以前から気になったいた書籍「黒の服飾史」をようやく読み終えました。
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タイトルでは 「黒の」と銘打っていますが、黒を中心としたファッションにおける色彩の歴史を紐解いた内容で、とても楽しんで読めました。
ヨーロッパ人は色にストイック
冒頭で言及されているのが、「色にストイックなヨーロッパ人」について。
モードの発信地が多極化したとはいえ、今日なおオートクチュールというモードの索引役を抱えるパリは女性ファッションの中心地であるし、イタリア、ミラノも伝統的なファッションの発信地である。前衛的なデザイナーを生んだベルギー、アントワープも現代モードを索引する。
ということで、なんだかんだでヨーロッパがファッションの発信地であることに異論は少ないと思います。
たとえばヨーロッパに行けば、どこの国のどこの町に行こうと街並みの色は統一され、わたしたち日本の街のように多彩な色があふれかえってはいない。街の景観を守るために色彩設計が行き届いているといわれる通りである。
試しにピンタレストで「Paris」や「Milan」「London」と検索すると、ヒットするのはこのような落ち着いた色合いの街並みの写真。
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その落ち着いた街並みを歩くひとたちの服装も、色味という点では日本人よりはるかに地味である。
ヨーロッパのファッション、と聞いて落ち着いた色使いの服装をイメージする人は少なくないでしょう。実際にピンタレストで「Paris fashion snap」と検索すると、このような画像が見つかります。
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ヨーロッパの人びとは、わたしたちのように色を野放図に使うことはしない。色数を制限し、少ない色数で街並みでも服装でも統一する意識が、彼らにはきわめてはっきりしている。
派手な色使いは忌避すべき対象
では、なぜヨーロッパ人は色にストイックなのか。筆者は以下のように考察しています。
ヨーロッパの人びとはなぜ色に厳しく向き合うのか。ヨーロッパ中世の服飾の色について調査していた筆者は、多彩な色使いが、芸人や道化など社会から疎まれた人びとのいわばユニフォームとして使われ、それが彼らのしるしとして機能した過去の習慣が、カラフルな色使いを危険視する、今日なお残る色彩観を生み育てたのではないかと考えたことがある。
芸人や道化の他に、中世では街の娼婦が複数の色の縞柄を紋章のようにして付けていたことも挙げられています。
多色使いは危険のしるしであり、不合理のしるしである。複数の色を同一平面上に並べることへの忌避は、このような中世の習慣にさかのぼり、多色使いを危険視する観念が歴史のなかで醸成されたように思われる。
つまり、ヨーロッパ人にとって派手な色使いは忌避すべき対象だから、落ち着いた色使いの服装を好むということでしょう。
日本人は色に寛容
パリやミラノの落ち着いた色合い街並みに対し、「Tokyo」と検索すると、派手な色使いのネオン街がヒットします。
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この理由を筆者は「自然に対するヨーロッパ人と日本人の態度の違い」だと指摘しています。
わたしたちの街が色であふれているのは、都市計画の遅れのせいでも色彩設計への意識の欠如のせいでもないのかもしれない。おそらく日本人は、色に寛容な文化をもっているのである。それは季節の色を楽しむ文化を育ててきたからであり、四季折々の風物に恵まれた自然環境がそれを育んできたからだろう。季節の色をまとう平安朝の配色の好尚、すなわち重ね色目はその代表である。
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世界のファッションの価値観のベースはヨーロッパにある
色にストイックなヨーロッパの文化と、色に寛容な日本の文化。もちろん、どちらが優れているかなどという問題ではありません。
ですが、冒頭でご紹介したように、今もファッションの中心はヨーロッパで、ヨーロッパ人の感覚が世界のファッションの価値観がベースにあると言えるでしょう。
ですので、服装の色使いもヨーロッパ人が好む落ち着いた色使いが本流、つまり洗練されているというイメージがあり、真逆の感覚を持つ日本人のファッションの感覚は洗練されていないというイメージがあるのでしょう。
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