先日のこちらの記事が少し話題になったようです。
「帝王」の異名を持つ巨匠、ジョルジオ・アルマーニ。アルマーニに関しては以前記事で詳しくご紹介しています。
そのアルマーニの書簡を元にした記事です。一部引用します。
ファッション業界のスケジュールが現在のように目まぐるしくなったのは、ラグジュアリーブランドがファストファッションと同様の手法を取り入れたからだ。ラグジュアリーとは手間と時間がかかるものであり、大切に愛されるべきものだということを忘れて、ファストファッションのように途切れなく商品を供給することでより多くの売り上げを得ようとしてしまった。ラグジュアリーは速いペースでつくれるものではないし、またそうあってはならないものだ。「ジョルジオ アルマーニ」のジャケットやスーツをたった3週間ほど店に並べ、これはもう“季節外れ”だからとそれほど見た目の変わらない新製品と入れ替えるのは全く意味をなさないと思う。
従来のファッショントレンドの構造は崩壊する
春夏、秋冬と6ヶ月に一度開催されるコレクション(ファッションショー )。ブランドによってはそれに加え、プレコレクション(クルーズやリゾート、ホリデーコレクションなどとも呼ばれます)という、サブ的なコレクションも開催します。つまり、年4回、つまり3ヶ月に1回新作を発表しなければならないという、とても早いサイクル で回っているのが現在のファッション業界なのです。
6ヶ月に一度のショーを頂点とした、従来のファッショントレンドの構造はコロナで全部吹っ飛ぶ予感。以前から、トレンドサイクルの早さに疑問を呈する著名デザイナーもたくさんいましたし。
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) 2020年4月10日
トレンドなんか気にせず、よりその人のライフスタイルにマッチした服の選び方にシフトしていきそうです。 https://t.co/1PrYUoHKAL
これまでアルマーニ以外にもこの異常なサイクルの速さに異議を唱えるデザイナーは数多くいましたが、今回のように注目が集まったのは、昨今の騒動で世の中に大きな変化が生まれる機運を多くの人が感じているからではないかと思います。
先日は老舗ブランド、サンローランが次回のパリコレクションへの不参加を表明しました。”現在の状況とその根本的な変化の波を考慮して”ということが不参加の理由として挙げられていますが、”現在の状況”は数ヶ月単位で変わるとしても、”根本的な変化の波”はそう簡単には変わらないでしょう。
”現在の状況とその根本的な変化の波を考慮して”ってことは、今後も参加はしないんですかね。
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) 2020年4月28日
サンローランが2021年春夏パリ・ファッションウィーク不参加を表明 | https://t.co/OjG7O91zLN https://t.co/t5FrQ3kWag
パリやミラノでランウェイショーを続けるブランドは相当減るでしょうねぇ。
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) 2020年4月26日
Global|コロナ・パンデミックが教える「なくてもよいファッション」とは? https://t.co/Lz0N19U1yg
これまで半年に一度のランウェイショーが中心、そして頂点だという認識が強かったコレクションの発表の形態は今後かなり多様化するでしょう。もちろんランウェイショーを続けるブランドもあるでしょうが、作品性の強いファッションデザイナーは、現代アーティストのような存在になったりするのではないかと思っています。
コレクションも多様化しそう。アート寄りの作品性の強いデザイナーは時間をかけてアイデアを練り上げて、数年に一度完成度の高い作品を発表するようになったり。川久保玲なんかには是非そんなコレクションをやって欲しいです。
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) April 10, 2020
音楽やアニメなどのカルチャーやスポーツなどとミックスした提案をするブランドは既にに増えています。
若手ミュージシャンを起用するブランド、最近かなり増えていますね。カルチャー重視ってことですかね。
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) 2020年3月25日
CPカンパニーがキッドフレシノを起用した最新エディトリアルを公開 | https://t.co/OjG7O91zLN https://t.co/u4Z5DEo438
パリでコレクションを開催するためには3,000万円の費用が必要だそうです。
コレクションって、デザイナーって何ですか?
