山田耕史のファッションブログ

ファッションは生活であり、文化である。

80年代後半にPOPEYEが打ち出した”エフデジェ”が今後リバイバルしそうな理由。【POPEYE 1987年9月16日号】

f:id:yamada0221:20210414142651j:plain

90年代のファッション誌を中心に、昔のファッション誌のアーカイブを兼ねてご紹介する企画、ファッションアーカイブ。

これまでの記事はこちらから。

www.yamadakoji.com

 

 パンツはダボダボにサヨナラ

今回ご紹介するのはPOPEYE 1987年9月16日号。ちなみに、僕はこの時7歳。”スタイルよく見える服が着たい”というファッション特集号です。

f:id:yamada0221:20210414100434j:plain

目を引いたのが、”パンツはダボダボにサヨナラ”というキャッチフレーズ。

2021年の今、まさにダボダボシルエットがトレンドの真っ只中ですが、今号はそんなダボダボシルエットの次に提案されるトレンドファッションということで、もしかしたら今後のファッショントレンドの方向性を示しているかもしれません。

f:id:yamada0221:20210414100451j:plain

表紙裏ページはトムマッキャンというスニーカーブランド広告。

f:id:yamada0221:20210414100508j:plain

”アメリカで65年の歴史”の”名実ともに全米No.1ブランド”だそうです。 

f:id:yamada0221:20210414100543j:plain

f:id:yamada0221:20210414100525j:plain

調べてみると、以下のようなブランドだそうです。

1922年に創立したアメリカのシューズブランド。創立者はフランク・メルビル。ブランド名の由来は、当時評判だったスコットランドのプロゴルファーである「トム・マッキャン」から。アメリカ・マサチューセッツ州ウースターに創立。

www.tsushin.tv

楽天市場で検索してみると、レザーシューズが古着屋さんで扱われていました。

トム マッキャン Thom McAn プレーントゥシューズ
¥11,880
(記事執筆時の価格です)

f:id:yamada0221:20210414141456p:plain
|画像タップで楽天市場商品ページへ|

THOMMCAN (トムマッキャン) 記載なし (約26.0~26.5cm) U.S.A製・ウイングチップ
¥7,800
(記事執筆時の価格です)

f:id:yamada0221:20210414141904p:plain
|画像タップで楽天市場商品ページへ|

 

 

POPEYEが打ち出した新スタイル”エフデジェ”

目次で一際大きく見えるのが、”FDGエフデジェ”の文字。

f:id:yamada0221:20210414100508j:plain

エフデジェとはファッション用語で、ざっくりと言えば、上品なフレンチカジュアルという感じ。

『FDGE』(エフデジェ)とは、フランス語のFutur Directeur Generalの頭文字からなる造語です。
いわば、将来を約束された上流階級という意味合いのことです。特にこの階級の子弟を指します。
言い換えればフランス版「プレッピー」のようなものですわ。
【ファッション用語解説】’87年日本の情報雑誌ポパイが提唱した。 フランス語 将来を約束された階級という意味の略語。 上品でベーシックな装いをいう。

zabou.org

 

80年代のファッショントレンドの流れ

ここで、80年代の日本のファッショントレンドの流れをざっとご紹介します。1981年にコムデギャルソンとヨウジヤマモトがパリコレクションデビューし、カラス族と呼ばれる全身黒ずくめファッションが登場。 

f:id:yamada0221:20210414141921j:plain

https://www.pinterest.jp/pin/350717889708494500/

www.yamadakoji.com

その後、DCブランドブームが到来。DCとはデザイナーズ、キャラクターズの略で、マンションメーカーと呼ばれる原宿のワンルームマンションを拠点とした、若手デザイナーによる小規模ながら革新的なブランドが人気を集めます。

そんな80年代のDCブランドのアーカイブが手軽に読めるのが、以前当ブログでもご紹介した「'80sガールズファッションブック」です。

www.yamadakoji.com

 

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

'80sガールズファッションブック [ 竹村 真奈 ]
価格:2200円(税込、送料無料) (2020/9/7時点)

楽天で購入

 

