今回は「スニーカーの”文脈”を知る」と題した、誰もが知る定番スニーカーの歴史や背景を深堀りしてご紹介する企画の第4弾。これまでの記事はこちらです。
ド定番エアフォース1が入手困難?
ナイキのド定番バスケットボールシューズ、エアフォース1。
NIK AIR FORCE 1 LOW 07
¥14,500
(記事執筆時の価格です)
NIKE AIR FORCE 1 07 white/wht 315122-111
¥16,999
(記事執筆時の価格です)
人気スニーカーショップ、アトモス社長の本明秀文氏が少し前にツイッターでエアフォースの売れ行きの好調について触れていました。
NIKE WMNS AIR FORCE 1 '07 LXです。Forceの調子が良い。逆にインバウンドが居なくなり、日本人はこのぐらいの値段の物しか買えない。平均単価が下がっている。今までは高いハイテク新商品が売れていたが、最近は無難な手頃な値段のものばかり売れる。私は日本の国力の衰退をスニーカーを売り嘆く。 pic.twitter.com/Crwz2YFLf6
— SHOE LIFE (@Shoelife2012) 2020年7月16日
また、座談会でもお世話になったFACYの編集部ブログでもエアフォース1が入手困難だったことが触れられています。
え、エアフォース1が入手しづらくなってるんすね。
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) 2020年9月7日
「中学生ぶりと思ったら初買いでした」NIKEのエアフォース1〜編集部の愛用品VOL.30(編集部ゆうや)〜 https://t.co/Tjj7ZpiaiG
ハイテクスニーカーが流行った後はシンプルスニーカーが流行る
本明秀文氏のツイートを見て僕が思い出したのは、我が家にある90年代のファッション誌で見た当時の特集です。
エアフォース1、売れてるんですね!
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) 2020年7月16日
確か、90年代のハイテクスニーカーブームが一段落したときも、エアフォース1が人気になったんですよね。
歴史は繰り返す。 https://t.co/PszvgNrCGV
それがこちら。1997年1月号のクールトランス。表紙は宝生舞さんです。
「決定!’96−’97スニーカーランキング」という巻頭特集で第1位に輝いているのがエアフォース1なんです。
ちなみに2位以下はこちら。
当時はエアマックス95やポンプフューリーが索引したハイテクスニーカーブームが一段落した頃。ランキングにはもちろんエアマックス95やポンプフューリーの兄弟モデルであるフューリーロードも入っているのですが、ハイテクの「次」のスニーカーとして人気が高まっていたのが、エアフォース1やコンバースジャック・パーセル、アディダススーパースターなどのオーセンティックなスニーカー。
ラグジュアリーストリートブームが一段落し、THE TENやYeezyに代表されるプレミアムスニーカーの人気が落ち着いた2020年の今は、1996年に似た状況ではないでしょうか。
THE10 : NIKE AIR VAPORMAX FK white/black-total orange AA3831-100
¥117,999
(記事執筆時の価格です)
食べ物でもこってり味に飽きたらあっさり味を食べたくなるもの。ゴテゴテしたデザインのスニーカーのブームが終われば、シンプルなスニーカーの人気が高まるのは当然でしょう。
ちなみに、クールトランスの特集ではエアフォース1を着用しているストリートスナップが紹介されています。アメカジストリート系がほとんどですね。
雑誌が提案するスタイルではレザーシャツにレザーパンツの上下黒のコーディネートにエアフォース1を合わせています。2020年の今の感覚だとかなりちぐはぐな印象ですが、当時はこれがアリだったんでしょうか…。
エアフォース1の歴史
さて、ここでエアフォース1の歴史を紐解いてみましょう。エアフォース1が生まれたのは1982年です。1979年にナイキが開発した「エア」を搭載した初めてのバスケットボールシューズということで、当時の広告でもエアを強くアピールしています。
https://www.pinterest.jp/pin/124693483420819950/
最初に発売されたのはハイカットモデルで、現在ポピュラーな存在であるローカットモデルは後に発売されました。
https://www.pinterest.jp/pin/396176098475747794/
それまでのバスケットボールシューズは衝撃吸収材が不十分だったため、NBAでは脚を故障する選手が続出しており、選手はテーピングを巻いたり、靴下を2枚重ねるなどして怪我の予防を図っていました。
そこに登場したエアフォース1はエアによる高いクッション性や、フィット感を高めるアンクルストラップなどの高い機能性がNBA選手に受け入れられます。
モデル名にもなったアメリカ大統領専用機であるエアフォース1を由来とする洗練されたデザインも人気を呼びました。
