先日公開したこちらの記事では、タータンチェックの歴史をご紹介しました。
今回はその続編です。タータンチェックとファッションや音楽との関係をご紹介します。
100年の歴史を持つバーバリーのトレンチコート
タータンチェックには種類があります。前回の記事では、氏族を表すクランタータンや王室が用いるロイヤルタータンなどをご紹介しましたが、ファッションタータンというタータンもあります。 最も有名なのが、イギリスを代表するブランド、バーバリーのタータン。
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バーバリーがブランドを象徴するアイテムであるトレンチコートにタータンを用いたのは1924年と言われています。100年前から存在している、伝統的なアイテムということですね。
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ですが、そのときタータンが用いられたのは裏地のみ。
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その後、1960年代にパリで行われたファッションショーでバーバリーチェックを用いた傘を発表し、話題になりました。
また、1972年にオリンピックの馬術の女性チームがバーバリーのトレンチコートを裏返しにして腕にかけたのが話題になったそうです。
バーバリーのトレンチコートを裏返しにして着るのは最近流行りましたし、バーバリーのトレンチコートを裏返しでディスプレイしている古着屋さんも昨冬見た気がしますが、そのルーツはオリンピックだったようです。
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ですが、90年代にはバーバリーのブランドイメージは良く言えば落ち着きのある、悪く言えばオジサンくさいものになっていました。
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2001年にクリストファー・ベイリーがデザイナーに就任し、若返りを図ります。その結果、バーバリーは現在もトレンドを索引するブランドとして存在感を発揮しています。
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とはいえ、今もトレンチコートなどの定番商品は高い人気を誇っており、バーバリーは伝統と革新のバランスが上手く取れているブランドだと言えるでしょう。
イギリスからアメリカ、そして世界に広がるタータン
バーバリーなどの英国ファッションの影響を強く受けているのが、世界最古の紳士服販売店であり、ブランドであるアメリカのブルックス・ブラザーズです。ブルックス・ブラザーズの歴史についてはこちらの過去記事で詳しくご紹介しています。
そのスタイルのベースになっているのはブリティッシュ・トラッド。タータンチェックを用いた商品も数多く出しています。
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アメリカでは1950年代にアイビールックが、1960年代にプレッピールックが人気を集め、その流行は日本にも波及します。アイビールックの象徴とも言えるのが、ジョン・F・ケネディです。
こうして、ブリティッシュ・トラッドスタイルは世界の若者に支持されるファッションになりました。
そして、ブルックス・ブラザーズのDNAを受け継いでいるのが、ブルックス・ブラザーズでセールスマンを経験したこともある、ラルフ・ローレンです。
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1950〜60年代のアメリカでは、タータンの安価なコットンシャツが働く男性に多く着用されていました。その人気に目をつけて丈夫なシャツを売り出したのが、イギリス人の織工が19世紀後半につくったブランド、ペンドルトンです。 ペンドルトンのシャツは売れに売れ、当時のアメリカでは若者から老人まで知らない人はいないほどの人気になりました。ペンドルトンのアイテムは今でも古着屋さんの定番アイテムの1つです。
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(記事執筆時の価格です)
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音楽と結びつくタータン
そのペンドルトンを愛したロックグループが、1961年に結成されたビーチ・ボーイズです。ビーチ・ボーイズの元々のグループ名は「ペンドルトンズ」でした。
このビーチ・ボーイズのように白いTシャツの上にペンドルトンのチェックシャツを羽織るスタイルが当時大流行しました。
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ビーチ・ボーイズのように、タータンは音楽と縁の深い柄でもあります。後述する1970年代のパンクスの影響で、音楽シーンでもタータンが注目されるようになります。その代表格が、スコットランドのエディンバラ出身のベイ・シティ・ローラーズ。
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全世界でアイドル的な人気を集めたベイ・シティ・ローラーズは来日公演も果たし、日本の若者たちの間にタータンブームをもたらしました。
その日本で、タータンと言えば思い浮かぶのが1983年デビューのチェッカーズ。ちなみに、チェックの服を着ていたからチェッカーズ、ではなく、チェッカーズというバンド名が元からあり、そこからチェックの服を衣装にすることを当時のマネージャーが考案したそうです。
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反骨精神の象徴としてのタータン
タータンと音楽、と聞いて最も印象が強いのがパンクスではないでしょうか。
パンクスの代表が反体制的な歌詞や言動、衝撃的なヴィジュアルで、今も根強い人気を誇るセックス・ピストルズ。セックス・ピストルズは英国王室や英国軍とゆかりの深いタータンをあえて着ることで、反骨精神を表現しました。
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マルコム・マクラーレンと共にセックス・ピストルズのファッションを手掛け、パンクファッションの礎を築いたのがヴィヴィアン・ウエストウッドです。
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その後、ヴィヴィアン・ウエストウッドはファッションデザイナーとしてコレクションを展開。タータンを用いた作品を数多く生み出しました。
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ヴィヴィアン・ウエストウッドのタータンもあります。前回の記事でご紹介したスコットランド・タータン登記所のサイトで確認できます。
ヴィヴィアンの反骨精神を受け継ぐ川久保玲
そして、ヴィヴィアン・ウエストウッドの反骨精神を受け継ぐのが、コムデギャルソンの川久保玲です。 コムデギャルソンのコレクションでも、タータンは頻繁に登場しています。
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MR00年10月号。00AWプリュス。格好良すぎ。ニット売らなきゃ良かった。 pic.twitter.com/O3ghTkO5ED
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) 2018年4月5日
MR00年6月号掲載コムデギャルソンオムプリュス00AWコレクション。前も同じ画像で同じようなツイートしたと思いますが、今見ても格好良すぎ。 pic.twitter.com/YcT1mxVuig
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) 2019年5月16日
黒人さんモデル超格好良い。 pic.twitter.com/HwsuQMpBMv
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) May 16, 2019
雑誌「SWITCH」2018年6月号のインタビューで川久保玲はこう語っています。
私は一貫して「PUNK」=反骨精神というテーマを表現することをこころがけてきたと思う。ずっとそれをコレクションで表現し続けているし、繋がっているものだと思います。
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タータンチェックは伝統の象徴であり反骨精神の象徴でもある
英国王室のような伝統的なイメージを持ちながらも、パンクスやコムデギャルソンのように反骨精神を表現するタータン。
つまり、タータンは伝統の象徴であり、反骨精神の象徴でもあるんです。
こんなに多彩な意味を持つ柄は他にはないでしょう。
この記事があなたのお役に立てれば幸いです!