90年代のファッション誌を中心に、昔のファッション誌のアーカイブを兼ねてご紹介する企画、ファッションアーカイブ。
これまでの記事はこちらから。
パンツはダボダボにサヨナラ
今回ご紹介するのはPOPEYE 1987年9月16日号。ちなみに、僕はこの時7歳。”スタイルよく見える服が着たい”というファッション特集号です。
目を引いたのが、”パンツはダボダボにサヨナラ”というキャッチフレーズ。
2021年の今、まさにダボダボシルエットがトレンドの真っ只中ですが、今号はそんなダボダボシルエットの次に提案されるトレンドファッションということで、もしかしたら今後のファッショントレンドの方向性を示しているかもしれません。
表紙裏ページはトムマッキャンというスニーカーブランド広告。
”アメリカで65年の歴史”の”名実ともに全米No.1ブランド”だそうです。
調べてみると、以下のようなブランドだそうです。
1922年に創立したアメリカのシューズブランド。創立者はフランク・メルビル。ブランド名の由来は、当時評判だったスコットランドのプロゴルファーである「トム・マッキャン」から。アメリカ・マサチューセッツ州ウースターに創立。
楽天市場で検索してみると、レザーシューズが古着屋さんで扱われていました。
トム マッキャン Thom McAn プレーントゥシューズ
¥11,880(記事執筆時の価格です)
THOMMCAN (トムマッキャン) 記載なし (約26.0~26.5cm) U.S.A製・ウイングチップ
¥7,800(記事執筆時の価格です)
POPEYEが打ち出した新スタイル”エフデジェ”
目次で一際大きく見えるのが、”FDGエフデジェ”の文字。
エフデジェとはファッション用語で、ざっくりと言えば、上品なフレンチカジュアルという感じ。
『FDGE』(エフデジェ)とは、フランス語のFutur Directeur Generalの頭文字からなる造語です。
いわば、将来を約束された上流階級という意味合いのことです。特にこの階級の子弟を指します。
言い換えればフランス版「プレッピー」のようなものですわ。
【ファッション用語解説】’87年日本の情報雑誌ポパイが提唱した。 フランス語 将来を約束された階級という意味の略語。 上品でベーシックな装いをいう。
80年代のファッショントレンドの流れ
ここで、80年代の日本のファッショントレンドの流れをざっとご紹介します。1981年にコムデギャルソンとヨウジヤマモトがパリコレクションデビューし、カラス族と呼ばれる全身黒ずくめファッションが登場。
https://www.pinterest.jp/pin/350717889708494500/
その後、DCブランドブームが到来。DCとはデザイナーズ、キャラクターズの略で、マンションメーカーと呼ばれる原宿のワンルームマンションを拠点とした、若手デザイナーによる小規模ながら革新的なブランドが人気を集めます。
そんな80年代のDCブランドのアーカイブが手軽に読めるのが、以前当ブログでもご紹介した「'80sガールズファッションブック」です。
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全身真っ黒でストイックな雰囲気だったカラス族が発端となったDCブランドブームでしたが、1985〜86年のDCブランドブーム後期になると、多彩な色、柄が使われたポップな雰囲気に。
また、前期は前衛的かつ洗練されていたシルエットも、後期になるとルーズでゆったりシルエットに変化していました。
こういった流れの後、登場したのがエフデジェです。
ファッションの流れの80年代と今との共通点
雰囲気はかなり違いますが、DCブランドのインパクトが強いスタイルって、少し前に流行っていたラグジュアリーストリートとちょっと近しい要素があるんじゃないかなと思っています。
ラグジュアリーストリートな人たち、みんな頭が痛くなっちゃってるのなんでだろ… pic.twitter.com/TX8R2KWQZW
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」(KADOKAWA)発売中! (@yamada0221) 2021年4月2日
また、2021年今はゆったりシルエットが大ブーム。
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これって80年代後半にエフデジェが登場したときのファッションの流れと結構似ているように感じます。
なので、もしかしたら2020年代にエフデジェ的ファッションがリバイバルするのではないか、というのが僕の予想です。
ちなみに、80年代のエフデジェは結局大きなブームにはなりませんでしたが、90年代に入り一大ブームとなるの渋カジの礎となりました。
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この書籍は以前ご紹介していますが、こういった流れを踏まえ、今度はもっと詳しくご紹介できればと思っています。
