目次:
- 1996年の“カッコイイ男”いしだ壱成
- 表参道をランウェイにしたシンイチロウアラカワ
- 裏原系成熟期の1996年
- 裏原、モード系、アメカジにハイテクスニーカー
- 90sならではのショーツスタイル
- ショートパンツにハイテクスニーカー
- 『POPEYE』が20年間で提案してきたファッション
- 音楽メディアはMD推し
- “いつだってアメリカがボクたちの先生だ”1996年のデジタルカルチャー
- ファッション好きの1ヶ月の洋服代
- テイストが入り乱れる人気ブランド・ベスト20
- マーク・ジェイコブスにラフ・シモンズ…注目のファッションデザイナー
- “『ノーウェア』ディレクターNIGOさん”の愛用品
- “レコード店『ギネスレコード』オーナー瀬葉淳(22)”
- モデルになる方法をレクチャー</3>
- 気負いがないから格好良いクラブスナップ
1996年の“カッコイイ男”いしだ壱成
今回ご紹介するのは『POPEYE』1996年7月10日号です。創刊20周年記念号。
右ページ、AXIAのカセットテープ広告。ともさかりえさん。
リーバイス501広告。
プロケッズ広告。
“POPEYE OPINION”という、著名人の一言コーナー。やはり人選に時代を感じます。
右ページ、日産広告は江角マキコさんとナインティナイン。左ページは“POP EYE”というミニニュースコーナー。
クローンというイタリアのシューズブランド。
表参道をランウェイにしたシンイチロウアラカワ
左端はシンイチロウアラカワが表参道の歩行者天国で開催したショーのレポート。
現、井浦新のアラタさんや、
市川実日子さんら、人気モデルが多数登場。
シンイチロウアラカワら、1990年代に人気を集めた日本人デザイナーについてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。
“あのキャンバスオールスターが79年目にして大変身!”という触れ込みの、コンバース2000。
この頃、バスケットボールシューズはナイキが圧倒的に人気で、リーボックがそれに追随していまた。バッシュの老舗であるコンバースも当時のスタープレイヤー、デニス・ロッドマンのシグネチャーシューズをリリースして話題になりましたが、王者ナイキには遠く及ばずでした。
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右ページ、デカビタC広告。キングカズと野人岡野。
ミラノにオープンしたプラダのメンズショップ、顧客第一号はスタイリストの野口強さん。
“味がでてくる丈夫な服が好き”な いしだ壱成
特集“カッコイイ男のスタイルBOOK”。
トップの登場しているのはいしだ壱成さん。右ページはトップス、ボトムスとアバハウス。左ページはズッカ。“着れば着るほど味がでてくる丈夫な服が好きなんです”とのこと。
金城武さんは翌年のテレビドラマ『神様、もう少しだけ』で大ブレイクする前。ウォン・カーウァイ監督の映画で注目度が高まっている頃でした。
安藤政信さんのデビュー作、北野武監督の『キッズ・リターン』は1996年公開。
“『イグアナの娘』で活躍中の3人”。『イグアナの娘』は菅野美穂さん主演のテレビドラマです。
大浦龍宇一さんの赤いパンツはラフ・シモンズ。
hitomiさんは、小室哲哉プロデュースのいわゆる小室ファミリーだった頃。
吉川ひなのさんはズッカ。瀬戸朝香さんは“着崩しても下品にならないDKNYの服が好き”。
裏原系成熟期の1996年
ここから、“オシャレ・チャンピオン発表!”と銘打たれた読者スナップ企画。
その内容に入る前に、1996年がファッション的にどういう時代だったのかを確認しておきましょう。
↑の年表にもありますが、NIGO®と高橋盾が「NOWHERE」をオープンしたのが1993年。これが裏原系ムーブメントの原点となりました。
とはいえ、裏原系も登場してすぐに大人気になった!という訳ではありません。
徐々に人気を拡大していき、裏原系の人気が日本全国に波及したのが1996年頃です。
