横浜仲町台の洋品店Euphonicaの店主、井本さんの質問箱に寄せられた「若者のジーンズ離れ」についての回答が非常に興味深かったので、引用させてもらいます。
全文引用します。
複合的な要因があると思います。
1.トレンドの変化
一番シンプルで大きな話ですが、ジーンズの質感や粗野なデザインが、時流から外れてしまいました。アメカジ、流行ってないでしょう?
ジーンズ≒ヴィンテージとかレプリカとかでもなくなり、若いお客様は「赤耳とか、お父さんがそんなこと言ってました!」ですよ。
今の若い子にとってヴィンテージのイメージって、だいたい90年代前半のGUESSとかckあたりです。定義が変質し、ジーンズはデザインパンツの一バリエーションに過ぎなくなったんです。
ジーンズ自体が、ロック同様にユースカルチャーとしての役割を終え、おじさん(あるいはおじいさん)のものへと移り変わってきたんでしょうね。
20世紀半ばに若者、自由の象徴とされたものではあっても、それがいつまでもそうだとは限らないということです。
スキニーについては、00年代~10年代前半の流行アイテムということで、また別の文脈として解釈しています。ジーンズというよりスキニーであることが優先されますから。2.ストレッチ素材の普及
1と重なる話で、この20年でストレッチ混素材が一気に普及したことで、本格デニムの硬さが敬遠されるようになりました。
ほぼ同時にイージーパンツのバリエーションが増え、穿き心地の楽なものに多くの人が慣れたとうのも無関係ではないでしょう。
ストレッチ入りデニムがあるじゃないかという話ですけど、あののっぺりとした風合いを好まない方は男女問わず少なくありません。
耐久性が低く、でろでろになりやすいですし。
ただ、これが若者の嗜好と直結するかと言えばそうでもない気がしてまして、当店の観測範囲ですが若い方は30代以上にくらべイージーパンツを手に取りませんし、また別の話かと思います。3.ジーンズショップの激減
これもまたいろんな要素が重なった結果ですが、ジーンズショップが激減し、ジーンズ自体が身近な存在でなくなってしまいました。
若い方にとって一番有名なジーンズのブランドって、リーバイスじゃなくてユニクロなのでは。
大きいのはこのあたりじゃないですかね。金銭的な事情はジーンズ離れに関してはあまり関係ないと思います。
全体として非常に納得感のある回答ですが、僕が特に面白いと思ったのは”定義が変質し、ジーンズはデザインパンツの一バリエーションに過ぎなくなったんです”という部分。
若者のジーパン離れについての井本さんの分析。
— 山田耕史 書籍「結局、男の服は普通がいい」発売中! (@yamada0221) 2020年12月19日
ジーパン=数あるデザインパンツのなかのひとつ、ってのはなるほどと思いました。
ジーパンに対して特別なイメージを持っているのは、僕らアラフォーのヴィンテージブーム世代が最後ですかね?
エディ・スリマンのスキニー世代はどうだろ? https://t.co/2G3jDmKlRP
井本さんの回答の通り、ジーンズはバイクやロック、映画などの若者文化の象徴でした。
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特に戦後の日本においては、手に入れにくいアメリカからの舶来品ということで更に価値が高かったのだと思います。
松本人志少年が受けたトレーナーの衝撃
僕は大の松本人志さんファンで、特に「放送室」というラジオ番組は何度も聴き直すくらい大好きです(今ならYouTubeで聴けますよ)。
「放送室」は松本さんの幼馴染である放送作家の高須光聖さんとのトーク番組で、よく2人の幼少期の思い出話が語られていました。
そのなかで個人的に印象だったのが、松本さんが小学生のときのトレーナーのエピソードです。
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当時、ファッションリーダー的存在だった同級生がトレーナーを着ているのを見て、松本少年は非常に大きな衝撃を受けたそうです。衝撃を受けた理由は、見たことのないモノだったから。
松本少年は自分もトレーナーが欲しい!と思い、家に帰ってその衝撃を母親に話すも、母親もトレーナーの存在を知らなかったそうです。
当然ながら生まれたころからトレーナーが身の回りにあった僕には、トレーナーが一般的ではなかった頃の価値観を知り、驚きました。
おそらく、ジーンズが日本に上陸したときも、全国各地で松本少年と同じように衝撃を受けた若者が多かったはずです。
こんなの見たことない!欲しい!と。
これまで、日本にはジーンズ専門のチェーン店が数多く存在するなど、ジーンズはメンズカジュアルファッションの中心的なアイテムとして売れ続けていましたが、それはジーンズが日本に上陸した後の衝撃に端を発したバブルの続きのようなもので、今ジーンズが売れずに若者のジーンズ離れ、と言われているのはジーンズバブルが終わってしまっただけではないでしょうか。
1980年生まれの僕にとってのジーンズ
1980年生まれの僕にとっても、”ジーンズはデザインパンツの一バリエーション”です。
僕がファッションに興味を持ち始めた90年代後半はヴィンテージジーンズブームで、当時のファッション誌はこぞってリーバイスなどの高価なヴィンテージジーンズを紹介し、ヴィンテージジーンズのレプリカを製造するメーカーも数多く誕生しました。
僕も当時はジョンブルなどのヴィンテージレプリカジーンズを着用していましたが、何故かジーンズにハマることはありませんでした。
ですので、こちらの↓過去記事でもご紹介している通り、ジーンズはたまに穿く程度。ジーンズは好きなアイテムの1つではありますが、特別な思い入れはありません。
一応ヴィンテージジーンズブーム真っ只中を経験した僕がこの程度なので、僕よりも下の世代になると、ジーンズに対して特別な思い入れがある人は更に少なくなるでしょう。
ジーンズに興味を持つ若者も増やす方法
ですが、僕はジーンズが若者に売れる時代が再来する可能性はゼロではないと思っています。
その理由は現在の古着ブームです。
以前こちらの記事で90年代のファッション誌が若者に人気であることをご紹介したように、ファッション周辺のカルチャーに興味を持っている若者は数多く存在していますし、今後は更に増えるかもしれません。
ファッションに限らず、音楽でも何でも興味を持って深堀りしていくと、オリジナルに行き着くことが多いと思います。
古着とカルチャーは切っても切れない存在。この記事も最初でもご紹介したように、特にジーンズはバイクやロック、映画などのカルチャーとの関係が非常に深いアイテムです。
そういったカルチャーとの繋がりをきちんと発信していれば、ジーンズに興味を持つ若者も増えるのではないでしょうか。
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この記事があなたのお役に立てれば幸いです!