— PREPPY (@Mark20130309) 2020年4月21日
良いコレクションとは、新しいと思えるか。
パリなら最低3000万円はかかる。ショーでイメージを発信しつつメインはバッグや財布香水で売上を取っている。
ビジネスで成功したのはGUCCI、バレンシアガ。ジルサンダーやザ・ロウのポストフィービーも… pic.twitter.com/FFEK91zxBh
宣伝効果に加え、以前は「パリコレブランド」というバリューもあったのでしょうが、現在はそこまでの費用対効果があるブランドは少なくなっているのではないかと思います。
ブランドの世界観を構築するのなら、ランウェイショーをするよりも、その予算でインスタやYou Tubeにまわしたほうが効果が高かったりするんじゃないすかねぇ。
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) April 26, 2020
以前から僕は、コレクションを頂点としたファッショントレンドの構造は消滅するだろうと考えてきました。こちらは3年前の記事です。
僕の書籍、「結局、男の服は普通がいい」でもファッショントレンドの構造についてご紹介しています。
ファッショントレンドはファッション業界が新しい商品を買わせるための戦略に過ぎません。新しい商品を次々と出すことで前の服を着ていたら時代に取り残されてしまう、というイメージ作りをしているのです。
もちろん、そういったファッション業界の戦略を知ったうえで、ファッショントレンドを楽しみたいという人もいるでしょうし、僕はそういった楽しみ方を否定しません。ですが、そんなことはファッションマニアに任せておけば充分。一般の人が付き合う義理などありません。
自分にとっての本質的な価値とは?
ファッション業界だけでなく、消費者の価値観も今後かなり変化していきそうです。
一度『ニューノーマル』に入れば、生活はシンプルなものに戻り、本当に重要なものに集中するようになるだろう。価値観にも大きな変化が起こる可能性がある
コレクションを頂点とした従来のファッショントレンドの構造が崩壊した後はどうなるでしょうか。冒頭で引用したアルマーニの書簡の続きです。
私はそういう仕事のやり方はしていないし、モラルに反すると思っている。私は常に時代を超えたタイムレスなエレガンスを大切にしてきたが、それは美的感覚の問題だけではなく、長く着られるように服をデザインして生産するということでもある。
また「オーセンティシティー(欺瞞がなく、信頼できる本物であること)」の価値も、これを機会に取り戻したい。ファッションをただコミュニケーションの手段として利用したり、軽い思いつきでプレ・コレクションを世界中で発表したり、やたらに大掛かりで派手なショーを開催したりするのはもう十分だ。意味のない金の無駄遣いであり、今の時代には不適切な上、もはや品のない行為に思える。特別なイベントだったはずのものを慣例だからと繰り返すのではなく、本当に特別な機会にのみ行うべきだ。
時代を超えたタイムレスなエレガンス。本物であることの価値。昨今の騒動はそういった本質的な価値について改めて考え直すきっかけになりそうです。
従来の「ファッショントレンド」って本当に消滅するでしょうね。今みたいな状態を味わった人が自分に必要な物事を精査した後に、ファッショントレンドなんてものが残るとは思えないです。https://t.co/sjdnqsjrQR
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) 2020年4月17日
僕の場合、これまでよりも更に子供と過ごす時間が増えました。元気に満ち溢れている3人の子供たちを1日中家に閉じ込めておくことは不可能です。なので、最近はよく河原に散歩に出掛けています。
そんなときに役立つのは軽くて動きやすい服や、歩きやすい靴。ワークマンのパンツやアシックスのトレイルランニングシューズを着用する機会がとても多くなっています。
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また、昨今の騒動がきっかけという訳ではないのですが、以前から大好きなスタイリスト長谷川昭雄さんの、どういった要素が好きなのか、を具体的に挙げてみるという試みも始めてみました。
自分が好きなものごとが、どういった理由で好きなのかをはっきりさせておこうかなーとこんなハッシュタグを。#長谷川昭雄研究
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) 2020年4月17日
まずは
「同系色のグラデーション」
昔から琴線に触れるポイントです。 pic.twitter.com/aMLW0u115u
#長谷川昭雄研究
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) April 25, 2020
ネイビー×ホワイト。
清潔感。少年っぽいけど、大人っぽくもある。トラディショナル。スポーティ。変幻自在の表情を持ってるけど、好印象なことには間違い無いと思います。 pic.twitter.com/5DuaItERez
#長谷川昭雄研究
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) April 25, 2020
「少年ぽさ」というのは長谷川さんのスタイリングの根底に流れる、とても重要なテーマなんじゃないかなぁ、と思っています。
図らずも、僕が大好きなコムデギャルソン(仏語で「少年のように」)と通ずるところがあるんですよね。 pic.twitter.com/oymSn1mKtC
現在はファッション業界だけでなく、これまでの慣習や仕組みが大きく変わっていきそうな状況にあります。服好きの1人としては、自分にとって本当に必要な服ってどんなものなのかを改めて考える機会になるかもしれないと思っています。
この記事があなたのお役に立てば幸いです!