セレクトショップのビームスが40周年を迎えた2016年に発売した書籍「WHAT'S NEXT? TOKYO CULTURE STORY」では、1993年が裏原系初期、1996年が裏原系成熟期と紹介されています。
また、これまでの“ファッションアーカイブ”でもご紹介してきたように、1990年代中盤はハイテクスニーカー、デザイナーズブランド、スケーター、古着などファッションのバラエティが非常に豊かな時代でした。
おそらく、1996年頃は一番メンズファッションのスタイルに多様性があった時代だったと思います。
また、前回の“ファッションアーカイブ”でスナップをご紹介した『FINE BOYS』はモード系が中心でしたが、『POPEYE』はストリートからデザイナーズまで幅広いスタイルを扱っているので、やや偏りのある『FINE BOYS』よりも当時のリアルなファッションの雰囲気が感じられると思います。
裏原、モード系、アメカジにハイテクスニーカー
ということで、この特集に登場しているファッションはかなりバラエティ豊か。
チャンピオンに選ばれた仙台の16歳の高校生は、これぞ裏原系!なスタイル。当時流行ったボーダー柄の長袖Tシャツに半袖Tシャツのレイヤード。レザーのカーゴショーツに、ノースウェーブと思しきスニーカー。
裏原系が生まれた背景については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
準チャンピオンはデザイナーズブランド中心のモード系。やなり目が行くのは当時大人気だったベルギーのアントワープ王立美術アカデミー出身で、「アントワープ6」のひとりであるダーク・ビッケンバーグのブーツ。
もうひとりの準チャンピオンはデザイナーズブランドのコムデギャルソンのシャツに、裏原系のジェネラルリサーチのパンツ、イギリスの老舗レザーシューズメーカーのトリッカーズのブーツというミックスコーディネート。
都市別代表。
札幌代表は細身のモード系にエアマックス95という、1990年代ならではのミックススタイル。
仙台代表はヴィンテージと思しきリーバイス1stにアンダーカバー×ア・ベイシング・エイプのWネームTシャツの裏原系。
千葉埼玉代表はRRLのニットにジーンズのアメカジ。
東京代表はダーク・ビッケンバーグのジャケット&ブーツのモード系。
横浜、名古屋、京都、大阪、神戸代表。
アメカジ、古着など。
神戸代表はなんと14歳。いい感じの色落ちのジーパン穿いています。
広島、福岡、熊本代表と、ベストコンビ賞
広島代表はコムデギャルソンのシャツにノースウェーブのスニーカー。
熊本代表もコムデギャルソンのトップスとボトムス。
モードな二人組はヘルムート・ラング、ジャンポール・ゴルチエ、ポールスミス、atoなどを着用。
90sならではのショーツスタイル
各都市の参加者。まずは札幌と仙台。
ショートパンツにハイテクスニーカー
デニムショーツにエアマックス95。
ナイロン?ショーツにレッドウィングなど、ショートパンツスタイルが目立つのもこの時代の特徴でしょう。
タイトなニットにデニム?ショーツ、未来的なデザインでモード系の支持も強かったナイキのエアズームフライト95。
千葉、埼玉、東京。
クリストファー・ネメスのジーンズに、リーボックポンプフューリー。
ホワイトシャツ、イエローのシャツにリーボックポンプフューリーのシトロン。
横浜、名古屋。
ナイキの名作、エアフットスケープ。
京都、大阪。
細身のカットソー、レザーパンツにエアマックス95。
ドリス・ヴァン・ノッテンのポロシャツにエアマックス95。
神戸、広島。
福岡、熊本。
キャラクター賞。
“最年長!スーパーオヤジ賞”は37歳。“このオッサン”呼ばわりされてますが、そんなにオヤジでもないでもないやん…
『POPEYE』が20年間で提案してきたファッション
20周年特集ということで、“自慢じゃないがポパイが流行を生みだした”という、これまでの歩みを振り返る企画。
創刊当初の70年代はアメリカ西海岸のカルチャーを紹介。
80年代以降になると打ち出すスタイルがかなり多様化します。
音楽メディアはMD推し
ソニーのMDコンポ広告。3枚のCDチェンジャー付き。当時、僕もこういうコンポを使ってMDの編集をしていました。
続けてソニー広告。全てMDプレイヤーです。とにかくこの頃はMDが推されていたのでしょう。