全身真っ黒でストイックな雰囲気だったカラス族が発端となったDCブランドブームでしたが、1985〜86年のDCブランドブーム後期になると、多彩な色、柄が使われたポップな雰囲気に。

f:id:yamada0221:20200907101844j:plain

また、前期は前衛的かつ洗練されていたシルエットも、後期になるとルーズでゆったりシルエットに変化していました。

f:id:yamada0221:20200907101840j:plain

こういった流れの後、登場したのがエフデジェです。

 

ファッションの流れの80年代と今との共通点

雰囲気はかなり違いますが、DCブランドのインパクトが強いスタイルって、少し前に流行っていたラグジュアリーストリートとちょっと近しい要素があるんじゃないかなと思っています。

また、2021年今はゆったりシルエットが大ブーム

 
 
 
View this post on Instagram
 
 
 

A post shared by WEGO ウィゴー (@wego_official)

www.instagram.com

これって80年代後半にエフデジェが登場したときのファッションの流れと結構似ているように感じます。

なので、もしかしたら2020年代にエフデジェ的ファッションがリバイバルするのではないか、というのが僕の予想です。

ちなみに、80年代のエフデジェは結局大きなブームにはなりませんでしたが、90年代に入り一大ブームとなるの渋カジの礎となりました。


 

この書籍は以前ご紹介していますが、こういった流れを踏まえ、今度はもっと詳しくご紹介できればと思っています。
www.yamadakoji.com

 

プリントゴッコの普及率は9軒に1台

さて、誌面に戻ります。GARA pour HOMMEという、レナウンのブランド。

f:id:yamada0221:20210414100554j:plain

f:id:yamada0221:20210414100610j:plain

こういった広告ページにスタッフが掲載されているのは初めて見ました。

f:id:yamada0221:20210414100626j:plain

パナソニックのカーオディオ。

f:id:yamada0221:20210414100642j:plain

”グラフィック・モンスター”ということで、このディスプレイがウリの商品のようです。

f:id:yamada0221:20210414100700j:plain

富士フィルムのカセットテープの広告。カセットテープがこうやって広告になっていること自体、新鮮ですね。

f:id:yamada0221:20210414100720j:plain

右ページはヤマハのスクーター広告。

f:id:yamada0221:20210414100736j:plain

モンドリアン柄です。

f:id:yamada0221:20210414100753j:plain

アパレルメーカー、フランドルのブランドのバッグのプレゼント。フランスモチーフです。

f:id:yamada0221:20210414100811j:plain

アニエスベー。”この秋はプリントTに変わりプリントシャツがナウ”だそうです。

f:id:yamada0221:20210414100827j:plain

パナソニックのカメラの広告。当時、F1も人気でしたね。僕もステッカーや下敷きなど、色々グッズを持っていた記憶があります。

f:id:yamada0221:20210414100844j:plain

ズーム全自動。

f:id:yamada0221:20210414100902j:plain

プリントゴッコ!”普及率が9軒に1台”だそうで。僕も貰い物のプリントゴッコを使ったことがありました。

f:id:yamada0221:20210414100915j:plain

景気の良い時代。80年代のリゾート地の代表格、清里。

f:id:yamada0221:20210414100931j:plain

アフタヌーンティーの移転がニュースになっています。人気だったんでしょうね。

f:id:yamada0221:20210414100948j:plain

ギャッツビー広告は松田優作。

f:id:yamada0221:20210414101005j:plain

泡、飛びすぎじゃないすか笑。

f:id:yamada0221:20210414101022j:plain

”大人のスウォッチ”。格好良いですね。こんなデザイン、リバイバルしても良さそうです。

f:id:yamada0221:20210414101039j:plain

マイケル・ジャクソンのワールドツアー。

f:id:yamada0221:20210414101056j:plain

”気になる丸いのスタッフブルゾン”。

f:id:yamada0221:20210414101112j:plain

右ページはスクープボーイズというDCブランド広告。

f:id:yamada0221:20210414101128j:plain

”エクサラ・インドア・サッカー”というブランドのスニーカーを取り扱っているのはハリウッドランチマーケット。

f:id:yamada0221:20210414101147j:plain

1回100円で天気予報が聞けるカード。凄いっすね…。

f:id:yamada0221:20210414101204j:plain

右ページの東芝のテレビもF1。

f:id:yamada0221:20210414101222j:plain

”重低音衝撃波”。

f:id:yamada0221:20210414101240j:plain

 