www.yamadakoji.com
プリントゴッコの普及率は9軒に1台
さて、誌面に戻ります。GARA pour HOMMEという、レナウンのブランド。
こういった広告ページにスタッフが掲載されているのは初めて見ました。
パナソニックのカーオディオ。
”グラフィック・モンスター”ということで、このディスプレイがウリの商品のようです。
富士フィルムのカセットテープの広告。カセットテープがこうやって広告になっていること自体、新鮮ですね。
右ページはヤマハのスクーター広告。
モンドリアン柄です。
アパレルメーカー、フランドルのブランドのバッグのプレゼント。フランスモチーフです。
アニエスベー。”この秋はプリントTに変わりプリントシャツがナウ”だそうです。
パナソニックのカメラの広告。当時、F1も人気でしたね。僕もステッカーや下敷きなど、色々グッズを持っていた記憶があります。
ズーム全自動。
プリントゴッコ!”普及率が9軒に1台”だそうで。僕も貰い物のプリントゴッコを使ったことがありました。
景気の良い時代。80年代のリゾート地の代表格、清里。
アフタヌーンティーの移転がニュースになっています。人気だったんでしょうね。
ギャッツビー広告は松田優作。
泡、飛びすぎじゃないすか笑。
”大人のスウォッチ”。格好良いですね。こんなデザイン、リバイバルしても良さそうです。
マイケル・ジャクソンのワールドツアー。
”気になる丸いのスタッフブルゾン”。
右ページはスクープボーイズというDCブランド広告。
”エクサラ・インドア・サッカー”というブランドのスニーカーを取り扱っているのはハリウッドランチマーケット。
1回100円で天気予報が聞けるカード。凄いっすね…。
右ページの東芝のテレビもF1。
”重低音衝撃波”。
エフデジェの最重要ポイントはサイズ
で、左ページからがエフデジェ特集です。テーラードジャケットにジーンズのコーディネート。
ブランドはキャサリン・ハムネット、パパス、アニエスベーなど。
”これでスタイルよく見える!”。
”自分のボディの各サイズを知ったうえでの繊細な服選び、これが、スタイルをよく、見せるための大切なポイント。従来のDC感覚の物選びではチョイ手強い。やはり、FDG感覚が必要なのです。”
ということで、DCブランドスタイルとは違う、新しいファッションであることが伺えます。
”とにかくダボダボならいいという考えは捨てたい”というトレンドは、今年か来年あたりから出てきそうです。
”コーディネートの基本はパンツ”。
”リーバイス501か505、ベルトなしで腰ではきます”。
”オールドイングランドか、ビームスFのチノ、プレスをかけて上品に。”
左ページのファッション業界人による”スタイルよく見えるポイント教えます”では、なんとビームスのディレクター時代の栗野宏文さん!”スマートな身のこなしもスタイルのうち”だそうです。
で、実際のコーディネート。右ページはジャケットにタイドアップシャツ。”バランスよく魅せるとスタイルよく見える”ということで、ジャケットの丈やパンツのシルエットに重点が置かれています。左ページはフレンチっぽいシャツにスカーフ。
右ページのテーラードジャケットの下にパーカのコーディネートは今でも違和感なさそうです。
ターコイズのポロシャツがいいですね。
こちらのカーディガンにスラックスのコーディネートはおじさん、というかおじいさん感?でも、今の若い子が着たらいい感じなりそうな気もします。
やはりスカーフがポイントアイテム。
ナチュラルな雰囲気のアランニットに都会的なストライプシャツやポロシャツ、そしてスカーフというコーディネート。
このページのように、カジュアルな雰囲気だと今でも着られそうです。
ベースボールキャップにパーカ、チェックシャツ。これ、格好良いですね。
フライトジャケットをエフデジェ流で上品に
”流行必至のCWU-45P”。”これ着ていれば、この秋冬は大丈夫だけど”というくらい推されているのは、この前年に公開された映画トップガンの影響でしょうか。
CWU-45Pはアメリカ軍のフライトジャケット。ユーズドはもちろん、お手頃な価格の民生品も数多く存在しています。
80s U.S.NAVY CWU-45P
¥13,440(記事執筆時の価格です)
Rothco CWU-45P Flight Jacket
¥7,160(記事執筆時の価格です)
そんなワイルドな印象のミリタリーアウターを、フォーマル感の強いシャツにカーディガンという上品なアイテムとコーディネートするのがエフデジェ流、といったところでしょう。
コートのコーディネート。
こういったスタイルも、今受け入れられそうな気がします。
ブランドクレジット。ワイズやトキオクマガイ、ニコルクラブなどのDCブランドが中心です
まだまだ続くエフデジェ特集はこちらの記事で。
この記事があなたのお役に立てれば幸いです!