ジーンズの広告の変遷を見るのも、昔のファッション誌の楽しみのひとつ。エドウィンは“何年も洗い込んだ味わい「オールドウォッシュ」”を提案。
バブル期に一世を風靡したケミカルウォッシュジーンズについては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
“いつだってアメリカがボクたちの先生だ”1996年のデジタルカルチャー
右ページはマイクロソフトのインターネットエクスプローラー、左ページはパナソニックのパソコンの広告で、お互いにそれぞれの製品をおすすめしている、今で言うところのコラボですね。
MDと同じように、当時はパソコンも普及が拡大していました。
こちらのグラフはパソコンの世帯普及率の推移。1995年あたりからグググッっと伸びています。
これはもちろん、1995年にWindows95が発売されたから。
誌面でのページは前後しますが、今号でもパソコン関係の広告がたくさん登場しています。
こちらはマイクロソフトワードの広告。“インターネットで最も使われているワープロは、Wordです”というキャッチコピー。
富士通のパソコン「FM V」の広告は“ボクたちの必修科目はインターネットの中にある”と、インターネットの情報量を打ち出しています。
こちらはマイクロソフトのパソコンソフトの企画広告。
全部で4ページ。見開きでは3Dムービーメーカーソフト。自由度がかなり低そうなのは、時代が時代だから仕方ないんでしょうね。
こちらはパックマンやディグダグといったアーケードゲームが収録された、リターンオブアーケードというソフト。
さらに、『DIGITAL POPEYE』という臨時増刊号も登場するほど。“いつだってアメリカがボクたちの先生だ”と、ファッションと同じようにアメリカをお手本にする姿勢。“5年後の日本を見たいから、まずN.Y.に飛んだ”“カッコイイ男のデジタルライフはこれだ”と、クールな印象をアピールしています。
ファッション好きの1ヶ月の洋服代
スナップ企画の続き。
“みんなのオシャレ意識はここまで変わった”という、全国13都市1000人のスナップ参加者のアンケート分析企画です。
1ヶ月あたりの収入、洋服代、アイテムの所有数。二十歳前後の大学生が中心と思われます。
全国平均。かなりのファッション好きが集まっているはずなので、洋服代は一般的な平均よりもかなり高額になっているとは思いますが、それでも1ヶ月に2万6千円はなかなかの高さだと思います。
それぞれの都市のレポート。
オシャレだと思うタレント、男性は反町隆史さん、浜田雅功さん、本木雅弘さん。女性は鈴木蘭々さん、松雪泰子さん、山口智子さん。
西日本。我が街神戸は“ルーズな中にも上品なオーラが”あったようです。
テイストが入り乱れる人気ブランド・ベスト20
特別企画“最新有名ファッションブランド事典この夏の傾向と対策”。上掲のアンケートの結果による、“人気ブランド・ベスト20”だそうです。
1位はビームス。掲載されているのは全てオリジナルアイテム。
2位は安定した人気のポール・スミス。3位は僕的には意外だったアニエス・ベー。
4位ユナイテッド・アローズ、5位A.P.C.。
6位シップス、8位ドルガバ。
で、7位が僕の大好きな田中啓一がコムデギャルソンオム。スナップではプリュスやシャツが多かった印象。なのでこのランキングにオムだけが入っているのはちと不自然かなーと思います。ともあれ、なかなかファッション誌には出ないオムのアイテムが見られるのは嬉しいです。
田中啓一については過去記事で詳しくご紹介しています。
7位以下。リーバイス、ナイキ、ヘルムート・ラング、トランスコンチネンツ。トランスコンチネンツは“現在のショップ数は14店”。神戸にもお店があり、僕も定期的にチェックしていました。ヘルムート・ラングはTシャツが1万3千円と、かなりお買い得感強いですね。
セレクトショップのアダム・エ・ロペ、デザイナーズブランドのジョーケイスリーヘイフォード、ジーンズブランドのリー、DCブランドのメンズビギと、バラエティ豊かなランキング。
