今回は昨日の記事の続きです。
ファッションデザイナー、ヴィヴィアン・ウエストウッドの自伝から、興味深かった点をピックアップしてご紹介します。
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ヴィヴィアン・ウエストウッドとセックス・ピストルズ
ヴィヴィアン・ウエストウッドと、当時のパートナーだったマルコム・マクラーレンが、ロンドンのキングス・ロード430番地に1971年にオープンしたブティックが、「レット・イット・ロック」。
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1972年には「トゥー・ファスト・トゥ・リヴ、トゥー・ヤング・トゥ・ダイ」に店名変更。
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1974年「セックス」。
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1976年「セディショナリーズ」。
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1979年「ワールズ・エンド」と、店名はころころと変わりましたが、店舗で扱っていたアイテムのほとんどは、ヴィヴィアン・ウエストウッドがデザインし、彼女自らが縫製したり、染色したりしたものも、多くありました。
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そして、このヴィヴィアン・ウエストウッドとマルコム・マクラーレンによるブティックの客であった不良少年を中心に結成されたのが、セックス・ピストルズです。
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タータンチェック、ユニオンジャック、エリザベス女王
当時、セックス・ピストルズのメンバーが着用していた服の多くが、ヴィヴィアン・ウエストウッドがデザインしたものでした。
そして、ヴィヴィアン・ウエストウッドによるセックス・ピストルズのファッションは、非常に独創的かつ攻撃的で、その後のファッションに大きな影響を受けましたが、その中でも特に目立っていたモチーフが3つあります。
ひとつめは、タータンチェック。
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ふたつめはユニオンジャック。
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ユニオンジャックは服だけでなく、ジェイミー・リードが手掛けたアートワークなどにも多く用いられています。
そして、当時の英国女王だった、エリザベス女王をモチーフにしたヴィジュアルも、セックス・ピストルズの象徴的な存在です。
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幼き日ののヴィヴィアンが見たエリザベス女王戴冠式
ヴィヴィアン・ウエストウッドが英国の伝統を象徴するモチーフをデザインに取り入れていたのには、やはり彼女の原体験の影響がありました。
(「ヴィヴィアン・ウエストウッド自伝」から引用 強調引用者 以下同)
1953年6月2日はイギリス全土に雨が降っていた。 エリザベス女王二世の戴冠式の日。 計画されていた多くの祝賀行事や沿道での祝宴が台無しになった。25歳のエリザベス・ウィンザーが女王の位に就き、12歳のヴィヴィアンは、グロソップ・グラマー・スクールに入学したばかりで、 ティンツィス ルにあるその古い学校で、雨の中、戴冠式を祝うお茶会に参加していた。スウェア家の人々もその場に勢ぞろいしていた。それから、他の大勢の人たちと一緒に近所の家に移動した。 その家にはテレビがあった。「新エリザベス女王世代」となったイギリス全土の人々と共に、スウェア家の面々もまた、 新しく家の中に入り込んできたテレビのまわりに群がって、ウエストミンスター寺院で行なわれた古式ゆかしい儀式を見守った。その光景は、ヴィヴィアンの心に、彼女が通っていた王党派のチャーチ・スクールと同様、計り知れない影響を与えた。人の個性は若い頃にできあがるとヴィヴィアンは言う。 彼女のデザインのモチーフにもその傾向が見られる。1950年代の音楽やスタイルが、 ファッションにおける彼女の仕事に自然と表れている。イギリスや女王をイメージしたものが多いのも、遡れば、彼女がイギリス文化の歴史における特別な瞬間に立ち会ったことに由来している。チャーチルが希望や大志に満ちた新時代について熱弁をふるったことも一因ではあるだろう。しかし、メッセージとい うのは、視覚的に、あるいは場面や儀式を通して伝えられることでより深く人の心に届くものだ。 さらに、壮麗な衣装に身を包んだ新女王が王冠を受けるという古式ゆかしい戴冠の儀式は、贅を尽くし着飾った上流社会の若きレディたちの集団や、弱冠25歳の女王の姿が50年代らしくカラーテレビで 放映されたことで、人々に強烈なインパクトを与えた。以来、ヴィヴィアンは、王位、伝統、歴史、 貴族社会などのイメージに遊び心をプラスしたデザインを多用している。 「God Save the Queen」という文字が入ったTシャツにはじまり、ハリス・ツイードは言うに及ばず、アングロマニア・コレクションや会社のロゴとなったオーブに至るまで、その例は枚挙にいとまがない。その戴冠式は、くすんだ灰色のような緊縮経済で沈滞するイギリスに、極彩色の絵の具を蒔き散らしたような感があった。 しかし、それは同時に、服装や儀式、そして、女王に人々の注目が集まる瞬間でもあった。 その体験が、ヴィヴィアンの世界観に変化をもたらし、すでに彼女が身につけていたイギリス人であり女性であるという特性に具体的なイメージや象徴的要素を授けたことは、まずまちがいないだろう。
エリザベス女王戴冠式については、こちらのグーグルのコンテンツでわかりやすくまとめられています。
YouTubeには、当時の日本のニュース番組らしき、2分ちょっと動画がアップされています
こちらは英語のロングバージョン。
まさに、英国王室の権威と伝統を誇示する、豪華絢爛な世界。今見ても、その荘厳さに圧倒されます。
これをテレビ越しとは言え、リアルタイムで経験した幼き日のヴィヴィアン・ウエストウッドは、英国民であることに強い誇りを覚えたのではないでしょうか。
彼女のその後のクリエイションに大きな影響を与えたのも、頷けます。
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英国王室とタータンチェック
以前も当ブログで詳しくご紹介しましたが、タータンチェックは長い歴史を持つ、イギリスを象徴する伝統のある柄です。
スコットランドの伝統衣装であるキルトは、英国王族も正装として着用するなど、タータンチェックは英国王室を象徴する柄です。
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「レット・イット・ロック」~「ワールズ・エンド」時代はもちろんのこと、マルコム・マクラーレンと袂を分かち、ヴィヴィアン・ウエストウッドがファッションデザイナーとして独り立ちしてからも、タータンチェックはヴィヴィアン・ウエストウッドを象徴するアイコンであり続けています。
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上掲の記事でもご紹介していますが、ヴィヴィアン・ウエストウッドがデザインしたタータンチェックは、スコットランドにあるタータン登記所に、正式なタータンとして登録されています。
www.tartanregister.gov.uk2014年には「スコットランドのファッションとその業界への多大なる貢献」をした人物として、ヴィヴィアン・ウエストウッドがスコティッシュ・ファッション・アワード・ホール・オブ・フェイムに殿堂入りし、スコットランドのアリスター・カーマイケル大臣は、タータン生地の使用により、ヴィヴィアンが「スコットランドのテキスタイルに永続する遺産を作った」とヴィヴィアンを讃えました。
パンクの象徴となったユニオンジャックとタータンチェッ
英国王室に強く影響を受けたヴィヴィアン・ウエストウッドにより、パンクの象徴となったユニオンジャックとタータンチェック。
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パンクが誕生して、50年が経過した今でも、やはりユニオンジャックとタータンチェックはパンクの象徴であり続けています。
では、もしあと50年経過したら、ユニオンジャックやタータンチェックはどんな存在になっているんでしょうか?
僕はギリギリ確かめられるような気がするので、楽しみにしていたいと思います。
続きます。