エフデジェの最重要ポイントはサイズ

で、左ページからがエフデジェ特集です。テーラードジャケットにジーンズのコーディネート。

f:id:yamada0221:20210414101222j:plain

ブランドはキャサリン・ハムネット、パパス、アニエスベーなど。

f:id:yamada0221:20210414101302j:plain

”これでスタイルよく見える!”。

自分のボディの各サイズを知ったうえでの繊細な服選び、これが、スタイルをよく、見せるための大切なポイント。従来のDC感覚の物選びではチョイ手強い。やはり、FDG感覚が必要なのです。”

ということで、DCブランドスタイルとは違う、新しいファッションであることが伺えます。

f:id:yamada0221:20210414101328j:plain

”とにかくダボダボならいいという考えは捨てたい”というトレンドは、今年か来年あたりから出てきそうです。

f:id:yamada0221:20210414101348j:plain

”コーディネートの基本はパンツ”。

f:id:yamada0221:20210414101407j:plain

”リーバイス501か505、ベルトなしで腰ではきます”。

f:id:yamada0221:20210414101425j:plain

”オールドイングランドか、ビームスFのチノ、プレスをかけて上品に。”

f:id:yamada0221:20210414101443j:plain

左ページのファッション業界人による”スタイルよく見えるポイント教えます”では、なんとビームスのディレクター時代の栗野宏文さん!”スマートな身のこなしもスタイルのうち”だそうです。

f:id:yamada0221:20210414101502j:plain

で、実際のコーディネート。右ページはジャケットにタイドアップシャツ。”バランスよく魅せるとスタイルよく見える”ということで、ジャケットの丈やパンツのシルエットに重点が置かれています。左ページはフレンチっぽいシャツにスカーフ。

f:id:yamada0221:20210414101536j:plain

右ページのテーラードジャケットの下にパーカのコーディネートは今でも違和感なさそうです。

f:id:yamada0221:20210414101553j:plain

ターコイズのポロシャツがいいですね。

f:id:yamada0221:20210414101610j:plain

こちらのカーディガンにスラックスのコーディネートはおじさん、というかおじいさん感?でも、今の若い子が着たらいい感じなりそうな気もします。

f:id:yamada0221:20210414101628j:plain

やはりスカーフがポイントアイテム。

f:id:yamada0221:20210414101645j:plain

ナチュラルな雰囲気のアランニットに都会的なストライプシャツやポロシャツ、そしてスカーフというコーディネート。

f:id:yamada0221:20210414101717j:plain

このページのように、カジュアルな雰囲気だと今でも着られそうです。

f:id:yamada0221:20210414101736j:plain

ベースボールキャップにパーカ、チェックシャツ。これ、格好良いですね。

f:id:yamada0221:20210414101753j:plain

 

フライトジャケットをエフデジェ流で上品に

f:id:yamada0221:20210414101812j:plain

”流行必至のCWU-45P”。”これ着ていれば、この秋冬は大丈夫だけど”というくらい推されているのは、この前年に公開された映画トップガンの影響でしょうか。

f:id:yamada0221:20210414101829j:plain

www.youtube.com

CWU-45Pはアメリカ軍のフライトジャケット。ユーズドはもちろん、お手頃な価格の民生品も数多く存在しています。

80s U.S.NAVY CWU-45P
¥13,440
(記事執筆時の価格です)

f:id:yamada0221:20210414141705p:plain
|画像タップで楽天市場商品ページへ|

Rothco CWU-45P Flight Jacket
¥7,160
(記事執筆時の価格です)

f:id:yamada0221:20210414141840p:plain
|画像タップで楽天市場商品ページへ|

そんなワイルドな印象のミリタリーアウターを、フォーマル感の強いシャツにカーディガンという上品なアイテムとコーディネートするのがエフデジェ流、といったところでしょう。

f:id:yamada0221:20210414101847j:plain

コートのコーディネート。

f:id:yamada0221:20210414101903j:plain

こういったスタイルも、今受け入れられそうな気がします。

f:id:yamada0221:20210414101932j:plain

ブランドクレジット。ワイズやトキオクマガイ、ニコルクラブなどのDCブランドが中心です

f:id:yamada0221:20210414101920j:plain

まだまだ続くエフデジェ特集はこちらの記事で。

www.yamadakoji.com

この記事があなたのお役に立てれば幸いです!