうか。
「デッドストック」を「ライブストック」に
90年代からメンズファッション誌で活躍しており、僕も当時から誌面でよく目にしてたスタイリスト、小沢宏さんが「エディトリアルストア」というショップを2022年から長野県で運営しています。
こちらのショップの主力商品は本来のアウトレットのような売れ残り。
それを、スタイリストである小沢宏さんがセレクトすることで、「ライブストック」=「生きた在庫」にするというのが、目的です。
ビームスやネペンテス、エストネーション、ベイクルーズ 、デイトナインターナショナルなどが手掛けるセレクトショップの眠った在庫。シーズン落ちした商品をスタイリストならではの審美眼で買い付け、もちろん定価より安い値段で販売。
小沢:基本的にはエクセルの在庫リストとにらめっこしながら個々の倉庫に赴き、在庫の山からお目当てを探し出し、購入するカンジ。倉庫の一角にキレイな段ボールを広げて、洋服を床に置いて吟味している。
今の僕が目指すのは、「デッドストック」を「ライブストック」にすること。古着業界の「デッドストック」は、未使用のヴィンテージ品。一方の「ライブストック」=「生きた在庫」で、本来なら処分される在庫を新たな流通で新しい価値と共に甦らせたい。
上述しましたが、現在の大手セレクトショップのアウトレットは、アウトレット用に新たに企画製造されたアウトレット専売品しかほぼ取り扱っていない状態。
インタビューでは触れられていませんが、小沢宏さんもそういった状況に疑問を持っていたのではないでしょうか。
小沢宏さんの取り組みが、「アウトレット専売品しか売っていないアウトレットはアウトレットなのか問題」を解決するヒントになるのではないかと思っています。
もちろん、「エディトリアルストア」のやり方をそのまま全国のアウトレットに転用することは非常に難しいでしょう。
ですが、良くも悪くも服は見せ方で大きく印象が変わります。
「デッド」を「ライブ」にする方法は、模索すれば見つかりそうな気がします。