ナイキはエアフォース1の発売に際し、6人のNBA選手をエアフォース1の広告塔として選び「オリジナルシックス」と名付けました。
https://www.sneakerfiles.com/nike/nike-basketball/
その中の1人が、後にバスケットボール殿堂入りを果たすモーゼス・マローン。当時の試合の画像でも白×赤のエアフォース1を着用しているのがわかります。
https://www.pinterest.jp/pin/401946335478247631/
「モーゼス」という名前から、十戒のモーゼをモチーフとしたビジュアルもつくられました。
https://www.pinterest.jp/pin/670332725759290961/
ストリートに浸透するエアフォース1
人気の黒人NBA選手に着用されるということは、黒人人気、ひいてはヒップホップなどのストリートでも人気を集めるということとほぼ同義と言えるでしょう。エアフォース1はまたたく間にストリートファッションに浸透していきました。
https://www.pinterest.jp/pin/461830136773914939/
現在でもドレイクやエイサップ・ロッキーなど数多くの人気ミュージシャンがエアフォース1を愛用しています。
https://www.pinterest.jp/pin/139400550952351905/
https://www.pinterest.jp/pin/719309371720324455/
また、ビームスが創立40周年を迎えた2016年に発売した、1976年から2016年までの日本のファッションの変遷を年ごとに紹介している書籍「WHAT'S NEXT? TOKYO CULTURE STORY 」では、1984年の「パンクス」がエアフォース1を着用しています。
パンクスとエアフォース1の関係を調べてみたのですが、有力な情報は見つけられませんでした。とはいえ、パンクスと直接的には関係がなさそうなエアフォース1をわざわざ履かせているということは、当時のパンクスはエアフォース1を着用していたのでしょう。
「WHAT'S NEXT? TOKYO CULTURE STORY 」についてはこちらの過去記事で詳しくご紹介しています。自信を持ってオススメできる良書です。
WHAT'S NEXT? TOKYO CULTURE STORY
エアフォース1からインスパイアを受けてデザインされたスニーカーは数多く存在しますが、最も代表的なのが90年代の裏原宿カルチャーを代表するブランドであるアベイシングエイプのスニーカーライン、ベイプスタでしょう。
https://www.pinterest.jp/pin/77405687333506229/
コラボをはじめとした様々なモデルがあり、現在も新作が発売されています。
A BATHING APE ア ベイシング エイプ ×KAWS カウズ BAPESTA
¥254,100
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As part of a yearlong campaign celebrating the BAPE STA™, BAPE® has partnered with one of today’s hottest and most successful music collectives to design a special “@dreamville” edition.
— BAPE.COM (@BAPEOFFICIAL) 2020年9月9日
Available on Saturday, September 12th. #bape #bapesta20th #dreamville pic.twitter.com/8GkxhN7jDw
ヒップホップカルチャーに強く傾倒していた時期もあったNIGO氏にとって、エアフォース1は特別なスニーカーなのでしょう。
https://www.pinterest.jp/pin/503066220882482198/
エアフォース1はラグジュアリーの世界に
ラグジュアリーブランドを代表する存在であるルイ・ヴィトン。現在メンズのアーティスティックディレクターを務めているのは、裏原宿カルチャーの影響も強く受けているストリート出身のデザイナー、ヴァージル・アブロー氏。2020年にはNIGO氏とのコラボレーションも果たしています。
そんなアブロー氏が手掛けるルイ・ヴィトンのメンズスニーカーには、エアフォース1の強い影響を伺わせるスニーカーが数多く登場しています。
LOUIS VITTON リヴォリ・ライン・スニーカー 1A2CVM
¥ 62,800
(記事執筆時の価格です)
LOUIS VUITTON 【18/19秋冬モデル】リヴォリ・ライン スニーカー
¥162,148
(記事執筆時の価格です)
アスリート用のスポーツシューズとして生まれ、ストリートファッションのスニーカーとして世界に浸透し、そして現在ではラグジュアリーブランドのシューズのモチーフにまでなったエアフォース1。
2020年の今、人気を集めるまでにこのような歴史があったのです。
この記事があなたのお役に立てれば幸いです!