山田耕史のファッションブログ

ファッションは生活であり、文化である。

チャールズ3世が生み出したファッションの価値観。スーツも革靴も50年以上愛用し、破れたらパッチを当てて着る。

先日、イギリスのエリザベス女王崩御し、エリザベス女王の第一子であるチャールズ皇太子がチャールズ3世としてイギリス国王に即位しました。

 
 
 
 
 
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どれもこれも格好良いチャールズ皇太子の服装

もう4年も前になりますが、当ブログでチャールズ皇太子の服装をご紹介したことがありました。

www.yamadakoji.com

↑の記事に画像を沢山掲載していますが、フォーマル、カジュアル、アウトドア、そしてスコットランドの伝統衣装であるキルトに至るまで、どれもこれも格好良いのです。

https://www.pinterest.jp/pin/208432288995434791/

https://www.pinterest.jp/pin/366550857171284956/

https://www.pinterest.jp/pin/327566572908587102/

https://www.pinterest.jp/pin/438326976244273802/

 

同じ革靴とジャケットを50年以上着用

↑の記事ではご紹介していませんが、チャールズ3世のファッションを語る上で欠かせないのが「チャールズパッチ」でしょう。

チャールズパッチとは、チャールズ3世が着用している革靴に当てられたパッチのこと。こちらはチャールズ3世が着用している革靴のアップ。シワが入りやすい屈曲部の側面に2箇所、楕円形のパッチが当てられています。

https://www.pinterest.jp/pin/536561743111325119/

2013年というちょっと古めのこちらの記事によると、チャールズ3世は1971年に購入した靴を今でも履いているそうです。

www.telegraph.co.uk

こちらの画像によると、このチャールズ3世の革靴は、イギリスの老舗ブランド、ジョン・ロブのもので、1968年から着用し続けているそうで、こちらの画像では屈曲部の上部にもパッチが当てられていることがわかります。

https://www.pinterest.jp/pin/121315783682134580/

ジョン・ロブといえば、高級紳士靴の最高峰とも言えるイギリスのブランド。1849年に創業され、英国王室御用達の証であるロイヤルワラントも授与されています。

 
 
 
 
 
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7回パッチを当てられたスーツ

また、上掲の記事で主に触れられているのは、スーツを7回もパッチを当てているということ。

そのスーツがこちら。パッチが当てられている箇所がわかりますか?

https://www.pinterest.jp/pin/182466222375773016/

このポケットの四角いステッチが入っている部分がそうです。

https://www.pinterest.jp/pin/598978819182736296/

もしかしたらこのように左ポケットに手を突っ込む癖があって、この部分が破れてしまうのではないでしょうか。

https://www.pinterest.jp/pin/297870962865734938/

↓の記事よると、ジャケットを購入したのは1969年とのこと。つまり、もう50年以上も着用し続けているということです。

www.dailymail.co.uk

50年以上同じスーツや革靴を着用している人はまだいるとして、同じジャケットに7回もパッチを当てた経験がある人なんて、まずいないのではないでしょうか。

 

チャールズ3世が服や靴にパッチを当てる理由

チャールズ3世は上掲記事でこう語っています。

「私はいつも、自分の服や靴をできるだけ長く(あるものは1971年まで、あるジャケットは1969年まで!)、パッチや修理によって使い続けようと考えてきました。

流行が変わるのは驚くべきことで、全体として、次の用途を見つけたり修理したりせずに物を捨てることを嫌う人間として言えば、ようやく「使い捨て社会」から脱却し、より「循環型経済」に移行することが急務だという認識が広まってきたなら、これ以上の喜びはありません」

チャールズ3世は若い頃から、慈善事業に熱心に取り組んでいました。

それはイギリス王室の戦略でもありました。

19世紀以降、議会政治や政党政治が進展し、政界において王室の存在感が徐々に弱まっていきました。

そのようなときに、イギリスの歴代国王たちは慈善事業に精を出すことで、中産階級から敬愛を集め、その存在意義を高めてきました。

チャールズ3世はそんな中でも特に慈善、博愛活動に熱心でした。

1970年に公の場で環境破壊、特に農業に置ける化学肥料の使用と生態系の破壊について強い懸念を示し、所領であるコーンウォール公爵領で有機農法を進めたり、2007年には自らの宮廷に「皇太子熱帯雨林プロジェクト」を立ち上げるなど、環境問題に関する多くの活動を行ってきました。

なので、「自分の服や靴をできるだけ長く、パッチや修理によって使い続け」ることも、チャールズ3世にとっては環境問題に対する行動の一環だったのでしょう。

 

一般的な修理方法となったチャールズパッチ

革靴にパッチを当てるチャールズパッチは革靴の修理の方法として一般的な存在になっており、「チャールズパッチ」で検索すると、数多くのパッチが当てられた革靴が見つけられます。

 
 
 
 
 
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チャールズ3世の姿勢が生み出した価値観

このチャールズパッチの例のように、チャールズ3世のモノを大事に使い続ける姿勢が、新たな価値観を生み出していることが、僕はとても素敵だなぁと思っています。

ジーンズやワークブーツなどのカジュアルアイテムならば、使い込まれた格好良さや、リペアによる風格などは評価されることもあるでしょう。

ですが、スーツや革靴のような、スタイリッシュさが求められるアイテムにはっきりとした補修の跡が残っていることは、一般的にクールだと思われることは稀でしょう。

クールかどうかという以前に、貧乏臭い!という印象を持たれることもあるかもしれません。

ですが、今や英国王となったチャールズ3世がこのように50年以上も同じジャケット着て、同じ革靴を履き、破れるとパッチを当ててまで愛用しているという事実を知ると、そんな価値観も大きく変わるのではないでしょうか。

 

気に入った服を長く着る

当ブログでは以前から、リペアやメンテナンスについての記事に力を入れています。

www.yamadakoji.com

ちょっとの手間や時間をかけるだけで、服や靴は劇的に長持ちするようになります。

また、破れたりほつれたりしてしまった場合も、家庭で簡単に直せたりするケースも結構あります。

気に入った服を長く着る手助けに少しでもなれば、と思っています。

参考文献

追記:

チャールズ3世がロイヤルワラントを与えたブランドを調べてみました。

www.yamadakoji.com