当時人気だったシューズデザイナーが手掛けていたワナビー・バイ・パトリック・コックス、アントワープ6のダーク・ビッケンバーグ、ポール・スミスのセカンドライン的位置付けだったR.ニューボールド、DCブランドのメンズメルローズと、17〜20位もテイストが入り乱れています。
マーク・ジェイコブスにラフ・シモンズ…注目のファッションデザイナー
“いま、ファッション界を動かすキーパーソン”。
デザイナーが中心です。まずは10人。アントワープ6のひとり、W<のウォルター・ヴァン・ベイレンドンクや、ジバンシィに起用されたばかりのジョン・ガリアーノ。
ナイキの広告が入ります。
エアマックス96の広告。プロダクトとスウッシュロゴ、そして問い合わせの電話番号が掲載されているだけの潔いデザイン。めちゃくちゃクールだと思います。左ページに掲載されているメンズビオレボディウォッシュ、この頃僕も使ってました笑。
次ページはクロストレーニングシューズのモデル、エアマッスルマックス。あまり人気にはなりませんでしたが、こうやって広告に出ているということはナイキ的には力を入れていたモデルだったのでしょう。
左ページは“いま、ファッション界を動かすキーパーソン”の続き。グッチを手掛け、この後絶大な人気となるトム・フォードや、まだルイ・ヴィトンを手掛ける前のマーク・ジェイコブス。ミウッチャ・プラダとラフ・シモンズが上下で並んでいますが、後に一緒にプラダを手掛けることになるとは夢にも思わなかったでしょう。
“今が旬のヨーロッパ・ブランドをチェック!”。
ザ・ダファー・オブ・セントジョージは“こんだけ長くロンドンで生き残っているブランドは、実はポール・スミスとここぐらいかも”と書かれていますが、ここから28年経った今も生き残っています。
右ページはクリストフ・ルメール。この2、3年後くらい、コムデギャルソンに夢中になる前に僕がハマっていたブランドです。
右ページ、ポール・タンストールというブランドは初めて見ました。
“『ノーウェア』ディレクターNIGOさん”の愛用品
“惚れた!こいつがオレの’96年定番アイテムだ”という、有名人の愛用品特集。スタイリストの野口強さんや、ロンドンブーツ1号2号のふたりなどなど。
“『ノーウェア』ディレクターNIGOさん”はア・ベイシング・エイプのシャツ。
真心ブラザーズの倉持陽一さんはデータバンクなどのカシオの腕時計。
当時“メッケ隊”として『POPEYE』によく登場していたスタイリスト、坂井達志、古田ヒロヒコ、坂崎タケシの三氏による“ナンバー1ブランドはどれだ!”というトーク企画。
読み応えあります。
“レコード店『ギネスレコード』オーナー瀬葉淳(22)”
モノクロページ、“この際社長になってみないか!”という特集。
レコード店オーナー瀬羽淳(21)。「羽」は「葉」の誤植ですが、これを見つけたとき、叫びました。
まずは美容室の社長さん。
よりも気になる“レコード店『ギネスレコード』オーナー瀬葉淳(22)”。
“就職なんかよりも、好きなことが出来る空間を作りたい”“何でもイイ、ではなく、自信を持って人に売れるレコードのセレクトショップを作りたかった”という思いから、『ギネスレコード』を創業した瀬葉淳。
瀬葉淳=SebaJun→Nujabes。
僕はアニメ『サムライチャンプルー』でNujabesの音楽に出会いました。今もこうやってブログを書いているときは、たいていNujabesを聴いています。
Nujabesについては、こちらの記事がかなり詳しいです。
“好きなことで、社長になる方法”。
モデルになる方法をレクチャー</3>
“ファッション・モデルになる方法”という特集。
当時の人気モデルのインタビューと、1週間のスケジュール。
当時ファッション誌でよく見たモデルに、なったきっかけなどを一問一答。
当時“駆け出し新人モデル”のリヒトさん。
今もモデルとして活躍中です。
モデルのなり方もレクチャー。
気負いがないから格好良いクラブスナップ
“クラブ大好き!友だち大好き!”という、クラブスナップ企画。
裏原系ブランドの総大将、グッドイナフの名作グレッチTですね。
最初にご紹介した全国縦断スナップの参加者は「頑張ってオシャレしました!」感が強い人がほとんどですが、こういう気負いがない服装の方が正直格好良く見えますね。